運命と知恵10
とある場所に、二番目の王弟こと『暁の君』とその配下である『精霊の偽王国』は活動拠点となる城を作っていた。魔術に適性のある魔人や魔術使いが惜しむことなく力を使って使ったので、物理的には勿論の事魔術や奇跡、祈りへの耐性も高い相当に丈夫な建物ができる。
『暁の君』の側に現れる助言者は「管轄外ですので」と、全くの手伝いもしなかった。それが『精霊の偽王国』の者や『暁の君』に特別な扱いをされている者達の不満だったが、色々とやることがあるらしく仕方のない事だと『暁の君』は許している。
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「これで、我らの活動の不安が一つ減りましたね」
城の中でこれからの事について思考していた時、そう魔術使いが告げた。この有能な魔術使いには、魔術の書籍を多量に蓄えられる塔を与えている。そうすると、魔術使いは早速色々な魔石や魔道具などの見る者にとっては宝の山とも思えるような品々を置き、光から逃げるかのように戸を閉ざし引き籠ってしまった。
だから、魔術使いが外に出ているのは珍しいと、『暁の君』は思っている。
「そうだな。この城には選ばれた者しか入れないが」
そう、『暁の君』は城の外に視線を向けた。
目下には、巡る星々が散らばった天空と、所々に輝くものが混ざる暗い地面がある。
『暁の君』と『精霊の偽王国』が拠点を作った場所は現世の何処でもあり、どこでもない場所。つまり『虚数空間』であった。
ここなら余程の魔術や祈り、奇跡の使い手でなければ見つけられないだろうし、入り込むこともできないだろう。この場所は、『暁の君』のみが交流を許されたという熱の神の導きで見つけ出したものだ。
それに、魔術への適性が低い要するに魔人以外の人種は長居できない場所でもあった。相当に高い魔力量を所持していなければ、熱の神の持つ力によって熱の神へとその存在が吸収されるからだ。熱の神の言葉を借りれば『元の場所へ帰る』つまりは回帰というらしい。
とにかく、魔人以外はほとんど存在できないので、逆に魔人にとって最も安全な場所である。
それでも、まだ人数は思うように集まっていない。
だから、これからもっと集めるつもりだった。特に世界中で迫害されているであろう魔人達にとっては、救いの場所になるはずだ。
まずは人数を増やす。今のままではただの反乱集団でしかないと、『暁の君』は理解していた。おまけに王族や世界や国にとって大事な存在には奇跡の加護が授けられていることも知っている。これは助言者が伝えた内容であるが。
そして、それから戦力を整えてゆき、いつかは故郷の国を一旦解体して『暁の君』自身を王とした本物の王国を築き上げるのだ。
未来を夢想し、その愉悦に口元を歪ませた。




