その結果。
混乱した夜が明け、段々と周囲は落ち着き始めていた。
特に『魔女』が真っ先に医療施設や道具の使用を全て開放した事で、怪我人等の治療や色々が容易になり早急な処置が可能だった事もその一端を担った。
人事中将による各地域への軍人の派遣や各領地の領主達の判断の早さ、発達した魔術式等も。
「……あいつの様子、見に行ってくれないか」
そう、人事中将から頼まれ、魔獣殲滅部隊隊長基魔女の次男は母親である魔女の様子を見にいく事になった。
「待って、兄貴」
軍部施設を出た後、呼ぶ声に振り返れば弟が駆け寄る所だった。
「家に帰るんだろ。俺も行く」
「ああ。『魔女』の様子を見に行ってくれと、頼まれた」
×
屋敷内部は荒れていた。
いつもは整頓され綺麗なはずなのに、戸棚や引き出しが開けっぱなしで物が散らかっている。
「兄ちゃん、じゃなかった兄貴! こっちだ!」
焦った弟の声に只事ではなさそうだとその場へ向かう。屋敷の奥の、夫婦寝室の方向からだ。
「あ、あそこに」
見ると、奥に白い布の塊があった。
よく見れば、それはもぞもぞと動いている。
「……」
注意深く見ているうちに、そこから何かが出てきた。
「ぷは」
出てきた『それ』はぷるぷると頭を振り、くしくしと身繕いを始める。
『それ』は、小さな子供だった。
「……なあに?」
見つめる二人を見上げ、ぱちくりと大きな丸い目を瞬かせる。
子供は『魔女』と同じ蜜柑色の髪に、珊瑚珠色の虹彩を持っていた。




