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薬術の魔女の結婚事情  作者: 月乃宮 夜見
三年目

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支援って大事だよね。


 薬術の魔女は、この間回収した『夢見草』の花でとある実験を行なっていた。

 夢見草の花を擦り潰したり乾燥させたりして、成分を抽出する。それらを半固形物(ゼリー)にしたり粉末のまま魔力水を追加して練り上げてみたりと、様々な形状にした。

 それから、作ったもの達を持って危険性の低い魔獣の出る山へ向かい、効能を確かめ情報(データ)を集める。


 そして、その結果を見て確信したのだ。


「やっぱり、『夢見草』には、魔獣や精霊を払い除ける効果があるみたい」


だと。


×


「……これ、結構な大発見じゃない?」


 自室の中で、薬術の魔女は小さく呟く。そして、少しどきどきと胸の高鳴りを感じていた。うまくいけば、()()()『魔獣・精霊避け』が作れるのだから。

 作り上げればきっと、色々な人の助けになるものができるはずだと確信したのだ。


 今までは、生き物避けの薬剤や音、魔術を利用していた。しかし魔獣専用で効果があるわけではない。なので、生き物採取を行うにはあまり向かず、そういう者は魔獣を専用で狩る軍人や傭兵を雇っていた。

 軍人や傭兵を雇えない者は無謀にも単身で出歩く事になり、魔獣に襲われてしまう事件が実に多かった。

 かく言う薬術の魔女も軍人や傭兵を雇えるお金は持ち合わせていなかったので、いつも単身で山や森に入っていた。(だが薬術の魔女は植物しか採取しないので遠慮なく生き物避けの薬剤や音、魔道具を利用している)

 『夢見草』の花のとある成分は()()()()()()()に、忌避効果を与える。


「そういえば……おばあちゃん、畑とか家の周りに夢見草植えてたなぁ」


 もしかしておばあちゃんは知っていたのだろうか、と思うが、薬術の魔女が調べた限りは、そういった論文や研究は見つからなかった。

 実は、修学旅行の間にも薬猿の図書館に入って論文の確認をしたのだが、薬術の魔女が覚えている限りではそういった内容は、『一部の魔獣や精霊と、似た系統の動物』に効くものだったはずだ。


「……まあ、とりあえず研究内容決まったから良いや」


 ということで、薬術の魔女の卒業に向けた研究の内容は『夢見草の花を利用した、魔獣と精霊のみを排除する薬について』となることに決定した。


「(あとはもっと夢見草の花を集めて、より詳しく成分の抽出と分析、実験しなきゃ……)」


 めんどくさいなぁ、と思いながらも薬術の魔女はわくわくしていた。


×


 次の日から、薬術の魔女は大量に夢見草の花を集めることにした。

 魔術師の男が作った札をきちんと持ち、ついでに緊急脱出用の札も複数枚もらった。それは木の札の簡易的なものらしく、一度使ったら燃えて使えなくなるらしい。


「足りなくなりましたら、私に連絡をしなさい。次の日には10枚だけ、用意します(ゆえ)


だそうだ。


「ね、きみの部屋に入った時に結構珍しい器具とかあった気がするんだけどさ、使っていいものとかある?」


 とある休日、薬術の魔女がマナーを教えてもらいがてらに魔術師の男に問いかけると


「えぇ。折角ですから、実験のできる部屋を御用意いたしましょうか」


そう、魔術師の男は言ってくれた。


「いいの!?」


「はい。屋敷内にある器具を()の部屋へ持ち出せる全てを出しておきますので、其処(そこ)で実験も行うと良いでしょう」


と、薬術の魔女の部屋の近くに、実験器具置き場と実験室を用意してもらった。

 ついでに、欲しい器具があれば買ってくれるとまで言ってくれたのだ。


 そしてその言葉通り、次の日には彼は実験室を作り上げていた。おまけに、水も火も自由に取り扱えるようになっているらしい。


「(……これが、お金持ちの支援者を持った薬師の状態かぁ)」


そう思いながら、薬術の魔女は屋敷に造られた実験室で抽出の作業を行うのだった。


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