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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
二人の生活

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長男の話。


 例えば、長男。


 長男は、柑子色の髪に翡翠色の目を持つ、見た目が魔女によく似た男の子。

 だが、中身は悪魔に似て猫被りで苛烈だった。


「あの子がすごく怒った時があったよね」


 思い出して魔女は呟く。


「そうでしたね」


同意して悪魔は頷いた。


 それは確か、妹達が揶揄(からか)われた時の話だ。


 基本的に、長男は温厚で周囲とは望んで(いさか)いを起こすような性格ではなかった。人好きのする柔らかい笑顔を浮かべ、困っている人を助ける心優しい子。

 なんでも、一目でそれなりに理解して模倣してみせる、または()()()()()()をして周囲から浮かないように、()()()()()()()()()子だった。


 長男は『魔女と悪魔の子』『相性結婚で生まれた可哀想な子』だと言われても、曖昧に微笑むだけで全く気もしない様子を見せていた。


 だが、妹達がそう言った目にあった瞬間、烈火の如く怒り出して大変なことになったという。

 これが伝聞調なのは、魔女も悪魔も、その瞬間には立ち会っていないからだ。

 ある日、珍しく怪我をしていた長男が帰ってきた。その後、一緒に帰ってきた半泣きの長女が、父親に抱きつきながら教えてくれた話だ。


 揶揄(からか)ってきた子供を、笑顔で叩きのめしたという。

 そして、その話を半信半疑で長男に聞いたところ、あっさりと肯定された。

 『自分はいいけれど、妹がそういう風に悪く言われるのは我慢できなかった』

 のだという。

 そこまでだと、別に普通の妹思いの優しいお兄ちゃん、なのだが。

『ついでに心もバキバキに折って二度と自分達の前には現れないようにした』と、大変に物騒な返答があった。

 おまけに、そう言った情報が外に漏れないように周囲を色々コントロールしていたという。


 初めてその話を聞いた時、戸惑いなどの感情は浮かばなかった。

 ただひたすらに、驚きと感心があるばかりだ。

 優しいだけの子ではなく、きちんと意志や気持ちの表現を長男なりにしっかりと持ち合わせているらしい。


 ただ、本当に長男が苛烈な面を見せるのは妹達が大変な目に遭った時限定で、自身が傷ついた時や痛い目に遭った時は殆ど内容を口にせず、黙ったままだった。

 とりあえず、母親の魔女が軍医で、父親の悪魔が何でも出来る人だったので、大事に至る前に色々と気付かれて対応されなんとかなっていたのだ。


 そして、今は『家族を間接的にも守れるから』という理由で、生兎側の地方の軍に入った。

 何故生兎なのかというと、非常にシンプルでおばあちゃんの土地があるから、だそうだ。

 特に名誉等には興味がないからと、功勲の昇給などは目指さず今はそれなりの地位でそれなりに給料をもらっている。

 もう一つ、それなりに良い所の貴族からお見合いの話があって、現在交際中らしい。


「結婚しちゃうのももうすぐだよね。……あれ、そうしたら、わたしおばあちゃんになっちゃう? 初孫できちゃうかなぁ?」


 ふと、魔女は悪魔に問う。


「そうなのでは。……些か、気が早いですが」


溜息混じりに返せば、「どうしよー」と、両頬に両手を当てて魔女は嬉しそうに悶えた。


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