峻厳と壮麗7
暗い視界に慣れたようで、どうにか三層目の調査を終える。
察した気配同様、実際に草食動物や害のない虫がいる程度で特に苦労はなかった。また、一同は時計を見ながら休息を挟む。そうでなければ時間の間隔がわからなくなってしまうか恐れがあったからだ。身体の疲れはなく、より元気になっていくような感覚さえある。だからこそ、より慎重に行動しようと話し合った。
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三層目の調査がほとんど終わり、残りは最奥にあった巨大な扉だけだった。
扉は非常に大きく、不思議な装飾をしている。
「なんだか、ちょっと禍々しい装飾ですね……」
そう、魔女の側に立つ大聖女は呟いた。
それもそのはずで、扉の装飾は植物や動物が絡まったような様子で、動物達はどこか苦悶の表情を浮かべている。
どう考えても、趣味が良いとはとても言えない代物だった。
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「この場所には前回のように上りの階段はありませんでしたね」
と、銀髪眼鏡の方、つまり補佐官2は冷静に伝える。
「扉、ということはこの先に何かがある……ということでしょうか」
それに合わせるように、補佐官1は言葉を零した。
「開くかどうか、試してみようか」
このままではどうしようもないと、総司令官は提案する。
「く……全く、動く気がしませんが」
魔獣殲滅部隊隊長が扉に触れるが、びくともしないし何も起こらない。おまけに、長く触れるのは良くなさそうな気配がした。
「……樹木の幹に穴を開けたように、何か工夫が必要かもしれません」
と手を摩りつつ、殲滅部隊隊長は提案する。
「じゃあ、ちょっとつついてみる?」
と、魔女は葉っぱ付きの枝で扉に触れる。
すると何か固い物が噛み合わさったかのような音と共に扉が桃色に光った。そして、扉がゆっくりと外側へ開いていった。
扉の奥には階段がある。だが、先は闇に閉ざされており先が見えない。「ともかく行くしかない」と彼らは扉の先へと進む。
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扉の先は神殿のような姿になっていた。白や黒の石で作られた柱や建造物がそこらじゅうに散らばっている。ただ、苔生したり欠けたりした箇所が所々にあり、古いものの様な印象を持つ。
だがそれよりも、空の色が変わった事に、一同は驚いた。空が、朝方のように橙や赤紫色に染まっていたのだ。
「すっごく綺麗だね」
と、魔女葉眩しそうに目を細める。先ほどまで暗い空間に居たので、朝焼けの様な薄明るさでも目が少し痛むのだ。
そして、魔獣の気配があった。
神殿の様な建造物の奥から、ゆっくりと歩いて近付いてくる。
何かの石像のような姿だ。綺麗とは言い難い、人間のような顔に歪な角、歪な翼を持った見たことのない形状である。
それでも魔獣だと理解したのは、その身体が全体的に黒く目が赤く、魔獣とよく似た悪意を携えていたからだ。
一匹だけでなく、複数その姿をみる。




