後手に回る。
「最近、一人で彷徨く『勇者様』の話を聞くんだよね」
前回から程なくして開催された女子会で、友人Bは語った。
「……一人?」
その言葉に、友人Aは怪訝な顔をする。つい数日前に二人だと聞いたばかりだったからだ。
「そう。それで、誰かを探してるんだって」
頷き、友人Bは続きを語る。
以前通り、頼まれた事をこなす傭兵のような雑用のような仕事はしてくれるらしい。だが、その『勇者様』は何やら呆けた様子だという。
「……その様は『まるで、魂が抜け落ちた人形のようだ』ってさ」
俄には信じ難いんだよね、と友人Bは少し首を傾げた。
「あ。この情報は弟からの情報だから信頼できるやつね」
と情報の信憑性を示し、ちら、とその2基大聖女へ視線を向ける。
「…………」
大聖女は、何やら考え込んでいる様子だった。
「どうしたの」
魔女の声に、は、と聖女は顔を上げる。
「なんでもないですよ」
慌てて大聖女は首を振った。あからさまに怪しい態度であったが、友人達は指摘をしなかった。……魔女は本気で気付いて居なかったかもしれない。
「それで、お一人だという話の他、何か噂話とか聞いてませんか」
大聖女は友人達に問う。だが、反応は微妙だった。
「……そうですね。その『勇者様』とやらの話はこちらも同じような物です」
心底不本意ですが、と、綺麗な巻き毛の子が答える。
「ああ、それと。黒い服の集団の話なら、よく聞きますが」
その黒い服の集団は基本的に魔術師で構成された魔術に関連する活動団体だ……と、認識されていた。
今のところ、大きな危険性は無いとされて居るが、古き貴族達や十字教の上位の者等は警戒している。
何故なら、ただでさえ一般人よりも力のある魔術師の、集団だからだ。
現在はただの魔術師集団の様に、魔術式の研究や魔道具の性能向上等を行なっているらしい。
それでも警戒するのは、率いている者が王弟だからだ。
王の代行を行なっていた一番上の王弟と軍部で総司令官をしている末の王弟とは違い、普段より何をしているか分からなかった者が、突然行動を始めたのだ。
警戒しない方が難しかった。
「今のところ、こちらが提供出来る情報はこれくらいでしょうか」
そう告げ、巻き毛の子は垂れた髪を、さらりとかきあげた。
友人Bも同じだと頷く。
そして、友人Aも魔女もそういう情報は詳しく知らないだろうから、この話はここで終わりにした。
×
「……どうしましょう」
一人になった時、大聖女は小さく呟いた。
情報の早い友人Bや巻き毛の子が口にした言葉に、大聖女は、手遅れだったのだと知る。




