勝利と栄光6
樹木が消えてから少し経ったある日、とある国から信じられない知らせが届いた。
『行方不明になっていた者が帰ってきた』と。
その知らせは瞬く間に世界中へと拡がった。
それはとても喜ばしい話だった。自国のことではなかったが、総司令官や大聖女、魔女は喜ばしい事だと言った。それは嘘偽りもなく心の底からの言葉だったので、彼らの善良性は筋金入りなのだな、と魔女の次男である魔獣殲滅部隊隊長や補佐官達は思ったのだ。
だが、自国で行方不明になった者はまだ帰ってきていない。考えるべき事はそちら側である。
おまけに、他国で帰ってきたらしい行方不明者はまだ人数が足りないらしい。
自国で行方不明になったものや、いまだに帰還が認められない他国の行方不明者はどこへ行ったのか。
それは深く考えずとも理解出来た。他国の樹木の中に居るのだろう、と。
「……もしや、自国に生えている樹木以外から国民が戻ってくるのだろうか」
と、総司令官は推察する。
それが事実だとすれば、なんとも性格の悪い話だ。
だが、そう考えれば色々と納得がいく。
実際、あの消えてしまった樹木の中に居た者達は、自国以外の行方不明者だったからだ。
そして『これは、自国の国民を取り戻すには他国に協力を仰がねばならないと言うことか』とも察する。だが、それはかなり難しい問題かもしれない、と思えた。
何故なら、自国の者が助け出されないのに良い資源となる樹木の伐採など、よほどの善人でなければ許さないだろう。
既に樹木を伐採した話は世界中に知れ渡っており、尚且つ樹木の中へ入る方法や、樹木の内部構造について、ある程度の情報を他国へ開示した後だった。
いくつかの国ではもう樹木の内部へ入る方法は試されており、同様に内部に資源がある事は確認されたらしい。
ただ、他国はあの選ばれた7名のようには、スムーズに上の層には上がれていないらしいとも聞く。どうやら、内部に存在する魔獣が強過ぎて、途中で撤退しているらしい。
大体は3層から5層目で止まっているのだったか。
その話を聞いた時、『やはり、王は間違っていなかった』のだと、一番目の王弟と総司令官は安堵したと言う。




