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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
同棲生活

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圧倒的に足りない手。


 朝日が差し込み、その眩しさで薬術の魔女は目を覚ました。


「んー、よく寝た」


何か嬉しい夢を見た気がするが、内容は覚えていない。

 一瞬、何かいい香の様な香りがした気がしたが、記憶に結び付く前に消えた。


「そうだった、今日からお仕事」


 時計と日付を見て慌ててベッドから抜け出し、簡易的な部屋着に着替えてから部屋を出る。

 既に魔術師の男の気配は屋敷内には無かったが、用意されていた朝食は温かかった。恐らく、式神が薬術の魔女の起床に合わせて作ってくれたのだろう。


「(式神って、『お手伝いさん』なんだよね? たぶん)」


以前、彼女へ説明する際に『本来の使い方と違う』とは言っていたものの『同じようなもの』とも言っていたので、そういうものなのだろう。

 式神って便利そうだな、と思いつつ朝食を口に運んだ。


「ん、おいしい」


温かい汁物が、じんわりと中身を暖めてくれる気がした。


 歯磨きや軽く化粧などの準備をし、なるべく見栄えの良い服に着替える。


「よし、がんばるぞー」


火の元や戸締まりを確認し、彼女は屋敷を後にした。


×


 店の場所は大通りの一角で、以外と悪くない位置である。運良く、いい場所が貸し出されており、そこを借りたのだ。

 客の目に付きやすく且つ入りやすい場所のために少し値が張ったが、今まで学芸祭や街頭市場(バザー)で売っていた分の、売り上げと言う名の資金源があったおかげで何とかなった。

 また、実は去年の学芸祭や街頭市場(バザー)などで、開店する事や店の位置も事前に告知している。リピーターの人や数名の興味を持ってくれた客なども来てくれると言ってくれたので、完全に客が来ない、ということにはならないはずだ。


 他の難しいお金関係の話は魔術師の男がなんとかしてくれ、現状はとにかく商品を売って稼いで売上と品質の管理さえすればどうにかなる状態だ。


「(やっぱり、なんでもできるんだなあの人)」


と、経理関係の書籍を読みながら薬術の魔女は関心していた。

 今回は魔術師の男に手伝ってもらっていたが、頼りっぱなしは気が引けるからだ。


 売り出しているものは風邪薬、傷口、のど飴、化粧水、香り袋など。全部薬草の調合や抽出で作ったものである。

 そして、開店日は『休日の方が集客の見込みがありそう』との(やや安直な)理由で休日と少しの平日に決めていた。

 だが、今週は『開店記念』と称して1週間丸々店を開ける。初めの1週間でどうにか新しい客を掴もうという魂胆だ。


×


「今週1週間、よろしくね」


 開店前の店の中で、動きやすい恰好にエプロンを付けた薬術の魔女はその3に声をかける。


「うん。僕も丁度、旅に出る為の資金が欲しかったんだ」


人懐っこい笑みを浮かべ、同じエプロンを身に付けたその3は頷いた。臨時の手伝い要員として薬術の魔女はその3を雇ったのだ。

 前回の学芸祭でも手伝いをしてくれていたし、丁度仕事を探していた様子だったので声をかけた。その3は開店記念の1週間を丸ごと手伝ってくれるらしく、感謝しかない。


 そして、開店初日だからか思いのほか大勢のの客が入る。また、その内の何人は学芸祭や街頭市場(バザー)で獲得した客だったようで、「開店おめでとう!」と喜んでくれていた。

 開店記念の1週間が終わった後は、学芸祭の時のように1人で経営する予定だったが、なんとなくでこのままだと手が回らなくなるような、危ないような予感がしている。

 間違いなく人手が必要だ。その3は今週の手伝いが終われば旅に出てしまうので、ずっと雇い続けることができない。何か対策をしなきゃ、と客との対応をしながら薬術の魔女は考える。


 1日目は物珍しさからか、リピーターの他にもたくさんの客が足を運んでくれ、商品のほとんどが完売した。

 売れたものと売上金額の確認をして、異常がないことに安堵する。

 その3への給料は週末に渡すことになっており、この日はそのまま別れた。売上を金庫に仕舞い、戸締まりときちんとして店を後にする。


「とりあえず、人手……うーん」


 首を捻りながら、家路についた。


×


「ただいまー」


 解錠し屋敷に戻る。と、目の前に式神が現れた。


「ん、なに?」


なんとなく着ている服や荷物に注目しているような気がしたので、荷物や上着を渡してくれ、ということだろうかと、それらを渡した。

 それが正解だったようで、上着や荷物を受け取った式神はそれらを居間や洗濯場などへ持っていく。


 式神達の、その様子を見て


「……あ、式神(お手伝いさん)だ!」


と、ひらめき、その手があったと1人で頷いた。


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