理解と慈悲4
王の命令で、突如生えた巨大な樹木を調査する事になった。その最中で『精霊の偽王国』を名乗る魔人の集団と、それの操る魔獣達に襲われる。だが、それは王の指定した7名が王弟や軍人、大聖女、監視員など、武力も高く、奇跡の力も桁違いに強い者が多かったのですぐに終わった。
「あれから、一切の妨害がないですよねぇ」
と魔女と並んで歩いていた大聖女は不思議そうに呟いた。
「『暁の君』……つまり、あの黒い格好の方々『精霊の偽王国』にとっての、『王様』から妨害するよう命令があったのですよね」
『王様』の単語に、総司令官がやや嫌そうに柳眉をひそめる。だが王の命令ならば、もう少し妨害にやってきそうだと警戒していたのだ。
しかしながら、現実でそうでもなかった。もしかすると、実はあまり慕われていないんじゃないかな、と大聖女はなんとなしでそう聞く。
「この調子ならば、順調に樹木の根本にまで辿り着けそうです」
×
森の中を迷う事なく、魔獣にも『精霊の偽王国』の者にも遭わなかった。まるで神がそうあれと願って居るかのような順調さだ。
樹木が近付くに連れ、徐々に木々の減少とともに魔力量の高まりを感じる。
樹木が、近い。
キラキラとした輝きと得も言えぬ不気味さがあった。
「……あれ!?」
唐突に大聖女が叫んだ。周囲のものが振り返ると
「ま、魔女ちゃんが……!」
困惑している大聖女だけがそこにいた。
魔女が居なくなっていた。
×
「わ、きれいな薬草!」
と、魔女は目的を少し忘れて藪に頭を突っ込んでいた。そして体が小さかったのと、周囲が魔力に溢れていたおかげで誰も魔女が逸れたことに気付かなかったのだ。
「珍しい。こんなところに生えてるなんて」
そう、ごそごそとしゃがんだままで草むらや藪のなかへ入る。
気が付いたら、小さな崖に出ており
「わっ!」
と足を滑らせた。
そして、ぽふん、と何か柔らかいものに乗っかる。
「……ん?」
それは、随分と大きな獣だった。




