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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
一年目

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17/600

やっぱりよくわからない。


 2日目は、1()()()()()()が効いたからか、沢山の客が入った。

 1日目は、ただ校舎内を歩いていただけではない。薬術の魔女は、自身と魔術師の男の背中に宣伝のポスターを貼り、宣伝用の看板を持って校舎中を歩き回っていたのだ。

 魔術師の男はすぐに背に貼ったポスターに気付き、そのあと溜息を吐いたものの、彼は宣伝ポスターを付けたままでいてくれた。(彼は背が高いので良い広告塔になってくれた。)

 おまけに、宣伝をした時の魔猫の姿で手伝いに来てくれたのだ。


()()()を貸しましょうか?」


 と魔術師の男は、想定以上の人に囲まれあわあわとしていた薬術の魔女に言った。

 まるで悪魔と契約したかのような心地だったが、実際彼は有能で人の流れを綺麗にさばいたり、客の話し相手などをしたりと、大変に役に立ったのだ。

 冷やかし客の相手もしてくれ、薬術の魔女は薬売りのみに専念することができた。


「きみってなんでも出来るんだね……」


 人の流れが少なくなり会話ができるほどの余裕が生まれた昼ごろ、薬術の魔女は魔術師の男に感謝と感心を述べる。


「当然です。私は有能ですからね」


「ほえー」


 つん、と澄ました様子でいつものように返されたが、少し得意そうな、嬉しそうな様子に見えた。


「やっほー、大盛況だね?」

「お昼ご飯になりそうなもの、色々買ってきたわよ」


 友人Bと友人Aが、手を離せなかった薬術の魔女のために食料を持ってきてくれた。


「こんにちはー、僕は飲み物を持ってきたよ」


と、その3も、ボトルに入った飲み物をいくつか買って、持ってきてくれたらしい。


「なんだか悪いなぁ……あ、レシートとか領収書とかあったらちょうだい。お金出す」


「これとか全部、僕からのプレゼントみたいなものだから、気にしなくていいよー」


 と、その3は微笑み、薬術の魔女に言った。


「そう? ありがと!」


薬術の魔女は三人から食べ物の入った袋を受け取る。


「……その人が、婚約者の人?」


「うん、そうだよ」


 首を傾げるその3に、薬術の魔女は軽く頷いた。その3は、廊下に貼り出されていた相性結婚の通知達に目を通していたらしい。


「初めまして。婚約者がお世話になっております」


「…………? ……よろしく、お願いします」


不思議そうにしながらも、その3は魔術師の男に礼をし、


「じゃあ飲み物も渡せたことだし、そろそろ僕は持ち場に戻るね」


と、一人先に帰っていった。何か、受付の係をしているらしい。


「婚約者さんの分も、何食べるか分かんなかったけど入ってますよ」


「お疲れ様です」


態々(わざわざ)どうも。有り難く、頂戴致しましょう」


 友人Bと友人Aに魔術師の男は感謝を述べる。


「ねぇ、」


 と友人Bは薬術の魔女の袖を引き、声が聞こえない程度にまで魔術師の男から引き離す。そこに友人Aも薬術の魔女を挟みこむように、反対側に回った。


「すごくいい人だね、手伝ってもらっちゃってさ」


「うん。すっごく助かってるよ」


「身分も顔も、性格も良いなんて随分な優良物件だから、取られないように気を付けるのよ」


 友人Bも、友人Aも、薬術の魔女の相性結婚の相手との関係性を不安視していたのだが、この様子だと大丈夫そうだ、と安心したのだった。


「性格?……うん、まあ、顔が良いのは確かなんだけど……ってなに?」


「なんでもないわ」


 友人Aがすっごくにこにこしている。


 そして、2日目の終日まで手伝ってくれたのだった。……しかし。


「(仕事、大丈夫なのかなぁ?)」


 手伝ってくれるのは嬉しいが、それで彼自身の仕事が大変になるのは望んでいない。


×


「……3日目も来てくれたの? ありがと!」


 3日目、つまり虚霊祭当日であり、魔術アカデミーの学芸祭の最終日の日。

 この日もまた、魔術師の男は来てくれたのだった。


「お仕事、大丈夫?」


 首を傾げ、問いかけるも、


「仕事に関しては、何の問題も有りませぬ」


 と、涼しい顔で答えた。


「そうなの? なら良かった!」


薬術の魔女は安堵のため息を吐く。


「……(ただ)、」


 魔術師の男は口元に手を遣り、低く呟いた。


「…………嫌な予感がしたもので」


「ふーん?」


×


「あ、そうそう。今日は午前でお店は終わりなんだ。午後からは虚霊祭が本格的に始まるから、『子供は街に出るように』…って学校が」


 人の流れがまばらになった昼前に、薬術の魔女は魔術師の男に告げる。


「ふむ。御守りの菓子を貰いに行く為でしょうか」


「うん、そうだよ」


 薬術の魔女は頷く。


「あっ、きみは大人だし貴族だからあんまり関係ない感じ?」


「…………如何(どう)なのでしょうね」


問い掛けると、魔術師の男は少し視線を動かし呟いた。


「なに、その返事?」


「最近は、貴族でも庶民に混じって虚霊祭へ参加する者も増えて居りますので……」


「へー」


「取り敢えずは、様子見……でしょうか」


「様子見?」


「えぇ。斯様(かよう)な催し物の経験が(ほとん)ど無く」


「なるほど」


「……ですが、貴女に手渡す分の魔除けの菓子くらいは用意しておきましょうかね」


 そう告げ、魔術師の男は口元に手を充てる。


「え、いまから?」


「そうで御座いますね。顔合わせをした今だからこそ、()の様な魔除けが必要か分かりましたので」


「へぇ。…………どこかで待ち合わせとかしといた方が良い?」


「いいえ。貴女の居場所等、卜占(ぼくせん)で直ぐに分かりますので」


「ぼくせん……占いで? あ、薬草採りに行く前、早朝に待ち伏せしてたやつ?」


「然様で御座います」


 思い出す薬術の魔女に、魔術師の男は軽く頷いた。


「あれびっくりしたよ。ちょっと怖かった」


「……()れは申し訳ありません」


「いいよ。だって、わたしのために来てくれたんでしょ?」


「……………………そうですね」


「えっ、なにその苦汁を舐めたような顔」


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