基礎と王国7
「自分達であれを行ったくせに偉そーな面してやがるな」
魔女の同僚である人事中将は舌打ちをする。
「このままだと魔人や亜人の差別が悪化するどころか『魔術が使える』ってだけで排除されるようになりませんかね」
いつも通り、総司令官と魔女を相手に人事中将は雑談をしていた。
雑談の度に人事中将は通鳥の土産物の菓子と茶を持ち寄るのでそれを二人は楽しみにしている節がある。
「随分前から思っていたんだが……太ったか?」
ふと、「おいしい」と焼き菓子を頬張る魔女に人事中将は声をかけた。
「そっ、そんなことないよ」
両頬を押さえ、魔女は慌てる。家に帰ったら薬草の世話をしたり庭を駆け回ったり、家の事をやったりそのまま家に居着いてしまった薄紫のねこちゃんの世話をしたりしていた。だからそのはず、だと思う。と、段々と自信を失い魔女は俯く。
「そうか」
けっ、と人事中将は鼻で笑った。信じていないようだ。
「そうだよ! 子ども特有の丸み!」
「お前子どもじゃねーだろ年齢考えろ?」
思い至った事を告げると冷静に返される。
「言われても困るよ……」
頬を膨らまし、魔女は抗議した。好きで縮んだ訳でもないし、好きで子供のようになった訳でもない。「どうしたら戻るんだろ」、と魔女は呟いた。縮んだ理由が分かれば戻れるのだろうか。
「まー、お前はちゃんとモデルになれるくらいの体重制限自分でやってたしな」
と、謎のフォローを入れてきた。
「お前の伴侶に肉付き調整されてた時はまだ緩やかな変化だったし」
言葉の後半は聞き取れなかったが、本当に太ったとは思っていなかったらしい事だけ魔女は理解する。
「それで。話を戻しても良いかな?」
と、総司令官は問うた。
「先日の『精霊の偽王国』が行った世界規模の発信だけれど」
あの、世界中の通信機器を乗っ取って行われた発信は、意図したものかどうか不明だが、彼らの脅威度合いを明確に示す結果となった。
魔術系統のものや電波系統のものほとんどが乗っ取られてしまったのだから、それだけの技術力があると示したも同然だ。
「『精霊の偽王国』側に、行方不明になった宮廷魔術師が数名居るのは確かなようです」
それは自国の宮廷魔術師だけでなく、異国の上級魔術師達も混ざっているらしい。
それから『精霊の偽王国』が『あの天変地異を引き起こしたのだ』と明言したことも、混乱の要因だった。
『あんなに大掛かりな物を生み出すなど、ただの魔術師の集団ではない』『天地を引き裂き、砕き、繋げるなどなんて罰当たりな集団なのだろう』と。
「ちゃんと対策を練らなきゃ本格的にやばそうですよ、国内の魔術師達が」
そう、人事中将は注意を促した。




