次女の話。
例えば、次女。
彼女は、梅紫色の髪に瑠璃色の目を持つ、見た目が魔女によく似た女の子だ。それでいて、悪魔のような妖しさを合わせ持っていた。
だが、中身は悪魔に似て苛烈。そして、魔女とよく似て天然……のふりが出来る、要は腹黒かった。
その上、少し厨二病で、独自の論理的筋道で動く。
簡単に言えば、魔女と悪魔の性格のよろしく無い部分がよく似た子だった。
「あの子が……色々と一番大変だったかも」
思い出し、魔女は呟く。
「……そうですね」
同意し、悪魔は頷いた。
他の子供達と比べ、次女は非常に妖精や精霊が見える質だった。
明るく朗らかで、人懐っこく笑顔の眩しい子。一目見れば、大抵の人物が好感を持つような子。
誰にも臆さず話しかける事ができ、交友は広く浅くを常としていた。
次女が最も懐いていたのは一つ上の長女で、屋敷や出掛け先など、大抵どこでも一緒に居たのだ。
それから兄である長男にも懐き、後述する養子を含む下の家族には少しお姉ちゃんぶって世話を焼いたり色々指示したりしていた。
心無い周囲から『魔女と悪魔の子』『相性結婚で生まれた可哀想な子』だと言われても、『魔女と悪魔の子……なんかかっこいい』と思っていたらしい。
その後、本当の意味を理解し微妙な心境になったのだが、そう揶揄われても『そうだとも、食べちゃうぞー』と軽く流して気にしていなかった。
四つになった時、呪猫に呼ばれて使役する精霊を選んだ。『家の仕来りだから』と言われて、『使役……かっこいい!』というノリで儀式を受けた。
だが、気に入ったものが居なかったので一旦儀式は中断され、六つになった時になんとなくで獣と契約を結んだ。誰も住んでいない古い家の隅で蹲っていたものを軽く拾ってきたらしい。
それから、同じような軽いノリで四体追加で契約をする。
六体目に関しては、『流石に駄目だ』と呪猫当主から静止があったため五体で止めた。
そして、初等部を卒業したのちに呪猫で修行を受けるそれを受け入れた。
呪猫当主の子を含む他の呪猫の血筋の者をあっさりと追い抜き、現在は呪猫当主直々に色々な術を教えてもらっているらしい。
もう一つ、『次期当主になれるかもしれない』と言われ、当主からも誘いがあったが、当人は『両親が納得してくれたら』と聞き流している。
因みに両親は『当人がやりたいなら』と、流している。
そんな次女は『常識に従う意味』を教える事が大変だった。
小さい時は姉の長女ものだった歩行器で素早く移動たり、悪魔の足元を潜ろうとしたりし、『危険だから』と妨害の結界を軽く張れば指先で破壊してみせた。
気に食わない対象は平気で排除しようとするし、中々に短気で家族を揶揄う者には精霊を嗾け命を奪おうとする始末。
どうにか、次女が納得出来る理由を探して落ち着かせたものの、今も少々危ういところがある。
「占いとかの雑誌も書いてるんだっけ?」
ふと魔女が問うと、
「そうですね。当人は、てきとうに『それっぽい事』を書いているだけらしいですが」
そう、視線をやや逸らして答えた。
結構当たると人気らしい。
やけに当たるバーナム効果(フォアラー効果ともいう)。
こっちの世界ではバーナムさんは居ないので別の名前だと思いますが。
……群衆該当要点効果?




