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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
二人の生活

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265/600

 ┗2年目の夏。


 瑞々しく青い春が終わり、乾いた夏が来る。


 呪猫は二重に張られた結界のお陰で、夏場は少々快晴になり難く油照り。風はやや少なく蒸し暑く、地域の位置としては北寄りの癖をして体感では最も暑くなる。


 だから、王都の乾いた夏は平気だった。日陰にさえ居れば、暑くは無い。

 ただ、陽の光が眩い事だけが問題か。


 庭の手入れを式神と魔女の残したゴーレム(土人形)達に任せ、悪魔は持ち帰った仕事を済ませて自身の研磨へ時間を()く。

 

 作業の最中、悪魔は()()()()()()()()()()()()()


『んー、この薬草使おうかな』


 それは()()()()

 彼女の服に縫い込んだ、盗聴の呪符の効果である。


 監視用の式神は外した。理由は細いもの……例えば鳥の羽の様なもの、で術の要点のみを破壊されたらしいからだ。

 随分と警戒されているらしい。


「(……まあ。無理も有りませんか)」


 『魔女』が逃げた(悪魔)の力を(まと)った、隠蔽の術式と盗聴機能付きの居場所標識(ビーコン)が有ったのだから。

 それは同僚としても人の身柄を預かる者としても、看破出来なかったのだろう。


 だから。

 その次の日、魔女の私物に呪符の刺繍を施した。

 縫い込んだ呪符は、彼女がほぼ毎日身に纏う白衣の一部に。

 機能は監視の式神とほぼ同じ。それに『不埒な目的で近付く者を弾く』機能を追加した。……何故か自身にも発動したので、『自身を除く』の命令式も入れる。


 なので、彼女が白衣を纏っている間、悪魔は魔女の声を聴くことができた。

 因みに換えの白衣や予備にも既に仕込んである。他、私物にも。

 弁明をすると、ねこのぬいぐるみには何もしていない。


 とは言いつつ。


「(矢張り。彼女が居ない其れが(こた)える)」


 自身はこんなにも『誰かが居ない事』に弱かっただろうかと、嘆息する。


「(……彼女の声が、少しばかりの私物が残っているだけ良いではないか)」


 そう言い聞かせても、足りないと感情が訴え掛ける。


 そうか、と思い至る。


 感情を得てしまった故に、『誰かが居ない事』に弱くなったのだと。


×


 痛い。


 ふと視線を向ければ、いつのまにやら傷ができていた。


「(嗚呼、妙な癖が付いた)」


 心臓に痛みが走った時、それを誤魔化すかの様に物理的な痛みで上書きする。

 要するに、自傷行為。


 己の体は、獣に引っ掻かれたかの様に酷い有様だった。


「(……彼女に見られては困る)」


帰って来ないので、見られる事は無いのだが。

 そう思うと、更に痛みが増して思わず奥歯を噛み締める。


 見る間に、じわり、と血の色が滲んだ。それは溢れ出し、ぼたり、ぼたり、と床へ落ちる。

 早く、処置をしなければなるまい。

 咄嗟(とっさ)に、出来た生傷を魔力で覆う。すると、すぐさま傷が癒える事に気付いた。

 痛い箇所は魔力で覆い隠せば、痛く無くなるらしい。


 魔力での止血と鎮痛を行い傷に軟膏を塗り、隠した。


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