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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
二人の生活

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258/600

 ┣1年目の冬。


 寒い冬が来た。

 秋の終わりから年が明けるまでは、音も無く、静かに忍び寄る。

 だが、年が明けてから少し経つと、段々とその無慈悲で荒々しい様相を見せるのだ。


「わ! プレゼントもらっちゃった!」


 聖人の祝日の朝、魔女は枕元に現れた品物を掲げて、幸せそうに笑った。

 何を隠そう、この小娘、未だに聖人の祝福(プレゼント)をもらっているのである。


 成人の儀を終えて成人してからも、毎年必ず枕元に祝福が届いていた。

 何故、祝福をくれるのかはよくわかっていないが、きっとそういう気まぐれなのだろう、と魔女は思っている。

 子供達がまだ家にいた時、子供達と魔女は祝福をもらっていた。

 夫が祝福をもらっていたかは知らないが、喜ぶ魔女や子供達の様子を見て、少し嬉しそうにしていたのを覚えている。


 丁寧で綺麗な包装をそっと剥がし、いそいそと開封していく。


「きれーだねー」


毎年、非常に繊細で美しい包装なので実は保管していた。だから、なるべく破けないように、細心の注意を払う。

 

「ねこちゃんぬいぐるみ! ちっちゃい!」


 中身を確認し、目を輝かせた。

 ぬいぐるみは手の平に乗るくらいの大きさで、柑子色の身体に翡翠色の目をしている。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()と、少し懐かしく感じた。

 それと、『愛の日』でよく見かける菓子の缶詰。

 なんだか懐かしい気配がして、少し目を伏せる。


「……いい子、だったのかな」


 吐息のような声で小さく呟き、魔女は首を傾げた。

 だって、夫の下から離れて、自身の持ち場とはいえ軍部に居座っている。

 彼を傷付けた自覚はあるからだ。

 プレゼントが来なかったらどうしよう、と前日少しどきどきしていたが問題はなかった、或いは許容範囲内だったのかもしれない。


 そして、『祝福をもらった』と同僚の男に世間話がてらに報告する。


「は? ……あー、いや。俺も貰ってるよ」


そう、同僚は笑みを見せた。

 ほんの一瞬、真顔になったが魔女は気付かない。


 それから少しして、年越しの日が訪れる。

 年越しの儀は魔女には全く関係がない。何故なら、『魔女』は一般の貴族達には恐れられ、安全の為、宮廷の催物への出入りが禁止されているからだ。


×


 真っ白に景色を塗り潰す吹雪を、頬杖の姿勢で眺める。


 そろそろ、春を呼ぶ季節だ。

 軍部では物資の支給や護衛の仕事が入るため、非常に忙しい。

 だが、魔女は精霊に襲われやすい体質なので、寧ろ『軍部で大人しくしてろ』と牽制されていた。だから、少し歯痒く思いながらも室内で大人しくしている。


 そして、春の前の儀式を思い出す。


「(春の前……あの人は大変なことになってたけど)」


 頬杖のまま、片手間に思い付いた簡単な薬品のメモを書き記す。


 確か、『春来の儀』とやらを行うのだったか。

 今回も、きっと大変な事になるのだろう。一応、それの後処理の薬は()()()()()ので、きっと大丈夫。


 新しい季節を夢見て、魔女は目を閉じた。



※聖人を信じる=サンタを信じる

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