子を預かられる話。
「では。お前達の子を二人、暫しの合間預かる」
そう、呪猫当主は告げた。
長女のことを色々と診てもらうからだ。
子を預かる、という話になった時に「序でに息子の方も見せてもらえないだろうか」と呪猫当主は魔女と悪魔にお願いをする。
「才能が有るか見せてもらいたくてね」
言われて、悪魔は嫌そうに顔をしかめたが、
「……私の血が混ざっているので、見せなければなりませぬ」
と、彼は答えたので長男と長女、二人を呪猫当主に預ける事になった。
「腐っても、お前は『呪猫当主の血縁者』なのだから」
ということらしい。
一週間ほど掛かるという。魔女は心配の声を上げるも、呪猫の当主にお願いされたのでやるしかないのだ。
「嗚呼、そうだ。周辺で泊まっても良いのだぞ。其れに、家が一つ空いただろう」
と屋敷を出ようとする魔女と悪魔に告げた。
「其れは、貴方の手元に還ったものです。私のものではありませぬ」
だが、悪魔はそれを拒否した。
「一度手元に還った其れは、何が有っても然るべき手順や処置、諸々を辿ってから貴方が自由に使えるものとなるでしょう」
そう答えると、「真面目だなァ、お前は」と、呪猫当主は苦笑した。
「其れと、既に場所は有ります」
元々、そこで寝泊まりをする予定だったのだと悪魔は答える。
「そうか、詰まらぬ」
相変わらず呪猫の当主は顔が布の面で隠れているし、声色も大して変わらないので感情が読み取りにくい。夫とは大違いだと思いながら魔女は二人のやり取りを傍観していた。事実、呪猫の決まりごとなど何も知らないので傍観者である。
×
長男と長女に1週間の別れを告げ、魔女と悪魔は彼が予め用意していたという場所へ向かった。
そこは以前、二人が雨祭りに向かう折に寝泊まりした一般区域に在る平屋の建物だ。
「わぁ、前よりなんかちょっと新しくなってるし広くなってる」
玄関に入って早々に、魔女は歓声を上げた。
少し古くて埃っぽいただの小屋が、きちんと手入れをされて広々とした小綺麗な建物になっている。
「えぇ、まあ。式神達に整えるよう手配しておりましたし」
涼しい顔で、悪魔は答えた。
一体、いつから手入れをしていたのだと聞くと魔女が一人目を産んでから割と直ぐだという。つまり、仮に呪猫に行くことになっても困らないように拠点を作っておいた、ということらしい。
「……雨祭り、一緒に行きたかったなぁ」
ぼんやりと外を眺めて魔女は呟く。
「呪猫では、此の時期暫くは雨祭りを行なっておりますので、気にする事も無いかと」
悪魔はそう彼女を宥めた。
1週間も子供を預かって何をするのだろうというと、子供の体内に保有している魔力の量や質、霊等を見られるかまたは操れるか、馴染めるかなどを調べるらしい。
長女があまり動かない事や声を発さない事、喉で詰まっている魔力との因果関係なども、それと同時に調べてくれる。
「わたしとしては、寧ろそっちがメインなんだけどなぁ」
と小さくぼやいて、横の男を見上げた。
「彼等にとっては、才能の有無の方が大事なので」
「ね、才能って何の才能?」
魔女が問うと、少し視線を動かし
「まあ、どうせ無いと思いますが霊を従える才能等」
と、悪魔は答えた。
才能が有ったら、四つになる頃にまた呪猫へ連れて行き、儀式を受けねばならないらしい。




