魔女の部下の話3。
滑らかな金髪の方、つまり補佐官1は比較的魔女の事を好意的に見ている。それは楽観しがちな性格の所以だろうが、自分達に偏見を持つ事なく接してくれているからだ。
補佐官1には家族が居ない。その上、簡単に言えば毒蛇やその周辺の退廃地区の生まれでそこから毒蛇の育成機関へ連れて行かれ、そして少しして監視員になった。
毒蛇の育成機関へ連れて行かれたという事は、何処か三親等以内に毒蛇の者の血が混ざっている。
事実、首元や背面等の身体の一部に鱗のような痣があるので、それは確かだ。
そして、毒蛇の家名を持たない毒蛇の血を持つ者は、あまり生まれがよろしくない。襲われた末の子だったり家から捨てられた子供だったりするからだ。
この国では常識であり貴族平民も問わず、多少顔をしかめるほどに醜い生まれなのに、魔女は忌避感を示さなかった。
その上、「乾燥とか大丈夫?」と気遣ってくれる。監視対象とはいえ、嫌う事が出来るだろうか。
×
「見つけました、よー」
安堵の息を吐く。ようやく、魔女を探しあてた。
見つけた場所は『医術薬術開発局』の、野菜畑である。畑の中で、服が汚れるのも厭わず熱心に草抜きをしていた。
畑はやや低い位置に作られており、周囲は芝生で覆われている。
何故、医療や薬等の開発施設に畑があるのかといえば、薬の開発に使ったり軍部の食堂で提供したりするからだ。
「見つかっちゃったかー」
と言いながら、魔女は草抜きの手を休めない。少し距離があるので補佐官1は畑の側に寄った。
「何か予定あったっけ?」
そう聞き返すので
「あと二時間後に会議だそうです」
と、苛ついていたもう一人の補佐官の言葉を告げる。
「わかったー」
返事があったのを確認して、補佐官1はそのまま芝生に覆われた小高い場所に座り込んだ。
「お仕事の部屋に戻らないの」
と魔女が問うので
「休憩を兼ねて見張りです」
そう返した。逆だったかもしれない。
ぼんやりと、魔女が畑仕事する様子や周囲の景色を眺める。
さわさわと風に揺られ植物の葉が擦れる音が鳴っていた。よく耳をすませば軍人達の訓練中の発声や武器、魔術等を使用する音も聞こえる。
魔女の補佐官であり医療を行う者として、当然の如くその資格は所持しているし、医療技術を磨く事も研究する事も、別に嫌いではない。
補佐官1は、監視員になったことは感謝している。ただのゴミ同然だった自分に意味を見出させてくれた場所だからだ。
だが、こうやってのんびりする方が性に合っているなぁと、思うのだった。




