峻厳と壮麗6
風の冷たい二階層目を調査しているうちに、ふと魔女は樹木へ入ってからどのくらい時間が過ぎたのか気になった。
「ねぇ、今何時くらいだと思う?」
と、魔女は何故か片時も側を離れようとしない大聖女へ問う。
「……ええと、確かに気になりますね?」
そういえば、と気付いた様子で大聖女も頷いた。だが、2人は現在の日付や時刻を詳細に知る術を持っていない。なので、ひとまず後ろに控えていた補佐官2へ問い掛ける。
「今の時刻ですか……」
と、胸元から懐中時計を取り出して少し目を見開いた。それから、すぐに確認できた時刻を伝える。
「……夜中ですね。いつのまにか日付も跨いでいます」
不思議と身体には疲労感がない。
「ずっと同じ色だからか、時間感覚が狂いそうだね」
同じように時刻を確認したらしく、青い空を見上げて総司令官は呟いた。
身体に疲労感はないものの、休憩を挟むかどうか相談や確認をとった。そして、交代で休むという話になる。
あいにく植物が増えた印象があるだけで、生き物はほとんどいないらしい。植物達の隙間を縫うように、蝶が飛んで行った。どうやら、他にも虫もいるらしい。
そして魔女は
「妖精が居そうだけど、妖精が居ないから不思議な感じ」
だと言った。妖精が見える目は割と珍しく、他の人は妖精が居るかどうかあまりわからないのだが、総司令官もその意見に同意していたのでそうらしいと周囲は納得する。
「色々とまた珍しい植物や鉱物が有るようですよ」
と、色々と回収してきたらしい補佐官1が、そう報告した。下の階よりさらに高価な物がある。
しかし、喜ぶというよりは一同は困惑した。
「……これをそのまま外に持ち出すと、価値の相場が崩れてしまうだろうね」
総司令官は心底困った様子で言う。
「階段を見つけましたよ」
と、祈祷師の声がした。くまなく二階層目を調査した一同は次の階層へ向かう。
×
そして三層目に入った途端、視界が暗くなった。
しかし誰も明かりは点けず、魔力の感覚だけで周囲の様子を探る。何故なら周囲は曇りの日のように薄暗いだけで、全くの暗闇ではなかったからだ。おまけに、よくわからない場所で明かりを点けて余計に目立つ事を避けたかった。
魔力で周囲を探ると、前の階には居なかったはずの獣の気配を感じる。
だが、それはシカやウサギなどの草食動物ばかりで、肉食獣らしきものを感知することができなかった。
やがて薄暗い視界にも十分に慣れた頃、周囲に生える木々達が前の階とよく似ているがより鬱蒼と茂っている事に気付く。
そして、その木々の向こうに何故か門が見えた。




