『魔女』のお話。
ある時、戦争が起こった。
そして、その戦争を終わらせるために、国は『薬術の魔女』の力を欲した。薬術の魔女は、薬や毒、火薬の知識を豊富に持ち合わせていたからだ。
宮廷魔術師を投入しても中々に終結しないそれを完膚なきまでに終わらそうとしたのだ。
そして、薬術の魔女はとある場所に軟禁された。
『終結兵器を作り上げるまで自由は許さない』と。
一人だと恐らく逃げられるからと見張りは数名で、逃げられても物理的に拘束できるよう遥かに薬術の魔女より力のある者が用意される。
それは伴侶である魔術師の男の許可すら取らずに、彼が戦地に赴いて連絡が取れない時期に行われた。
拘束期間は長期に渡り、渋々案を出しては却下される事を繰り返す。
毎日、『より敵を滅する案を出せ』と催促され、屈強な見張りの者からは圧力をかけられた。
それは自由と平和を好む薬術の魔女にとって、大変に負荷のかかる日々だ。
やがて、半ば発狂した状態で薬術の魔女は、とある兵器を作り上げた。
作られたそれは、対象の魔力を全て溶かす薬だった。
生命維持に使われる必要最低限の魔力すら体内に残させないもので、薬を浴びた者は魔力の大量流出で死亡する。
薬効の対象者は『指定範囲内で光を浴びた者』。
今回は、先に味方の兵士や魔術師達に保護の魔術式を掛けたので、『国境内部に侵入した敵国の兵士』が対象となった。
そして。
薬術の魔女の作り上げた魔弾は、数多の死者を出す。
国境内部へ侵入した敵国の兵士を全て殺し、見事、戦争を終わらせた。
×
そして薬術の魔女は、『魔女』と呼ばれるようになった。毒を盛る者だと。
あの強烈な閃光は、それを浴びた敵国の者の魔力を溶かした。
防御の魔術式が掛かっていたが光を浴びてしまった者、物陰に隠れて光を直接浴びなかった者にも、少し魔力が柔らかくなって漏れやすくなる後遺症を残す。
だが、たった一人の伴侶は無傷だった。腕輪に描かれた伴侶の『守護の花』が守ってくれたのかもしれない。
……まあ、それは彼しか知らないことだ。
×
「うぇねーふぃか?」
彼女はきょとんと首を傾げた。
「ふぅん。なんかつよそーだね」
そう言い、曖昧に微笑む。
「……まあ、好きに言わせておけばいいよ」
一瞬、目を伏せて悲しそうな顔をした。
「それより、さ! これ! この! 薬草の効能がねっ!」
彼女はかなり無理矢理に話を変えた。あまり思い出したくなかったのだろう。
久々に逢えた彼女は、少し小さく見えた。




