表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
魔女と悪魔の結婚生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

245/600

第四子が生まれる話。


 魔女と悪魔、その子供達は北部の不可侵領域の森に呼ばれた。長男と長女は二度目だが、意識のある状態の次女と預かった子は初めてである。

 次女は興味深げに、預かった子は警戒している様子で、周囲を見回していた。


「よく来た……って割と増えたね」


 少し目を見開き、迎えに来た『黒い人』は呟く。


「でしょー。すごいにぎやか……うん、賑やかなんだよー」


悪魔に抱えられた魔女は、にこにこと、心底嬉しそうな笑顔だ。


「しっかり者、のんびりさん、お転婆、物静か……まあ、人数は多いけどあんまり騒がしくない感じね」


 『黒い人』は頷き、口元をどうにか笑みの形にした。


「それと……ふぅん。前の子(次女)は獣を従えなかったの」


そして次女を見て、


「折角、祝福したのだけれど」


悪魔に視線を向ける。


「……従える才能を有しておりますが、『契約は今は結ばない』と()()()言うもので」


にこ、と悪魔は愛想笑いを返した。


「なるほど。()()()()()()()()はお気に召さなかったみたい?」


 頷き、一人納得する。


「六つになった時にまた、儀式をして」


そして、そう告げた。


「そうすれば、きっと納得してくれる」


「何しているのですか。もう用意しているのですから、早く」


 と、『黒い人』の住処の方から声がする。


「あ、おばーちゃん!」


視線を向けると、見覚えのある白い髪が見え、魔女は心底嬉しそうな声を上げた。


「ごめん、今から行く」


と、『黒い人』は『おばあちゃん』に声をかけ、魔女と悪魔、その子供達の方を見た。


「『折角だから手伝いたい』って。さぁ、あなた達も」


 それから魔女の分娩があり、『黒い人』が取り上げた子を悪魔が丁寧に洗う。

 生まれた子は、柳緑色の髪に琥珀色の目を持つ子供だった。

 初めの子(長男)以外、ほとんど髪や目の色が似ていない。

 ちなみに『おばあちゃん』は、子供達の世話をしていた。それはともかく。


 こうして、二人の間に、第四子が生まれた。


×


「四人……いや、五人かぁ」


 ベッドの上で、感慨深気に魔女は溜息を零した。

 それは、悪い気持ちは一切無く、嬉しさや何か込み上げるものがあって、胸がいっぱいになって溢れた息だ。

 預かった子は、何かと不便があるので、一時的に二人の養子として戸籍に入れてある。年齢的に次男となり、同い年だが次女の主張の関係で次女の弟。当人もそれを受け入れている。


「……経済的には、無理ではありませぬが」


軍医の魔女と、宮廷魔術師の悪魔の二人分の所得はそれなりに高い。


「序でに言いますと、補助金が毎月、初等部を出る迄付きます故。其処迄は、負担ではないかと」


人数が増えるほど、補助金は増える。


「きみが大丈夫なら、いいの」


 魔女は幸せそうに、緩んだ笑みを浮かべた。


 別に、金銭的な工面の心配はあまりしていなかった。最悪、不可侵領域の森に行けば食うに困らないから。

 魔女が笑ったのは、夫が『自分との時間が減る』等、そう言った内容で恨み言を口にしなかったからだ。

 直接血の繋がりのない子を受け入れてくれると知った時には、驚き過ぎて逆に失礼だと苦言を呈された。


 まだ油断はできないだろうけれど、こんな日々のままで、子供達全員が無事に成人を迎えられたら良いと、魔女は願う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ