友人の話。
薬猿での研修が始まって2年が経った。
そして、その間に魔女に新しく友人ができる。
口下手ではあるが、細やかな気遣いのできる男だ。
友人の男は割と珍しい姓で、聞く人が聞けばどこの出身かがわかる……らしいが、魔女は出身について興味がないので、半分くらい聞き流した。
兎角、友人の男は薬術と魔術に詳しく、妖精や魔獣についてもある程度の知見を持っている。要は、魔女が話しても話題は詰まらず、魔女にも目新しい話題が振れるような人物だ。
他の趣味は映画鑑賞や読書など、芸術的な方面である。そこは魔女とは一切話が通じなかったので、恐らく二度と話しやしないだろう。
ただ、魔女がそちらの方面に疎すぎるだけだが。
興味が無いので、話題作もほとんど内容を知らない。知っていた場合は、何故か様々な情報を広く仕入れている夫から聞いたものである。「我が妻が想定以上の常識外れと言われては多少、困る……と思いますので」と、のことだ。誰が困るのかは分からない。
それと、友人の男には甥がいるらしく、その話をたまに聞くこともある。
甥は残りやすい魔力を持っており、その魔力が原因で熱が出やすいのだと言う。
「今よりも、多少くらい魔力が出易くなれば、症状が軽減しそうなんだが」
と、いつも落ち込んだように呟いていた。
友人の男とは薬猿に来てから1年半ほど、色々と世話になっているし、よく話すので友人……のはずだ。
「(……ともだち)」
自室で、椅子の背もたれにもたれて、ぼんやりと天井を見上げる。
そうして、学生時代の友人達のことを思い出していた。
友人Aや友人B、その2基聖女。それとその3、ついでにその3と一緒に旅に出ているらしいその友人。
「(……元気かなぁ)」
友人Aとは、魔女自身の妊娠時期や育児の相談でそれなりに関わりがあったので、ある程度のことは把握している。
友人Bは、交魚の首領になるための修行中で海外に出ているらしい……と、友人Aから聞いている。時折、様々な綺麗な景色のポストカードが送られるので、元気であることは想像に難くない。
その2は、聖女として国中を巡っているはずだ。
「(まあ、聖女の話は割と聞くんだけど)」
国の聖女なので、時折、放映機でその姿を見かける。だから、それなりに元気でいることは知っていた。
その3は……
「(なにしてるのかなぁ)」
音沙汰がさっぱり無いので、知らない。
夫が通知の邪魔をしているのかもと少し思ったこともあるが、聞いた結果「斯様に器の小さい男だと思われていたとは」と変な感じに拗ねられ面倒な事が起きたので、していないのだろう多分。
ちなみに、そのくらい器が小さいと魔女は今も思っている。というか、魔女自身に関しての許容範囲が狭すぎる。他はかなり寛容というか無関心で、あとは兄に関する色々への当たりがきつい。
もう一人はその3と以下同文。
※夫はゴーレム如きに嫉妬する男
実は本日(8/22)、『薬術の魔女の結婚事情』を投稿して1年経ちます。
めでたいですね。
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