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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:王国

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王国伐採6


()()()()()()()()()


 魔女が魔法を使うと、なぜか満足気に目を細め偽王国の騎士はくつくつと笑う。


 気にせず、魔女は魔法で偽王国の騎士に抵抗する。


「ふっ!」


 魔女は腰に下げていたナイフを2本抜き出し、炎を(まと)わせた。


「おや。()()()()()()()()ですか」


 偽王国の騎士は笑みを止める。途端に、空気が張り詰めた。

 炎を纏わせたナイフは、留めを刺すつもりがないと魔女は使わない。そのことも、どうして知っているのだろう。


「やっ!」


 構わず、魔女は炎を纏ったナイフを数度振るった。頚動脈や静脈、腱などを確実に狙い仕留める動きだ。

 だが、それを全て徒手で綺麗に()なされた。

 炎を瞬時に消され、ナイフの背や腹を器用に捉えて軌道を逸らされる。


「なんで、わたしの動きを知ってるの?!」


馴染みやすい魔女の魔力の特性を利用し、速度を不規則に加速させた。そのはずなのに、偽王国の騎士は全てを見切ったのだ。


「何故、と。……ふふ。何度も手合わせした仲ではないですか」


戸惑う魔女に対し、偽王国の騎士は余裕そうに、だが警戒した様子で魔女を見下ろす。


「きみみたいな人、知らないもん!」


「おやおや、連れ無い事を」


魔女が叫ぶと、偽王国の騎士は眉尻を下げて肩を竦めた。やっぱり、知らない。そんなに態度を表出する人なんて。


「ふん!」


 魔力の性質を使い、魔女は高速で移動する。

 そうして、横を抜けようとした。


「わ!」


「ふふふ……捕まえましたよ小娘」


だが、()()()()()()()()()()()()()()

 馴染みやすい魔力の性質を使い、()()()()()()()()()()()()()()()()()


「なんで」


「くく……()()()()()()()()()()()のだと、何度言えば解るのです。小娘」


愉悦に目を細め、偽王国の騎士は腕を掴んで魔女を持ち上げる


「ん゛ー! そんなこと言われても知らないもん!」


 ばたばたと足を動かして蹴ろうと試みるも、届かない。偽王国の騎士の腕の長さに対し、縮んだ魔女の脚の長さが足りないのだ。


「何故、逃げるのです?」


「だって、怖い」


取って食らわんとばかりの、その据わった目付きが特に。

 魔女を捕獲した後には物理的に喰らいそうであった。


「嗚呼、失礼。昂ってしまい思わず」


久々の貴女なので特に、と偽王国の騎士は零す。「怖くないですよ」と柔和に微笑んで見せるが、微塵も安心出来ない。


「なんでわたしのこと捕まえるの」


(わたくし)には貴女が必要だからですよ、小娘」


まるで愛おしいものを見るかのように、偽王国の騎士は目を細めた。

 知らないはずなのに、不思議と胸が痛くなる。

 嬉しくて、悲しくて、ムカついた。色々な感情がない混ぜになって、涙が勝手に溢れ出す。


「小娘じゃないもん!」


声は震えて、視界は滲んだ。ぽろぽろと涙が溢れ落ちる。


「存じております。こんなにまあ縮んでしまって……」


何があったのです、と偽王国の騎士は空いている方の手で魔女の頬に手を添えた。

 その手付きに「やっ!」と顔を背ける。


「……呪いだもん」


「は?」


魔女の呟きに、偽王国の騎士は柳眉をひそめた。


「呪いをかけられたんだもん!」


好きでこんな姿になってない! と偽王国の騎士を睨み付ける。


「はぁ」


偽王国の騎士が感知できる限り、呪いはかかっていない。それを告げようとした時、


「嫌いだもんっ!」


「な」


魔女は叫んだ。


「きみなんて、大っ嫌い!」


顔を真っ赤にさせて、魔女は訴える。そうして、泣き出した。


「お、お待ちを小娘」


 先ほどとは打って変わり、偽王国の騎士は酷く狼狽える。魔女の頬を撫で、溢れる涙を指先で拭う。


「其れ、本気で仰ってます?」


「……本気だもん」


べ、と魔女が舌を出すと、偽王国の騎士は顔色を悪くした。


「ど、何処が気に入らぬのです」


「おめめ!」


「……其処(そこ)以外は?」


「ふんっ!」


「そうですかそうですか。()()()()が気に食わぬのですね」


ぷい、と顔を背けると、次は心底安堵した様子で息を吐く。


「髪も違うもん……」


「まあそれは代償として使うております(ゆえ)、御容赦下さいまし。さ、私と共に行きましょう?」


気を取り直したのか、にこ、と偽王国の騎士は笑みを浮かべた。


「や」


「……此の私から、逃げられるとでも?」


微笑んだまま、偽王国の騎士は言葉に圧を乗せる。


()! あっち行って!」


 叫び、魔女は全身から魔力を放出した。


「ぐっ……!」


それに怯んだのか、一瞬、掴む力が弱まる。その隙に魔女は身体を捻り拘束から逃れた。


「……ふふ。久々の魔力は……きますね……」


刺すような痛みを与えるはずなのに、偽王国の騎士は目元を赤くし熱っぽい息を吐く。


「何この人怖」


怖いというか気持ち悪いが近い表現なのだが、魔女にはその語彙が無かった。

 拘束からは逃れられたものの、追い詰められている現状は変わらない。


「逃しませんよ、小娘」


 そして偽王国の騎士は、今度こそ触れようと手を伸ばした。


 その時。


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