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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
変わった世界

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儀式の準備


 『星が落ちた日』と呼ばれる出来事が起こる少し前、暁色の髪の男、つまり二番目の王弟は助言者と共に儀式を行う場所へ向かった。


 王城の地下に有った、薄暗い場所で儀式を行うらしい。

 場所は広いものの、水路があるのか空気が澱んで湿っぽい臭いがした。


「……本当に、この場所で行うのか」


 二番目の王弟は呟く。

 横に立つ者に視線を向けると、助言者は薄く上品な笑みを浮かべ(うやうや)しく頷く。


「えぇ。此の場所は我等のみぞ知る、特別な場所で御座います(ゆえ)。空気中に溶けた魔力の量も多い」


()()()()()()()()()()のだと。


「……そうか」


 どうも胡散臭い。ただ、この男が(へりくだ)ってやけに丁寧な対応だからかもしれないが。慇懃無礼、というより貼り付けたような(うすら)寒さを感じる。

 だが、二番目の王弟は魔術や魔力の知識は有るが、魔術に精通している魔術師ではないので助言者の言葉を信じる以外に道が無い。

 もう一つ、他の魔術師達は何も言わないので、助言者は何もおかしい事は言っていないのだろうと見当を付けている。


×


 粛々と進んでゆく準備を眺め、二番目の王弟は、椅子に座ったままで小さく溜息を吐いた。


「つまらん」


 たった一言だが、準備作業中の魔術師達は怯え、慌てて周囲から離れる。


 圧倒で絶対的な王者としての存在感、特別感に、二番目の王弟は僅かに口元を歪めた。


 準備作業をする魔術師は、ただの雑魚だ。こちら側に引き込んだだけの、有象無象。

 役立つ本当の仲間は20人にも満たない。そしてその中でも、更に特別な存在も居る。

 数名程度の特別な彼らは、所謂(いわゆる)二番目の王弟にとって友人のような存在だった。身分の差や性格の問題は有るだろうが、ただの主人とその臣の関係よりは親密だろう。


「つまらないからと言って、彼らを虐めて遊ぶのはどうかと思いますよ」


 そう声を掛けた者は、特別な存在の一人だ。同年代の、魔術塔に引き篭もっていた優秀な魔術使いの男。

 元々は大変優秀な宮廷魔術師だったらしいが、肌に合わなかったから辞めた、と言っていた。


「……なんだ。お前は雑魚(あれ)の側に立つのか?」


 特別な存在ゆえに、気軽に話し掛ける事を許している。物語とは違い、本来の王と家臣は友達ごっこではないのだから。


「いいえ。遊び過ぎて壊れてしまえばまた補充しないとでしょう。面倒なんです」


 番号すら付かない雑魚は人数を補充する必要はそこまで無いのだが。

 しかし、どこぞの助言者のお陰で使()()()()が少し減っていたので、それもそうだと思い直す。


「……仕方あるまい。もっと有能な手下を集めてからでも遅くはないか」


そう返せば、魔術使いは少し安堵した様子を見せた。


「何か、言いたい事でもあるのか」


 魔術使いが居なくなった後、二番目の王弟はやや苛立った声を上げる。


「……えぇ、はい。失礼ながら」


後ろの空間から、音も無く助言者が現れた。


「貴方様成らば、直ぐにでも新たな手を集める事は容易いでしょうに……と、思考した(まで)ですが」


涼しい顔でそう告げる助言者を睨む。


「お前が、『生贄(塔の悪魔)』を捕縛する際に使えなくしたのだろう」


 実際、無力化したのは『元勇者』らしいが。手下達を回収しなかった事を指摘した。


「私は『身一つで十分』と答えましたが。『何を仕出かすか分からないから』と、十数名を連れて行くよう指定なさったのは貴方様で御座いましょう」


 だが、煽り返される。穏やかに笑みを浮かべ丁寧な言葉を述べるが、少し責めるような意味合い(ニュアンス)を感じ取った。


「もう一つ。(なまくら)持ちの『元勇者』如きに負ける者等、計画の足手纏いにしか成りませんでしょう」


 助言者は真っ直ぐに見下ろしてくる。

 どうやら、嘘は言っていないらしい。


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