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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
魔女と悪魔の結婚生活

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不穏な話。


 『相性結婚』が撤廃されてから少しして、もう少し良心的な少子高齢化を改善するための育児支援や働き方の改革があった。

 少子高齢化に対応した法律があるおかげか、申請さえすれば当日でも育児のために休めるらしい。管理職に上がると仕事の関係上、そうはいかないこともあるようだが。


 それは薬術の魔女にとって嬉しいことだった。

 手伝いの者を雇い、夫の魔術師の男も育児休暇を取っている。

 だが、手伝いの者は夕方になれば帰ってしまうし、夫は宮廷魔術師で、急用が入れば家庭よりも仕事を優先させねばならない身分だからだ。

 仮に何か文句や当て擦りを言われても、『相性結婚』の制度が有効な薬術の魔女には痛くも痒くもない。


×


 薬術の魔女は、幼い頃から野山を駆け回り野生動物や薬草と戯れており、運動能力や体力は存分にあった。

 だから、訓練は問題なく受けられるのだが。


「ちょあーっ!」

「うっわ。こいつ、急所突いてくる?!」


 薬術の魔女が素早く突き出した訓練用ナイフを、同僚はどうにか()なす。


「わわっ!」


その影響で倒れるも、そのまま流れるように彼女は受け身を取る。間髪入れず反動で起き上がり、その動きで突き上げるようにナイフを同僚の首元に突き刺そうと、


「ちょっと待て?!」

「ん、なに?」


した、薬術の魔女の手首をばっと掴み、地面に押さえ付けた。


「きみ、すばやいねー」


「そりゃどーも」


 ほぉー、と薬術の魔女は感嘆する。


「姿勢が低過ぎる。野生動物か」


 手を放して数歩下がり、同僚は少し顔をしかめた。


「え、でもその方が仕留めやすいでしょ?」


だが、薬術の魔女は不思議そうに首を傾げるだけだ。


 薬術の魔女は、対人戦が苦手だった。


「何、仕留めるつもりだよ」


 呆れた様子で、同僚は薬術の魔女を見下ろす。


「えっとー、おにく?」

「対人間用でやってくれよぉ」


 しゃがみ込んで項垂れ、深く溜息を吐いた。

 狩猟用、というか確実に太い動脈や腱、内臓を潰すような攻撃など、練習でも食らいたくない。


「対人用?」


「習ったろ。捕縛とかで無力化させるやつ」


「んー?」


 首を傾げる薬術の魔女に『なんだこいつ』と、同僚はまた溜息を吐いた。


×


「急所以外、かなりダメダメじゃねーかよぉ」


 何度目かもわからない溜息を吐く。


 いや、一応最低限の能力は有していた。だが、薬術の魔女は他の軍人と比べてもやや身長は低く、筋力も控えめだった。


「ねー! きみ、わたしの練習のために捕まってよ!」


 む、と眉を寄せ、薬術の魔女は同僚に訴える。


「嫌だね。練習なんだから捕縛で関節外そうとするなよ。しないなら練習を手伝うくらいはするけどなぁ」


「ちょっとそれ難しい」


「逆になんで普通に捕縛出来ないんだよぉ、ほんと」


 そういう感じで、突然に急所を突かれかけても平気で(さば)ける同僚と、戦闘訓練でペアになった。


「俺、人事の方なんだけどな」


ぼやきながらも面倒を見てくれるので、いい人だと薬術の魔女は思っている。


×


 それから少しして。


 突如、隣国が領土を広げようと侵攻を始めた。


 戦争が始まったのだ。


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