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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木:王国

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王国伐採2


「ちょっとそこのお嬢ちゃん。ここは関係者……というか冒険者以外、立ち入り禁止だよ」


「許可証持ってるもん!」


 一体何度目だろう、と魔女は口を尖らせる。

 冒険者(総合組合(コレギア)関連の傭兵のことをそう呼ぶ)が利用できる施設に入ろうとする度に、そこを守る衛兵らしき人に声をかけられた。


 止められる度に許可証を見せびらかして、採取に必要な魔道具類を集めた魔女は森に入ってゆく。


「……大丈夫かな」


 その後ろを気配を消し次男が尾けていた。

 普通の人だと逃げられるし、あんな姿(幼女)だが軍医中将で総司令官の命を(たまわ)っている。そう考えれば、軍内部で身分も高く強い部類である次男が守るのもおかしくはない、はず。


「ふんふふー」


上機嫌に魔女はごそごそと草むらを探る。早速、道草を食っていた。


「ふむふむ。これおいしー」


物理的に食っている。


 浄化の魔術で綺麗にした道草を口に含み、咀嚼した。そうすることで魔女は草の成分を簡単に調べられるのだ。


「……はぁ」


『またやってるな』と呆れたところで、魔女はさらに茂みの中に入ってゆく。そして姿を消した。


「あ、」


 慌てて消えたそこに近付くも既に遅く、見失ってしまった。次男は溜息を吐く。


「……まあ、父さんの服があるなら大丈夫かな……」


その人のせいで色々面倒なことになっているのだけれど。

 目頭を押さえたところで


「逃げられちゃいましたね、隊長さん」


と、すぐそばに補佐官が現れた。その余韻か濡羽色の髪がふわりと揺れる。


「君はいつからそこにいたのかな」


「連絡をもらった直後ですよ」


相変わらず気配を消すのが上手いな、と言いながらこれから書く魔女関連の書類に再び溜息を吐いた。


「帰ろう。あの人は自由な方がやり易いだろうから」


「はい」


×


 深い森の中、魔女は一人で探索する。鬱蒼としているが、所々に陽の光が入り、森の中は明るい。


薬草(やくそー)薬草(やくそー)


 ふんふん、と調子っぱずれな鼻歌を歌い、魔女は道草を食う。


「やっぱり、歌が合わないなぁ」


と、首を傾げながら。

 世界ががおかしくなってから、魔女は歌の調律がおかしくなったと感じていた。


「もう少しで合いそうなんだけど……」


『軍属の王弟より受けた命は如何(どう)した。優先しないのかな』


そう、声がする。


「いいの。おっきな樹木の葉っぱと枝はいつでも拾えるから」


 他の薬草類は季節毎に移り変わるから今採るべきだ、と魔女は言い返した。呆れた返事が聞こえる。


 (しばら)く薬草摂りをしていた所で、黒い獣が現れた。魔獣だ。

 即座に魔獣は魔女に飛びかかる。だが、魔女に触れる直前で羽織っていた白いローブが魔術式を展開し、魔獣を弾き飛ばした。


「やっぱりこのお洋服(ローブ)すごい」と、魔女は目を輝かせる。


惚気(ほのけ)ている場合か』と声がした。『獣の対処をしなさい』


「わかってるよ」惚気ってなんだろ、と思いながら魔女は手に持つ杖を振るった。


「『風吹けー、びゅーん』!」


言葉と共に魔力が集まり、杖が花を咲かせる。それと同時に力が発動し、魔獣を吹き飛ばした。

 周辺の木の幹に頭をぶつけ、魔獣が動かなくなる。魔獣を倒したのだ。

 その途端、魔獣が黒い煙と共に素材に分解される。


「やっぱりなんか、変な感じ」


 素材を回収しながら呟く。樹木の外の魔獣も、いつのまにか倒すと素材として分解するようになっていた。排除する目的としては楽だが、使える素材が減る。


『魔法を使うでない、と何度言えば判る』


ぽん、と軽い音と共に、魔女の目の前に薄く透けたデフォルメチックな猫が現れる。魔女の旅について行くと告げた呪猫当主だ。


「だってこっちの方が早いもん」


言い返して口を尖らせ、頬を膨らませる。


『人前ではするでないよ』


「分かってるよ」


魔術を使う魔人が警戒されている今の世の中、容易に人前で魔法を使うと、魔人の仲間扱いをされてしまう。なので、規定通りの魔術式を使わざる得ないのだ。


 と、新たな魔獣があらわれる。


「わわっ」


間一髪で避け、魔女は魔獣から逃げた。


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