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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
一年目

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36/600

切捨


 随分と、()()贈り物を貰ってしまった、と魔術師の男は嘆息した。

 アカデミー生達の待機場所へとさりげなく戻ると、まだ昼休憩の最中である。


「(……何、中身は(ただ)の菓子でしょう)」


それの一体何に、困る必要があるのか。受け取った小さな紙袋は、空間魔術の応用で即座に自宅へ放った。


「……(()し、『婚約者だから』との理由で渡された()らば、)」


受け取った陰で『そういう事だった』のだと、今までの行動全てが義務感からの行動だったのだと、切り捨て、()()()()()と言うのに。


「(『何となく』、とは)」


 魔術コースのアカデミー生達を観察しながら、小さく息を吐く。

 婚約者の薬術の魔女は、実に奇妙な人物のようだ。薬術自の魔女自身へ過度な干渉をしようとした者のことは既に記憶の彼方へ飛ばし気にすらしていない。

 また、薬術の魔女は自身へ攻撃していた者の事情を知るとそれを赦し、友人として側に居ることを許した。

 そして、露骨であれ、そうで無いにしろ好意や悪意は軽く流す(あるいは気付いていない)。


「(周囲へ興味を(ほとん)ど持たないかと思えば、よく分からない()()には興味を示すようで)」


 魔術師の男と薬術の魔女は、ただの書類上の婚約者だ。だが関わりがある以上は、ある程度の興味は持っている様子らしい。

 学芸祭に誘う程度、菓子を渡す程度の興味を。

 だが特に用事がない限り、薬術の魔女は魔術師の男の方には滅多に干渉をしない。魔術師の男も同様だ。


「(人()らば『興味があるもの』に対し、場合に()っては()()()(など)をも()るものだと思っておりましたが……)」


 例外というものはどこにでも存在するらしいと、思い知らされたような心地だ。


「(あの者は……『薬術の魔女』殿は、()(くらい)の興味を()()()()()()()()()()()()())」


少なくとも、薬草よりは下か。彼女の興味は薬草、好奇心、学校生活(友人含む)、その外の順で構成されているように思えるからだ。


「……………………はて」


 一体、何を考えているのか。彼女も、自身も。


「(…………()れでは、丸で……)」


『此方に興味を持って欲しい』等と、


「………………其の様な筈は」


呟いたところで、昼休憩の終わりを告げる笛が鳴る。


×


 アカデミー生達と初対面した時よりも、視察の魔術師達は幾分か減った。残ったのは自身を除いて1、2名の城勤の魔術師と、軍部の魔術師だけだ。


「(流石は軍部。()()()が尋常では有りませぬ)」


軍部の魔術師達は、ほぼ全員が残っている。そう思いはすれど、口には出さない。無駄に争いたくないからだ。

「(……()()()で居なくなった城勤(こちら)の者達は、前期の末迄に戻らなければ()()か)」


 大半は自称勇者ごときに負かされ来なくなった者なので惜しむ必要もない。


×


 そして、寒さが厳しくなった頃にふと気付いたのだ。


「(……『3倍返し』、とは噂で聞きましたが如何(どう)やって返すのでしょうか)」


と。


 質量、価格、品質。一体何を3倍にして返すのか。湯気の立つそれらを解体しながら、なんとなしに考える。

 黒い袋に細かく分けたそれらを詰め、閉じる。

 回収した魔力の結晶は魔獣と比べても()()()良質なので必ず回収するよう指示されていた。

 頭部から手に乗るくらいの大きさのものが二つ、胴体から拳一つ分くらいの大きさのものが一つ。そして、回収瓶に詰める。

 前期を終えた魔術アカデミーは現在、春期休暇の最中(さなか)だ。


「(……まあ、直接会わずとも物は渡せますか)」


浄化装置を起動させ、寒さに凍った血液を()()()()()()にする。


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