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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木の探索

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基礎と王国4


「――指示通り、と言うより()()()()。僕が担うことになりましたよ」


 暗い執務室で目を閉じ、魔獣殲滅部隊隊長は呟いた。


「これで良かったのですか」


 す、と目を開くと、目前に人影が在った。軍部でもあまり見ない長身は、数多もの隠蔽の魔術式ではっきりと存在が感じられない。

 ここは軍部組織の建物のはずだ、と溜息を吐きたくなる。部外者が入れるはずがないのに、なぜ当然のように侵入して居るのか。思いながら、人影の正体を呼ぶ。


「お父さん」


 悪魔が、そこに居た。


『ええ、実に助かります。後は手筈の通りに宜しくお願い致しますね』


 養父であったその者は、樹木発生とともに行方知れずになったはずの宮廷魔術師であり、魔女の伴侶の男だ。

 ()()()()()()なんて、あえて聞くほど馬鹿ではない。


 顔は見えないが、きっといつもの通り外面の胡散臭い貼り付けた笑みを浮かべているのだろう。家にいた時は、まだもっとマシな顔をしていた。


『では、此方(こちら)を授けておきます。……()れを、彼に』


そう悪魔は言い、もう一つの人影に声をかける。


「はい」


 返事をしたのは、数ヶ月前に「()()で少し出かけます」と告げ出かけていた自身の伴侶だ。彼女がそう言う時は決まって監視員の仕事の時だった。


「……」


 なぜ、二人が一緒にいるのだろう、と思う。伴侶は()()()()()()()()()()()堅い人物のはずだ。

 魔獣殲滅部隊の副隊長であるから、自身の命令を聞くのは当然だ。だが、養父の指示を聞く理由が分からない。


『他の“樹木の主”の所持物と同様の品物です』


 言われ、伴侶越しに手渡されたそれに視線を向ける。何やら()()()装飾や魔術式を凝らした魔道具らしい。そして中央には、淡く発光する紫色の粉の入った小瓶が在るようだ。


『……まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 軽く釘を刺し、


『では。(わたくし)は忙しいので、此処で』


と丁寧に礼をして姿を消した。すぅっと気配を拡散させるような、普段と違う消え方だ。


「隊長さん。一応、私は調査から戻ってきた(てい)で明日、軍部に戻りますね」


そう、ずっと静かだった伴侶が口を開いた。


「ああ、そうしてくれると助かる。……詳しい話は家で聞かせてくれるかな」


「はい。それでは、またお家で」


 頭を下げ、伴侶は()()()()()()()()()()()をする。あの消え方は、監視員独自のものだと、以前伴侶に教えられていた。

 だから、そこで確信する。養父は監視員であり、同じく監視員である伴侶の上司に値する存在だと。

 監視員長は一番上の王弟閣下だと知られているので、養父はそれに準じる副官だろうか。


「……はぁ」


 小さく溜息を吐き、魔道具を仕舞った。何か面倒なことに巻き込まれたような気がする、と。

 それに、きっとわざと見せたに違いない。今まで気付かせなかったのだから。


「……チッ」


 本当に自分一人だけになった執務室で、舌打ちをする。

 いつも遠くから指示を飛ばすだけで、今までこちらに来なかったくせに。わざと家から出て行ったくせに。

 樹木が生えてしばらくしたある日、音信不通だった養父から唐突に連絡が入ったのだ。『私の手伝いをお願いしても宜しいですか』と。


 断るつもりだった。だが『貴方の伴侶の、寿命を延ばせる可能性があります』と言われてしまえばやるしかないだろう。

 完璧な邪眼を持つ伴侶は、目の力のおかげか命が長くないらしい。だから、寿命が伸びる可能性がある悪魔の囁きに乗った。


 それに、『おばあちゃん』や『黒い人』が何も言ってこないことも気になる。()()()()()()なら何かしらの介入を行うはずだからだ。

「(……何か、訳があるな)」

一応は察していた。あの二人の大まかな正体も。だから、一応の信用をしてみる。実際、向こう側の計画が成功しても失敗しても、いずれにせよ伴侶の寿命は伸びるらしいのだから。


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