儀式と天地
天と地が、壊れて混ざり始めた。
実際の所は知らないが、この世界の者の大半はそう思っただろう。
天は薄暗く常に夜明け前ような具合であり、地は薄明るく、煌めきを放っている。
天と地は『神』である。
だから、その神達を害したのではと儀式に関わった魔術師達は恐れ慄いていた。
「それがどうした! 我々の願いはその程度か」
と、二番目の王弟は勇ましい姿を見せている。
その不遜な態度を、ほかの魔術師や手下達は頼もしく思っているだろう。
だが、それは価値観の違いである。
手下達の殆どが普通の魔術師だ。だが、宮廷魔術師であろうが、錬金術師や軍人、王侯貴族であろうが、ただ普通の一般人なのだ。
転移者でも、転生者でもない。
だから、この世界の価値観を持ち合わせている。
だが、二番目の王弟は転生者である。
転移者や転生者は、別の信仰を宿している事が多く、こちらの常識とはやや違う行動が取れる。
要は、信仰心が薄いのであの二番目の王弟は平気なのだ。
それを知らぬ手下達は『神をも恐れぬ勇ましき我らが王』の像に見えているのだろう。
そして、転生者である二番目の王弟も、自身と手下達との価値観の違いに気付いていない。
いつの日かその価値観の違いで衝突や戸惑いが起こるだろうが、世界の壊れた今だけはその些細な違い等見過ごされる。
その様子を見て、想定通りだと悪魔は笑う。




