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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木の探索

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理解と慈悲2


 『精霊の偽王国』は儀式を行い、樹木を発生させた。

 その事は『熱の神』も知っていたと『暁の君』はいう。曰く、『その力を使ってわたしは外に出るの』との事らしい。


 そうか、と悪魔は思った。『黒い人』が奇跡の剥がし方を知っているならば、恐らく元が同一であるはずの『熱の神』が知っていても何ら不思議はないのだと。きっと、『黒い人』が知っている事の大半は『熱の神』も知っている。

 だが、それを逆に考えると『熱の神』が知っている事を『黒い人』は知っているのではないか。これはある意味で『熱の神』の目的や動向を僅かでも知る(すべ)を得たのかもしれない。


×


()()()()()()()()()()()()と、知っていたな?」


 そう、『暁の君』は助言者を睨んだ。


「ええ、はい。其れは勿論」


下手に誤魔化さず、あっさりと肯定した。そちらの方が『暁の君』は信頼するだろうと判断したからだ。

 実際、悪魔は儀式を行う時点で、すでに樹木が生えるであろうことは予想済みだった。


我らが神(熱の神)に勧められたモノだと聞いていたが」


「すっかりと、彼の神と繋がりのある貴方様()らば御存知かと考えておりました」


 神妙に、そして少しの本心を口にする。


「……事前に教えて欲しいものだと思っていたが、『生贄(媒体)の魂によって変わるから言えなかった』と返された」


 言外に『お前の用意した生贄のせい』だと言っているのだろうか、と悪魔の凪いだ内心に(よぎ)る。


「『塔の悪魔(生贄の青年)』は一度『熱の神』と縁を繋いだことがある者らしく、他の者よりも一等に使いやすかったのだったか」


と、思いの外『暁の君』は理解の高い言葉を口にした。


「『樹木はただ生やすだけでは時間がかかる。もっと、樹木を育てろ』との事だ」


『そうすれば、樹木はより早く世界を壊してくれる』のだと教えてくれたそうだ。


「……具体的な育て方は答えてくれなかったがな」


と、『暁の君』は悪魔を睨んだ。

 要は『何か知っているなら教えろ』と言うことだろう。


 だから、()()()()()()から聞いた、樹木を育てるために『夢』や『願望』が必要である旨を『暁の君』に進言した。


×


「そうだ。ならば人を集めよう」


 助言者の言葉を聞いた『暁の君』は、少し考えた後にそう告げた。


 それから、十数名の『暁の君』は重宝している者達を呼び集めた。そして、樹木を育てる方法を伝える。


「それらは偽王国の者でなくとも良い」


その言葉は、意外に思える。助言者は全てを『暁の君』がかき集めた魔人達で済ますのだろうと考えていたからだ。


「強い願望を抱く者に、樹木を与えるのだ」


きっと、確実に樹木を育てる方法を使いたいのだろう。


「樹木を育てられる、『強い願望()』を持つ者を」


 だが、それを探すのは少々手間が掛かる。だからこそ、『暁の君』は有能だと判断した者達を集めたと声を掛ける。


「『自身の方が強い願望()を持っている』と自信があるならばお前達で育てても良い」


 誰かに任せるか、自身で育てるかは選ばせてくれるらしい。


「我らはただ奇跡の力を剥がし『熱の神』を解放すれば良いのだから」


×


 そして、集めた者達がそれぞれに出て行った後、『暁の君』は呟いた。


「……そもそも、この仲間のうちに強い願望を持った者などそこまで居らん」


少し憂鬱そうな言葉だ。


「貴方様は自らで育てないので」


と、唯一残っていた助言者が目を細めて問うた。


「無論、俺は育てる。お前だってそうだろう?」


そう視線を向けられ、助言者はいつも通りに微笑んだ。


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