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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
巨大樹木の探索

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運命と知恵2


 王から『指定した者で樹木の調査をしろ』という命令が下され、指名された 総司令官、大聖女、魔女(幼女)、補佐官1、補佐官2、祈祷師、殲滅部隊隊長の七名、は準備を終えて樹木へと出発した。


 七名を指定されたとはいえ、身分の高い者が大半なので樹木に到達するまでは護衛役の騎士や軍人達を付けている。

 なので、樹木に到達するまでに危険な目には遭わないだろう。とは言っても、「護衛が付けられるのは、恐らく熊公爵の土地に入る前までだろう」と一番上の王弟は告げた。

 また、体力温存のために熊公爵の土地に入るまで七名は馬車に乗る事となった。恐らく生身で歩くよりも護衛しやすいからだろう。

 馬車は2つに分けられ、人の振り分けは総司令官、大聖女、魔女、殲滅部隊隊長の4人と、補佐官二人と祈祷師の3人である。直列でそれぞれを運び、魔女達の乗っている方が前方だ。一番目の王弟がそうするように頼んだので異論は出なかった。


×


 魔女の乗っている屋形(キャリッジ)の中では


「ふふふ、可愛いですねー」


そう、上機嫌に魔女を膝に乗せる大聖女と


「これから行く樹木について、どう調査をするか考えなければいけないね」


と全く気にしていない総司令官、


「……私は、御者でもよかったのですが」


と、やや死んだ目をしている魔獣殲滅部隊隊長と、馬車の観察や外の様子をそわそわしながら見ている魔女がいた。

 魔女のそわそわの内容は『膝の上でも良いのかな』と『わー、なんか柔らかい良い匂いするー』である。


「どのみち、目的の樹木に到達するまでに時間がある。だから、少し自分達の知っている『樹木』について知識を共有しておきたいのだけど、いいかな」


 総司令官は3名へ告げた。


「それ、全員が揃った時の方がいいんじゃない?」


と魔女は首をかしげるも


「大丈夫だよ。彼らは()()()()から()()()()()()


と和かに笑って言葉を返す。それに納得が行ったようで3名は軽く頷いた。しかし()()()()()で理解したのは大聖女と殲滅部隊隊長だけだ。

 魔女は「へー。最終的に共有されるなら良いかな」と相槌を打っただけである。


×


「自分達が知っている『樹木』の話……ですか」


 殲滅部隊隊長は口元に手を()り、少し考え込む。


「……『天高く伸び地へ根を下ろす樹木は、“天地を繋げるもの”の象徴になる』……くらいしか聞いた記憶が無いですが」


 それは一般の知識程度であり、特段珍しい知識では無い。それに続けるように


「確か、十字教の聖典では生命の樹木だとか、知の木とかそういう『天が授けるもの』『天の恵み』……の一部ように解釈されますね。あるいは成長するもの……でしょうか」


と、大聖女は答えた。


「そうだね。それと王家にある古い文献では、根を地の深くへ伸ばす事や地から生える事から『地が与えたもの』『地の恵み』……と、いうように書かれているものもある」


 二人の返答に頷き、総司令官は自身の知識を開示する。とは言っても、図書館や論文などにも記載されているものなので特段に秘匿されるべき事でも無い。


「つまり、樹木は天の恵みであり地の恵みでもある。それ(ゆえ)に“天地を繋げるもの”としての象徴になる訳だね」


 そして、そう言葉をまとめた。


「……特段に珍しいことでもないですよね?」


 この世界の常識を何故、今更に確認する必要があるのだろう、と大聖女は問いかける。


「そうだとも」


頷きつつ、総司令官は魔女をに視線を向けた。


「なぁに?」


だが、魔女はただ首を傾げ瞬きをするだけだ。


「ところで、“天地を繋げるもの”……つまりは天と地の神の『中間神』の話を、聞いた事はあるかな」


 話題を変えるように総司令官は再び問う。


「中間神?」「居るんですか」


殲滅部隊隊長と大聖女は怪訝(けげん)な顔をした。


「いや、()()()()()。いつのまにか、信仰が薄れたんだ」


 表情を柔らかくし、総司令官は言葉を続ける。


(つかさど)るものは分からない。ただ、物事を永続させる事が得意だという事だけしか記録が残っていない。……恐らく、両方の神にそれぞれの性質が混ざっているのではないかな」


そして、総司令官は自身の考察を口にする。


「……『存在は母体である地に還り、権能は天が引き継いだ』という事でしょうか」


 大聖女は呟いた。


「確か、それと似たような内容が聖典にも書かれていた気がします」


 「かなり古い聖典にしか書かれていないのですが」と、集まった視線でやや遠慮がちに補足する。


「……十字教は()()()を信仰するものでしたよね」


魔獣殲滅部隊は大聖女へ問うた。


「はい。大雑把にいえば唯一神である『癒しの神』へ祈りを捧げる宗教です」


 大聖女はそう答える。国内での代表である大聖女の返答はそれで良いのか。


「祈る事で『癒しの神』の持つ()()()()()()()()()による癒しの力、つまりは祈りの力を扱うのです」


そう、最後になんとなく大聖女としての面目を保った言葉を告げた。


「文献に残る中間神の権能は『回帰』『復活』『永続』……つまり『回復』を得意とする」


 『癒しの神』と『中間神』の力は非常に酷似しているようだ。


「不思議な話だと思わないかな」


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