王国伐採10
「お前達に預けた樹木は順調に育っているだろうな」
2番目の王弟、『魔王』は周囲に問うた。
すると、全員が「自分のところの樹木はうまく育っている」と答える。
「順調に天地の魔力を集めて、ちゃんと大きくなってるわ」
やや食い気味に51番目が答え、
「特に問題はなく」
20番目は静かに頷き
「此の儘成らば計画通りに」
15番目は無難に答え
「こっちも問題はないが……やる必要あるのか?」
5番目は怪訝そうに言い
「問題なし。『やる必要あるのか?』とは何がです」
27番目が怪訝な視線を向けて
「問題ないわ。……この会議のことでしょ」
35番目が面倒そうに答え
「順調よ。……まぁ、そうよねぇ」
28番目が頷く。
「無論、問題無いですよ我が王。……会議は、我が王が必要だと言ってる」
陰気に44番目が返し
「問題はない。確認作業は大事だろう」
と、1番目は興味無さそうに告げた。
「そういうことだ。お前達には面倒かもしれないが、変わらず定例会議は行うからな」
「これも計画の為だ」と魔王は樹木の主達に視線を配る。
それから樹木のある国の状態などを問い、定例会議は終了した。
×
「……実際の所、信憑性はどのくらいだ」
樹木の主達がいなくなった後、魔王は問うた。
「まあ、大体は問題はないかと」
王座の側に、偽王国の騎士が姿を現す。
「何事も起こらなければ、計画の通りですとも」と、15番目としての定例会議の報告通りに、偽王国の騎士は答えた。
定例会議の本当の目的は、他の樹木の守護達が不穏な動きをしていないか確認するためのものだった。魔王に従うつもりがあるか、魔王に隠れて何か余計な動きをしていないか、などだ。
樹木の主達は魔道具で樹木と強く結びついている。そのため、逆らわれると少々厄介なのだ。
それと魔王が『なんだかカッコイイから』という理由でやってるのだが、偽王国の騎士は知っている。下らないとは思うものの、先述通りに他の樹木の主達の動きの確認もできるので放置していた。
「そうか」
『計画通り』との言葉に、魔王は満足気に頷く。魔王自身も自身の力を蓄えたり樹木のある地の侵略行為や色々をしていたりするという。
「何もせずとも樹木は育ちますからね」
冷ややかに偽王国の騎士は零した。
確認出来得る限り、ほとんどの王は何もしていない。『樹木を育てる』その方法にやや苦戦しているのだ。だが、見栄のためか報告はしていなかった。それをこっそりと魔王に告げる。
「……そうだな」
樹木は天地と繋がっているので、ただそこにあるだけで天地の魔力を吸い取り、勝手に育つ。
「可能成らば。花を咲かせる処迄、出来ましたら良いのですが」
『夢』を与えて樹木に花を咲かせることが、本来の目的だ。だがそれは難しそうだと、言外に偽王国の騎士は告げた。
「……まあ良い。最終的にそうなればな。お前も樹木をきちんと育てろよ」
「言われずとも」
短く答え、偽王国の騎士は姿を消す。
×
その頃。
魔女は出会った若者達と材料を集めながら雑談をしていた。そこで、魔女は彼等の過去をざっと聞いたのだ。
「……みんな、色々大変なんだね」
黒髪の若者は、どうやら行方不明になった幼馴染を探しているらしい。それに、樹木のせいで村が消し飛んだとも。
共にいる魔術使いの若者と聖職者の若者は、黒髪の若者の手伝いをしたいらしい。
樹木を破壊すれば人が戻る。
それを信じて、黒髪の若者は幼馴染や故郷の人々を取り戻すために樹木を破壊したいのだと。
「わたしも……何か、大切なものを無くしてるみたいなんだ」
忘れているみたいで思い出せないんだ、と、ぽつりと魔女は零した。
「大切なものなのに、忘れたの?」
若者達は問う。
「うん。それが何なのかは分からない……だけど、樹木に関わっていたら思い出せる気がする」
頷き、魔女は「絶対に思い出せるはずなんだ」と呟いた。絶対に、思い出してみせると。
「ところで、欲しい材料は全部集まったの?」
しんみりとしてしまった空気を壊すように、魔女は明るい声を出す。
「みんなどう?」と黒髪の若者が仲間達に視線を配ると「大丈夫そうよ」「問題ないよ」と頷いた。どうやら、目的の材料を必要数調達し終えたようだ。
「よし、じゃあ地の国に戻ろうか」
「おー」
黒髪の若者の言葉と共に、魔女と若者達は一旦総合組合に戻ることとなった。




