星のお祭り。
「非常に浮かれてる、って」
眉を寄せ、魔女は困った表情をする。
「……そんな浮かれ方、すっごい嫌なんだけど」
浮かれて、元からそれなりに悪い性格が更に悪くなるなんて、と彼女は悪魔に文句を訴えた。
「其の様に云われましても」
対する彼は涼しい顔でさらりと躱す。もとより、彼の中にかなり害のある精霊の猫魈が混ざっている時点で、避ける事も避ける事も出来ず対処のしようのないものだ。
「……きみがお茶目なのはわかったけどさ」
それが彼なのだから仕方がない。
困った表情であるが、そこには拒絶の感情は無い。悪戯好きな猫に『仕方ないなー』と笑って許すような、そんな感じだ。
我ながらとんでもなく変な人を選んじゃったらしい、と改めて思う魔女だった。……因みに、悪魔の方も同じ事を思っているので、実際はお互い様である。
そして、悪魔のような悪辣さを『お茶目』で片付けるとは。やはり、魔女は物事の認識が少々違うらしい。
「兎も角。言う事は?」
彼女が落ち着いた頃、静かに悪魔は問うた。
「ごめんなさい。次はちゃんと言う」
真剣な表情で、魔女は彼を見つめ謝罪する。
「……出来得る限り、出て行って欲しくないのですがねぇ」
悪魔は溜息を吐いた。
「……まぁ良いでしょう」
教えてもらえるだけでもありがたい。多分。
「私の方も。もう少し、貴女を不快にさせぬよう縛って差し上げる」
目を細めて笑みを浮かべ、悪魔は告げた。
「んー……?」
なんか欲しかった言葉と何か違う気する、と魔女は首を傾げる。
……それは謝罪なのか?
「お話は終わりましたか」
少しして、いつの間にやらいなくなっていた『おばあちゃん』が、こそっと木の陰から顔を出した。周囲の妖精達も、そちら側に居る。空気を読んだのかは知らないが。恐らく、精霊の混ざった悪魔が少々感情を動かしたそれに驚いただけだろう。
「えぇ。漸く、彼女を正気に戻せました」
「わたしはジェットコースターよりもフリーフォール系に乗せられた気分」
悪魔は微笑み、魔女は口を尖らせた。そんな二人を見、『おばあちゃん』は柔らかく微笑んだ。
「ほら、これあげます。ちゃんと『ごめんなさい』ができたご褒美ですよ」
『おばあちゃん』は魔女に何かを手渡した。
「わ! きれー!」
それはようやく手に乗るくらいの、かなり大きめの魔力石である。魔女が最近『使える石がないよー』と肩を落としたそれを見たかららしい。
「すごーい! こんな大きさで綺麗に魔力が詰まってる!」
目を輝かせ、魔女は石を観察し始める。
悪魔は立ち直りが早い彼女の様子に、小さく溜息を吐いた。
「……」
そして、甘やかす其方も問題なのでは、と思い始める。悪魔も何気に甘やかす側であるが。
しかし。それを『おばあちゃん』や『黒い人』に告げても、どうやっても変わらないのだろう。




