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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
魔女と悪魔の結婚生活

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魔女が軍門に下る話。


「ね、外に行きたい」

「庭より外に出るのは感心出来ませぬ。外出成らば、私と出ましょうね」

「なんでさー」


 彼は、相変わらず過保護のままだった。


 確かに、第一子が産まれる前から、彼は束縛の強い(たち)である。そして今回は、薬術の魔女が身重だったので彼女も受け入れていた。

 それに、子を産んだらその拘束も緩むだろうと思っていたのだ。


「何故、と。()()、貴女が子を産んでから一月しか経っておりませんし」


()()一ヵ月、だよ!」


「産後の運動もこの屋敷内で事足りるでしょう?」


「むり! 飽きた!」


 だが、第一子が産まれてからも彼の束縛が緩むことはなかった。


「……貴女が、外出したいと仰る気持ちは……其れなりに理解出来ますが」


 魔術師の男は小さく溜息を吐く。


「ならいいじゃん! きみも育休取ってるしお手伝いさんもいるんだから、わたしが一人で外に出てもいいでしょ!」


 第一子の面倒は、友人Aから紹介された信用できる者に任せている。そして、薬術の魔女や魔術師の男も子供の面倒の見方もそれぞれで教えてもらっていた。

 それは、二人目ができた際、に今回と同様に人が雇えるかもわからないので、雇わなくとも問題がないようにする為だ。


「せめて、春を迎えてからにして下さいまし。身体が冷えます故」


 第一子が産まれたのは、虚霊祭の次の日である。気がかりだった虚霊の襲来は、薬術の魔女が胎児ごと不可侵領域の森に居たので、全く問題がなかった。

 そして冬の近付く今、精霊が活発になり始める時期だ。


「むーん」


 魔術師の男の正論に、彼女は口を尖らせた。否定のしようがない。


 まあ、実のところ、()()()()()()()()()割と平気になっていた。


「(とかは言わないけど)」


言ったら更にじわじわと悪化しそうだからだ。



 薬術の魔女にとっての精神的負荷(ストレス)は——


「見てー、こういう資格取ったよ」


 と、薬術の魔女が嬉しそうになる報告した時。


「良かったですねぇ。日頃の努力が実を結んだようで」


そう、魔術師の男はにこやかに称え。


「……まあ、私は其れより上のものを所持しておりますが」

「なんでそれいうの」


 こう、マウントをとってくるところだったり。


「それ、自分でできるもん!」


 やろうとした家事や色々を


「駄目です。貴女の夫である私が、手伝って差し上げる」

「それ手伝うっていうか、取り上げられてるんだよー!」


『効率が良いから』と、さっさと済ませる。


 こういう所だったりする。


 そして、そんな彼の精神的負荷に耐え切れなかった薬術の魔女は——


×


「みてー! 合格だって!」


 薬術の魔女は、実に嬉しそうに報告をする。次は何を取ったのだろうか、と魔術師の男は振り返った。


「……何の資格を取得したのですか」


実際のところ、彼が資格でなんかマウントとってくるのは『同じ資格を持ってたらお揃いっぽい』とか『彼女の知識に置いていかれないで済む』とかいう安心を求めた奇妙な結果だったりするのだが。


「軍医!」

「…………は?」


 にこにこと満面の笑みを浮かべる彼女は、漆黒の軍服を纏っていた。

 腕の腕章は間違い無く、軍医部門のものだ。



 ——魔術師の男(宮廷魔術師)の力の及ばない、場所(軍部)へと逃亡した。


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