表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
魔女と悪魔の結婚生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

223/600

吹っ切れた。


「……なんかね、もう過ぎた事だしくよくよしてても仕方ないかもって思った」


 旅行を終えた時。

 そう、魔女は呟いた。


 その顔は諦めや絶望の混ざったものではなく、


「だから、解毒薬作る」


強い決意に満ちたものだ。


 それから、魔女は後遺症を(わずら)った兵士や魔術師達の為に、魔力放出器官の不調を治す薬を作った。

 それには少し伴侶も手伝っていたのだが、材料集め程度に手伝っただけだと彼は(にべ)も無く返す。魔女自らの力で、魔女自身が償いをしたのだと言いたかったのかも知れない。


×


「よう。意外と元気そうで良かったよ」


 と、同僚は魔女に声をかけた。


 現在、魔女の居る場所は軍部から少しだけ離れた新しい場所だ。そこでは軍人向けの強めの傷薬や身体強化用の薬、補助用の薬や物品を開発している。

 分かりやすく言えば、『魔女のために作られた隔離施設』である。


「ん。まあ、おかげさまでね」


 ふふん、と魔女は自信たっぷりそうに笑った。


「というか、きみのお仕事は?」


 窓辺に現れた同僚に、魔女は少し、首を傾げる。


「『魔女さまを元気づけさせろ』って上もうるせぇんだ」


同僚は溜息混じりに、軽く肩をすくめた。


 戦争を終わらせたその勲功を讃えられて、魔女は勲功爵を得た。子爵程度の、上位の貴族や一般的に為政を行う議員貴族にとっては『取るに足らない』と言われる爵位だ。


 だが、軍部では大きな意味を持つ。


 軍部で勲功爵を持つ者は、()()()優遇されるからだ。簡単に言えば、魔女の出世は約束されたようなもので、最終的には軍医中将になる事が約束された。


 魔女自身は、あまり身分に興味は無い。だが身分があることで以前のような目に遭わないで済み、自身の興味がある物の開発や研究ができるようになるのだと聞いて、ありがたく受け取った。


 ……『古き貴族』の交魚の頭領の一人、通鳥の当主、その伴侶、生兎の有力貴族、聖女……などから色々と圧力があったのだが。

 また、薬猿、呪猫の当主からもやんわりと注意が有ったことも、魔女の扱いが変わった要因かもしれない。

 それに、魔女が終結兵器を作った経緯を知れば、心優しい死犬の当主や慈悲深い祈羊の当主も難色を示すであろうことは、想像に(かた)くない。


「もちろん、俺個人としても元から元気にさせたい気持ちはある」


 友人が落ち込んでいる姿はあんまりみたくないしなぁ、と同僚は言う。


「仮に次戦争になっても、『魔女』(あんた)が嫌な目に合わないよう取り計らえる地位ももらったしな」


「ふーん。ありがとね」


 それを聞いて、魔女はにこ、と笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ