約束と契約の話。
建国のお話。
ある時。
強い力を持つ8つの国の王族、約束の締結者の9名が中立の約束をした。
8つの国の王族はそれぞれ、死を呼び死者を護る犬、呪い占う猫、毒を吐き殺す蛇、人と交わる魚、生を与え幸運を呼ぶ兎、祈り願う羊、薬を生み悟る猿、人と通じる鳥の、魔の力を持っていた。
8つの国の影響力は凄まじく、大小あれど、その属国や同盟国を数多も抱えている。
彼らは繁栄のために力を使い勢力を広げ、天を、地を、穢した。それを『父なる天の白い神』と『母なる地の黒い神』に咎められ、力を奪われる事になる。
それを、光と熱の力を持つ者が、力を彼らに返すよう二柱へと進言した。
二柱は答えた。
『返す代わりに互いを侵害しないと、天を、地を穢さぬと誓え』
『そしておまえは“約束の代償”の楔としてその身を捧げなさい』
と。
8つの国の王族と神は契約を交わし、締結者と神は約束をする。
証拠として『神に与えられた土地』を基盤とし、9名と締結者の補助の4名の使い、彼らの血縁者、身寄りのない者などで構成されたそれが、薬術の魔女と魔術師の男の住む国の成り立ちだった。
妖精の血を持っていた締結者は国の王となり、神と人と『約束』の楔となった。
魔獣の血を持つ8つの国の王族等は『古き貴族』として、国と王と『約束』を守るために身を置いた。
楔の王とその血縁は、決して古き貴族と交わってはならない。また、血の高潔さを守るため、補助をした4つの公爵家から嫁及び婿をとる。
魔力の質を上げるため、転生者や転移者と婚姻することも稀にあった。
死犬、呪猫、毒蛇、交魚、生兎、祈羊、薬猿、通鳥の八つの『古き貴族』の家は、約束を違えない為、祖国との結び付きを絶やさぬ為に、継承権を持たぬ祖国の王族と婚姻する決まりがある。
死犬の祖国はやや特殊なので少々異なるが、他の家は皆そうだ。
そして、古き貴族の家は『神が引いた』とされる国境の変動を防ぐため、国境を古き貴族家だけで塞ぐように、土地を与えられた。
8つの国の属国、同盟国も、その約束と契約は有効である。
だから、どう考えても奇妙なことだった。
他国から戦争を仕掛けられるなんて。




