友人達の話3。
友人Bのまとめる交魚の回遊の者は、通鳥の者と提携を結んでいる。
通鳥は陸路や空を使って、様々な国の品物を交易したり運搬したりする家だからだ。但し、交魚と違い内部は統一化されている。
「まあ。組んでるとは言っても、がっつりやってる訳じゃなくて、必要な時にお互いがお互いを利用している感じですけどね」
そう、綺麗な巻き毛の子は言う。それで、そういえば通鳥の人だったな、と魔女はなんとなしに思い出した。……通鳥出身者というか、当主なのだが。
「そうでした。私、そろそろ宮廷魔術師を辞めようかなと思ってるんです」
深刻でなさそうに、最近の出来事を思い出したかのように告げた。
「へぇ、そうなんだ」
「ちょっと勿体ない気がするけど」
「辞めちゃうんですか?」
と、友人B、友人A、聖女はそれぞれの反応を返す。
「まあ家業もありますし。というか、目的も達成しましたので」
そう、巻き毛の子は続けた。
「ふーん。目的って、いつ達成したの?」
なんとなくで魔女は問う。最近達成した、ような気が何故かしなかったからだ。
「ええと……大体数十年前くらいですかね。宮廷魔術師になって割とすぐに達成したので」
口元に手を遣り、少し視線を動かして答える。
「すぐに辞めなかったのは、上司がなんだかほっとけなかったのと、ある意味惰性で続けていた感じです」
あとは、せっかくあんなに頑張ったのに一年経たずに辞めるとか嫌じゃないですか、とも続けた。
「なんかいい感じでタイミングが測れたらいいんですけどねー」
子供持った時に辞めればよかったんですかね、と思ってもいない事を呟く。
因みに、巻き毛の子は子を持っているが、その時は上司のおかげで育休は取りやすかったらしい。
上司は『出来損ないの私が居らずともどうせ仕事は回るでしょう? それとも何か。出来損ないが居ないと困るのですか』と周囲を煽って休暇をもぎ取っていた。それに便乗して『あの人が休みを取れるのに、わたしは育児休暇が取れないんですか? あの人は取れるのに?』と圧を掛けまくった結果である。
「うちの旦那が喜ぶのはちょっと癪ですが、まあ鳥の世話が懐かしくなったんで」
あと宮廷魔術師の仕事内容がクソだった、なんて事は言わないでおいた。
あんなところに長期間居れば、人間性が歪むし絶対に身体を壊す。
上司も辞めればいいのに、とは少し思うのだがきっと本当の利用価値が無くなるまでは、続けるつもりなのだろうな、と察した。
×
「宮廷魔術師、というかそこら辺の春官とかのモブ官僚越しに聞いたんですけど、あなたそろそろ大聖女になるんでしたっけ」
そう、巻き毛の子はその2基聖女に視線を向けた。春官、というのは祭事に関連する宮廷の文官の事だ。夏官が兵士、秋官が刑罰、冬官が土木を司る。あと天官と地官、日官と月官が居り、天官が内政を、地官が教育を管理し日官が宮廷錬金術師、月官が宮廷魔術師である。
「はい、実はそうなんですよぉ」
大聖女になっちゃうんです、と穏やかに目を細め、聖女は微笑んだ。




