峻厳と壮麗2
「すっごーい」
と、樹木の幹に現れた樹洞の奥から、魔女の歓声が聞こえる。ついでに言うと、なんだかそわそわしている雰囲気があった。このまま中に魔女を放って置いた方が魔女の行方が不明になって面倒そうな気配である。
×
少し相談した結果、魔力や物理への耐性の強い魔獣殲滅部隊隊長がまずは向かった。
「……」
警戒しつつ、樹洞の光る空洞に触れる。
すると、滑らかな水のような不思議な弱い抵抗を感じた。何やらまるで動物由来の半固形物のような触れた心地だ。
当然の如く、凄まじい魔力量だった
ぐ、と押してみると頑丈な皮の手袋に覆われた指先がそのまま中へ入ってゆく。
今のところ悪い気配はなく、樹木の内側から魔女の催促の声が聞こえてくる。
このままゆっくりしていても埒が開かない上に間怠っこしいので、魔獣殲滅部隊隊長はそのまま腕、顔、胴体、などを入れた。
それに、魔女が騒いでいないので、近くに危険な要素はそこまでないだろうと予測した。
魔術及び魔法的な危険はなさそうなので、その旨を樹木の樹洞だったらしき外側へ知らせる。
それからほどなくして補佐官1、大聖女、総司令官、補佐官2、祈祷師の順序で入った。
×
樹木の中には自然があった。
緑の芝生や土、他の植物が、そこらじ中にある。
上を見上げれば、樹木の幹や葉、枝ではなく、青空が視界を覆う。それは薄暗くも、星の瞬きも無い、普通の青空だ。
「……樹木の中なのに、『空』がある」
その呆けた言葉は誰が発しただろうか。




