双子が生まれる話。
とある日。
長男の嫁が子を産んだ。おまけに、女の子の双子である。
親や年の違う家族間ではそうでもないのだが、双子などの多胎児だと、目や髪の色が産まれる兄弟同士でよく似てしまう事がある。
全く同じ色、と言うものはほぼあり得ないが。
色相、明度、彩度が限りなく近いとか、二つが一致していずれか一つの数値が大いに違う、とか。
生まれた双子は、互いの色に全く似ておらずある意味で珍しい子供達だった。ついでに言うと、その子らの色合いは特に可も不可もないものだ。
魔女と悪魔の子供達とは違い、ちゃんと生兎の病院で専門家の手を経て取り上げられた。
「わー、ちっちゃい! かわいい!」
双子として生を受けたその子達を見、魔女は表情を緩める。やはり、彼女の願いは叶いやすいらしい。
長男の嫁は生兎に程なく近い地方の貴族の娘で、噂話など気にしない者だった。両親も『有能なら気にしない』というシンプルな実力主義者で、『魔女』と『悪魔』の子供との結婚でも何の問題もなく承諾してくれたらしい。
知らせを聞いて魔女に引っ張られながら病院へ向かうと、先に着いていた嫁の両親と会った。魔女は打ち解けやすい性格なのであっさりと嫁の母親と仲良くなっていた。
それと、新しい家族の誕生に長男以外の姉弟達もお祝いを伝えに現れた。
魔女は家族との面会に喜び、非常に幸せそうだ。
「……」
それを見ながら、改めて悪魔は自分の行おうとしている計画について思考する。
世界から奇跡を剥がす、その行為について。
思考を中断されないよう、魔女に「少し、席を外します」と断りを入れ病室の外に出た。
奇跡を剥がす、という事はこの世界の奇跡をなかったことにする、或いはその力を弱める事とほぼ同義だ。
『『呪う猫』。あなたと『命の息吹』と、その周囲だけは守ってあげる』と、提案された際には言われたものの、きっと、自分とその周囲だけが助かるそれを魔女は良しとしない。
善性の強い彼女は、『救えるならみんなを救いたい』ような考えを持っているからだ。
その上、『黒い人』がきちんと交わした話を守るとも限らない。何故なら、本質に『悪意』が含まれている存在だからだ。第一、『黒い人』が守ってくれる人数や間柄等の範囲も不明である。
悪魔自身は魔女さえ無事なら基本的に他はどうだって良いが、多少は有ったらしい自身の周囲への情と共に魔女の為にも、なるべく被害は控えめに済ませたい。
そう思考していると、
空から声が降ってきた気がした。
そして思う。『次はそちら側か』と。




