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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
同棲生活

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155/600

(目の前にいる人物もやや同類)。


「少し、付き合っていただけませんか」


 とある休日。

 薬術の魔女に、魔術師の男は声をかけた。


「なにに?」


返事をしながら、薬術の魔女は近寄る。彼女は、魔術師の男の姿を見つける、あるいは彼が声をかけると、何の躊躇もなく近付いてくるのだ。


「外出に、です」


 その警戒心の薄い行動を怪訝に思い、目を細めながらも魔術師の男は言葉を続けた。これから共に過ごすとはいえ、魔術師の男と薬術の魔女はまだ他人、その上異性同士だ。なので多少の警戒心くらいは持つべきだと彼は考えていた。


「どこにいくの?」


しかし彼の内心を知らず、彼女は魔術師の男の近くで立ち止まる。丁度、一歩踏み出せば容易に手が届く範囲だ。


「少し前に、連れて行くと話したでしょう。……呪猫の『雨祭り』に行ってみませんか」


「ん! わかった」


出かけるのが嬉しいのか、彼女は目を輝かせる。それに目を細め、「(是で依り強く縁を結ぶ事が出来る)」と魔術師の男は内心でほくそ笑んだ。


「ところで、その『雨祭り』にはいつ行くの?」


 承諾したものの、時間がわからなければ行動の予定が組めないので薬術の魔女は問いかける。


「今度の()()()です。……明後日くらいでしょうか」


 懐から取り出した帳面を開き、魔術師の男は答えた。


「……わかるの?」


「ええ。一月の天気の予測等、私の手に掛かれば容易(たやす)い事です」


「へぇー」


 首を傾げる薬術の魔女に、魔術師の男はさも当然に頷く。空気の流れや温度、魔力や魔獣の発生と、様々な環境要因で変わる天気の予測ができるのは、かなり優れた魔術師である証拠だ。


 その帳面に何が書かれているのだろう、と気になって薬術の魔女はのぞき込む。だがびっしりと書き込まれた様々な色の文字で良くは読み取れなかった。その上、いくつかの文字は特殊な崩し方をされてあるのか、さっと見た限りでは一文字でさえも判別できないものもある。きちんと書かれた文字もいくつかあり、それは綺麗な形をしているので悪筆ではないらしいことだけは理解した。


此度(こたび)の『雨祭り』へは、泊まり掛けで向かう予定なのですが。宜しいですか」


「え、お泊まりするの?」


 思いがけない言葉に、薬術の魔女は魔術師の男の顔を見た。彼と泊まりがけで出かけるなど、初めてだ。


「そうですね、色々と準備が必要なもので……」


 彼は少し考える様に視線を動かし、


「一泊で二日、貴女を拘束致します。宜しいでしょうか」


そう、念を押すように問いかける。きっと、急に入れた用事で彼女の予定が狂わないかを気にしているのだ。


「ふーん、いいよ。特に必要な用事も、ほとんど終わってるし」


問いかけに対し、薬術の魔女は別に問題はないと頷く。来月から開く予定の店の準備も、ほとんど終えていた。


()れは僥倖(ぎょうこう)。では、準備が出来次第、出発を致しましょうか」


 彼女の返答に満足し、彼は提案をする。


「わかったよ。でも、その代わりに、近くを案内してね。わたし、猫の家の土地のこと、ほとんど知らないんだから」


「了解しました。元より、案内をする予定は有りました」


 そう言い、魔術師の男は札を取り出した。


「移動には()れを使用致しますので、何時(いつ)でも出られますよ。……可能成らば、昼前には目的の場所へ到着したいのですが。まあ、出立の時間は気にせず」


「移動用のお札?」


「ええ。無理を言って一つ場所を借りましたので、其処(そこ)へ向かう(ため)のもので御座います」


「へぇー」


×


 そして雨が降るであろう日の前日、二人は札を用いて呪猫に向かう。


「準備できたよー」


「では、此方(こちら)に入らして下さいまし」


 荷物を持った薬術の魔女に、魔術師の男は腕を差し出した。


「……うん」


そっと腕に掴まると、服越しに伝わる彼の腕の感触に少し緊張する。


「行きますよ」


腕に彼女が掴まったことを確認し、彼は札を使用した。


×


 着いた先は、小さな木造の建物の中だ。

 以前見た呪猫の建物と同様に、木製で平たく開放的な構造らしい。ただ、床は思いのほか高くはなく、土壁らしきものが多い。そして、紙や硝子の貼られた引き戸がある。


「ここが、借りた場所?」


「はい。(そして)、外出の際には()れを身に付けて下さるように」


と、お面を渡される。


「わ、ねこちゃんのお面」


「貴女の身を守る為にも必要なのです」


「ふーん」


 以前、呪猫の本家に連れてこられた際も、顔に布の面を付けていたことを思い出す。


「お顔、隠さなきゃいけないの?」


薬術の魔女は疑問を投げかける。


「……そうですね。恐らく、貴女にも見えている筈ですが」


少し言い難そうにしながらも、魔術師の男は答えた。


()の土地には家柄や周囲の環境の関係上、()()が多く存在して居ります。彼らは、目を合わせると、連れて行ってしまうのです」


 呪猫の周囲には北部の不可侵領域の森や死犬の土地がある。だから、死犬や不可侵領域の森を避けた精霊がこちらに多く訪れるのだ。


「連れていかれるって、どこに?」


()の世、詰まりは死後の世界だと言われておりますねぇ。又、場合によっては『神』の元へと連れて行くそうです」


「つまり?」


「魂が抜かれて死んでしまうのだとか」


「うぇー、シンプルに物騒」


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