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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
変わった世界

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332/600

失せ物の正体。


「方向は」

「……父さんと母さんの部屋がある方向」


 真剣な様子で問う次男に、少し考え三男は軽く方向を指差す。


「少し見てくる」


短く断り、次男は席を立った。


長男や長女が余裕そうな様子なので、緊急事態ではないのだろうと分かる。

 そうする間に三男は「ごはん作る」と言いつつ調理場に向かい、次女は、有事に長女の足がわりになる為か、長女から離れるつもりが無さそうだった。


 見に行くと、父親の私室が空いていた。

 珍しいと思うもそのまま近付くと。


「ないのーっ!」


 と部屋の奥で大泣きする魔女が居た。


 縮んでから片時も離さない白いローブの、裾をぎゅっと握り締めている。

 縮んだ魔女を見つけた時と様子がよく似ていた。


「……」


 そして、次男は入った部屋の様子で、兄姉達が訴えた違和感の正体に気付く。


「うわ。父さんの物、殆ど無くなってる」


次男の後ろから、少し遅れて長男が空っぽの部屋に入ってきた。


「もしかして。この屋敷にあった父さんの物は()()無い?」


「いや。()()()()()()()()()()()()()()()()()


 問う長男に、次男は答える。父親の部屋に入るまで、その私物が無くなっていた事に気付けなかった。恐らく、認識を鈍らせる術式が掛けられて居たのだろうと、次男は推察する。

 そして、書物については(むし)ろ、子供(自分)達が独立する前よりも、やや蔵書量は増えていたように思う。

 術の有無に敏感な長女が『なんか、物減った?』と言った程度にしか認識できていなかったので、相当に慎重に掛けられた術なのだと理解する。

 それと同時に、()()()()()()()()()のだと察した。


「ないのー」


 顔を真っ赤にさせ、魔女はぐずぐずと鼻を(すす)る。


「そっかそっか、大事なものが見つからないんだねー」


と言いつつ、長男はひょいと軽く魔女を抱き上げた。そのまま子供にするように優しく背中を撫で、あやす。

 少しして、魔女は落ち着いたようで、ただ口をへの字にするだけになった。


「……手慣れてるね」


「そりゃあ、妹弟達の面倒を見てきたし」


 感心する次男に、なんて事はない、と長男は答える。


「みんなと違って育児経験もあるからね」


それなら年期も違うはずだ、と次男は納得した。父親の呪猫の血の影響か、意外と多めに子供を授かったらしく幼児の世話は兄姉妹弟の中で一番上手いだろう。


「はい部屋出るぞー」


 また泣かれても困る、というか何も残っていない上に魔女を傷付ける場所から離れようと、長男は魔女に声を掛けつつ次男にも声を掛けた。軽く頷き、次男と長男と魔女はその部屋から出る。


「ないの」

「はいはい。ちょーっと、封印しようかー」


 涙目の魔女に返事をしつつ、長男は戸をそっと閉めた。


「……」


さり気無く、長男は厳重な封印を戸に施したらしい。文言も唱えずあっさりとやってのけるそれを見、やはり『魔女』と『悪魔』の子だなと思う。


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