基礎と王国5
虚数世界に在る拠点の王座に、二番目の王弟は座って居た。そして
「お前達、誰一人も欠けていないだろうな?」
と、目の前の人物達へと声を掛ける。
「欠けていたらその時点で『樹木の守り手』失格でしょ?」
そう、明るい声がした。
「発言は慎め。王の御前だ」
堅い声がそれを嗜める。
「無論、皆が揃っておりますとも」
至極丁寧に礼をし、助言者は二番目の王弟に云った。
「そうか。足りているなら問題は無い」
その言葉に頷く。
「では、改めてお前達に言おう」
周囲を見下ろし、玉座に座るものは口を開いた。
「王国の大樹の守護の役を、51番目に」
「はい」
嫋やかな者が返事する。
「基礎の大樹の守護の役を、20番目に」
「は」
夜のような者が返事する。
「栄光の大樹の守護の役を、15番目に」
「はい」
長身の者が返事する。
「勝利の大樹の守護の役を、5番目に」
「はいよ」
煌びやかな者が返事する。
「壮麗の大樹の守護の役を、27番目に」
「はい」
淑やかな者が返事する。
「峻厳の大樹の守護の役を、35番目に」
「はーい」
奔放な者が返事する。
「慈悲の大樹の守護の役を、28番目に」
「はぁい」
微笑みを湛えた者が返事する。
「理解の大樹の守護の役を、44番目に」
「はい」
陰気な者が返事する。
「知恵の大樹の守護の役を、1番目に」
「は」
堂々とした者が返事する。
「そして、運命の大樹の守護の役は、俺だ」
彼らは、樹木の守護者。
転生者である二番目の王弟が付けた『精霊の偽王国』の名と、『極悪の魔の名前の役』を授かった者だ。
「準備は良いか」
傅く彼等に、暁色の髪の魔王は告げる。
「お前達は、それぞれ担当の樹木を守ってもらわねばならん。まあ、各々の『樹木の主』が願いを掛けているのだからお前達が守るのは当然の話だ」
そうだろう、と魔王は彼等を見下ろした。
「力に関して不安か? 問題無い」
と、魔王はとある魔道具を取り出す。細やかな装飾の美しい、小瓶だ。中には白く発光する粉が入っている。
「お前達に授けたこの魔道具が、樹木の力の一部を貸し与えてくれる。つまり、お前達には神の加護がついているのだ。それこそ、王族級の加護が」
王族級、というと自身の領地一つを余裕で覆い隠せるほどの凄まじい守りの力と、ほぼ無尽蔵な魔力源がある、ということだ。
「並大抵の軍団にも負けない強さだ。安心しろ」
ただの軍程度ならば余裕で排除できる。ゆえに道具を失わない限りはほぼ敵なしであると、魔王は伝えた。
「……これより、我等『精霊の偽王国』は世界の敵になる」
神妙な声で、魔王は告げる。
「だが、それは我らの願いのためには仕方ないことだ」
そして力強く、魔王は部下に言い放った。
「先述した通りに、俺達には『熱き神』が付いている。つまり我等の勝利は約束されたものだ!」
それから彼等は、世界に向けてとある宣言をした。




