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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
魔女と悪魔の結婚生活

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第三子が生まれる話。


 それから。

 再び夏の暑さが戻った頃に、魔女は北部の不可侵領域の森に呼ばれた。


 『おばあちゃん』と同様に『黒い人』に夢からの干渉があり、


『こっちが祝福あげたのだから、こっちで産むのが筋じゃない?』


と言われる。

 その後、移動の術式で子供達と共に不可侵領域の森の手前に到着した。


「待ってた」


 『黒い人』は心底嬉しそうな声色で居り、


「色々やり方とか準備は聞いてるからいつでも大丈夫」


と答える。

 身重の魔女をひょいと軽々と持ち上げ、森に入ろうとした。


「あなたは、入らないの?」


振り返り、悪魔を見上げる。


「2回くらい向こうの森に入ったんでしょう? なら大丈夫大丈夫」


 軽い。ノリが軽い。

 なぜだか痛む頭に、悪魔は小さく溜息を吐いた。


 北部にある不可侵領域の森は、南部の森よりも乾燥していて、背の高い針葉樹のようなものが多く有る。また、岩場や盛り上がった地面が所々にあり、そこかしこに魔力の篭った石が落ちていた。


「わ、わ! おばあちゃんのとこと違う草とか、いっぱいある!」


 と、身重で臨月なのに、ものすごく元気な様子で魔女は周囲を見回す。


「あんまり暴れないでね、落としたら大変だから」


そう、『黒い人』は楽しそうな声色で魔女を(いさ)めた。


「ね、赤ちゃん産んだあととか、見て回ってもいい?」


キラキラと目を輝かせて魔女が訊くと


「んー、いつでもいいよ。でも、産んで一月は大人しくして」


と、困った声色でそう答える。


「旦那さんの方は、そう軽々しく行けないだろうから、今のうちに好きに見て行ってもいいよ」


「……分かりました。では、御言葉に甘えて」


無論、見に行くのは魔女が子を産んだ後の話である。


 そして分娩が始り『黒い人』は取り上げた赤子を悪魔に手渡す。

 三度目なのでさすがに慣れたが、やはりどうも、生まれた子というものは小さい。

 彼がかなり大きめの体躯をしているせいでもあるが、片手で軽々と持ち上げられ、力を込めればすぐに散ってしまいそうな存在である。


「(……矢張り、慣れぬ)」


思いつつ生まれたばかりの子をぬるま湯に浸けた。


×


「んわーっ! しわくちゃ! かんわいいねぇー」


 と、まあまあな奇声を上げ緩み切った顔の魔女に、悪魔は安堵する。今回も無事で元気な様子だからだ。

 三つになる長男はもうじき一歳になる長女の相手をしてくれていた。

 梅紫色の髪に瑠璃色の目を持つ子。


「紫色の髪、って言ったら猫のお家の人たちだよね」


明るい紫色の髪を見つめ、魔女は呟く。夫は黒紫色で紫がかった黒い色。その兄は霞色というほんのり紫がかった薄い灰色だ。


「えぇ、まあ。其の毛並みに成り易いだけであり、適性等関係は有りませぬが」


答えつつ、兄の予想が当たったかもしれんと、少し表情を曇らせる。


 ともかく。こうして、二人の間に第三子が生まれた。


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