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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
魔女と悪魔の結婚生活

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月夜の拾い子の話。


「自分の子にすればいいじゃないか」


 開口一番にそう言われた。

 悪魔が拾い子を抱えて訪れた場所は、宮廷内に在る、監視員の本部にあたる部屋である。


「流石に、多いので」


だが、それに対する返答は既に用意してある。

 妻は勲功爵持ちの軍人で自身は宮廷魔術師と監視員の兼任。それなりに稼げているのは確かで、それに不自由している訳では無い。

 しかし魔女が居ない今、勝手に子を増やす訳には行けないだろうと悪魔は思っていた。


「そうか。……そうだな。確か、子を三人持ったのだったか」


 監視員長はどうにか納得する。……だが、相性結婚の関係上二人産む、のはわかるが三人目とは。


「其れに、此の目は監視員に成れば存分に役立つかと」


「『この目』というのは」


 問うと、悪魔は抱えていた子の、顔を隠していた布をそっと外す。そして、満月の様な魔力の強い目が露わになる。


「御覧下さい。恐らく此の目は……邪眼、で御座います」


迫力で息を呑む監視員長に、悪魔は告げた。


「そう、かもしれないな」


実際は色々と検査を行う必要があるが、この目の魔力の量は()()()()()()()()()

 見ただけで、分かる。


「此の目、見た対象の魔力を消す能力を、持ち合わせております」


そして、とんでもない情報が追加された。


「なんだと」


 驚き、その根拠を示せと目配せをすれば


「此の様に。私の片腕全ての魔力を、消されました」


す、と腕を差し出す。

 魔力量が随分と多いはずの、彼の腕から魔力がほとんど消失していた。

 ただの気まぐれで消すにしては手が込んでいる、と思えるくらいには異常な消え方をしている。しばらくすれば魔力は戻るので、医者に見せるようなものではない。


「……しかし。生まれてから全てを『監視員』として育てる、というのはやはり酷じゃないか?」


そう、問いかけた。


「何を仰る。何もせずにただ育てる方が、この『邪眼持ち』の子には酷になりましょう」


だが、悪魔は考えを改める気はないらしい。


「魔力の扱い方等を教え邪眼の扱い等を修練させられるのは、恐らく、此の場所しかないのです」


 ほとんど完全に閉じられた、監視員などを育成するこの場所が。


「邪眼ではありませぬが、特殊な目の、在る程度の扱い方ぐらいは私も教えられる筈です」


駄目押しとばかりに、悪魔は言う。


「其れに……王に(あだ)成す者への、良い牽制に成るやもしれません」


 宮廷内では特定の区域以外で魔力や魔術式が使えないよう制限されているが、例外が絶対に無いとは限らない。だが魔力を消せるのならば、魔術式そのものが消える。


「そういうことならば……」


 こうして、濡羽色の髪に山吹色の目を持つ月夜の拾い子は、監視員の育成機関で秘密裏に育成されることになった。


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