基礎と王国2
構想ができてから、実行までが早かった。
総司令官の予想通り、人事中将の伴侶と回遊派の長は提案を認めてくれ、協力してくれるそうだ。
「まずは拠点作りの許可とらないとですけどね」
と、人事中将の伴侶は答えた。樹木の伐採や魔獣討伐、武器や薬の流通を担う公共機関を作る相談は、安全性のために軍部の会議室で行われている。
「勝手にやってしまえば、それこそ国家侵略とか言われてしまうでしょうし」
他国だから融通も効き難いでしょうし、とほとんど翼になってしまった肩を竦めた。
許可なく拠点を作ってしまうなど、侵略以外の何者でもない。他国との亀裂を生まないためにも、丁寧で慎重な作業が必要だ。
「説明会とかやります?」
と、巻き毛の髪を揺らし、回遊派の頭領である友人Bを振り返る。
「そうだね、最近色々とピリピリしてるし。余計な面倒はないに越した事ない」
そう、友人Bは深く頷いた。
取引相手を納得させるにために手間暇は惜しまない、と言ってくれているらしい。
「あ、そういえばだけど。魔女の薬が比較的安値で使えるとか触れ回ったら結構食いついてきたよ」
友人Bは取引先との交渉について簡単に話す。
「さすが薬術の魔女ですよね。こちらも概ね同じ内容での交渉を行い、一応の許可をそれなりにもぎ取ってきましたので」
巻き毛の子は関心した様子で頷いた。
「もともと、どのくらいの値段で売ってたの?」
魔女の元に振り込まれる料金は大体定価と同じである。だから手数料や色々の料金がかかるはずなのだが。
「同様の薬よりちょっと安いくらい」
そう、訝しげな魔女の視線を友人Bはさらりと躱わす。
「ある意味で、あなたのおかげで公的機関つくれそうですよ。よかったですね」
と、巻き毛の子は魔女に言った。
「よくわかんないけど、役に立てたならよかった」
縮んでしまったし、あまりちゃんと魔術も魔法も使えず、一番得意な薬品生成の腕も落ちている。なので何かしらでも『役に立てた』とそう言ってもらえることは魔女に安心を与えた。




