7 骨と連休とツーリング?
お待たせしました第7話を更新しました!
いよいよゴールデンウィークです。どんな休日になるんでしょうね。
自動車学校で仮免試験に合格した私達でしたけど…… 今週木曜日からゴールデンウィークです。路上教習も卒業検定も連休明けでないと当然無理です。大学の方といえば……
「今日の実習は絵を描かないといけないらしいですよ」
梨菜がそう言ってますけど……
「絵を描くってなにを描くの?」
「さあ、そこの所はよく解らないけど……」
梨菜とカッキー、それに私がそう話していた時、実習室に骨格標本が持ち込まれました。
「何があるの!」
カッキーはちょっと不安そうですけど、それを教えてくれたのは二階堂君です。
「今日の人体構築学の実習は骨格標本をスケッチするんだよ」
「それって必要な事なの?」
「カッキー骨には大きい物から小さい物までさまざまだし名前もあるからこれを描いて覚えるという事だろう」
二階堂君はそう言いますけど…… 確か、細胞とか臓器なんかもスケッチするんだよね。
「はい、それじゃ実習を始めます」
人体構築学の水野先生が、骨格標本の一部を各班に置いていきます。これをスケッチするという事です。
「これって足の骨だよね」
カッキーは興味が出て来たみたい。
「うん、そうだね! これをスケッチする訳ね」
私がそう言うと……
「そう、前にある全体の骨格標本を見てどう繋がるかも見ておくといいよ」
水野先生が言いました。それを聞いて私達は全体の骨格標本を確認します。
「これって結構入り組んでいて大変だね!」
生田君はそう言いながら早速スケッチを始めました。私達もそれぞれの角度からスケッチを始めます。玲華達はどこの部分を描いているんだろう? 気になりながらも私は自分の課題に専念します。
午前中の実習が終わり今からお昼ですが、なんだか終わる気がしないので食事をした後、私は実習室へ戻る事にしました。
「飛鳥、お昼は?」
玲華です。
「食べたよ! 今から実習室に戻るとこ、玲華は?」
「私も同じ、考える事は同じみたいね」
「ねえ、玲華はどこの部分を描いてるの?」
「私達は手を描いてるわ、手首から先の部分ね」
「私達は足を描いているけど…… あれって今日中には終わらないよね」
「あっ、無理無理! だって前期試験終了までに提出って水野先生が言ってたじゃない」
「えっ、そうだっけ……」
「それに、今六班で描いているのを交代で全部描かないといけないから」
「あっ、そうなんだ……」
私と玲華は実習室に戻ると、また続きを描き始めました。
「いや、君達は熱心だね!」
「水野先生!」
「このスケッチの提出は前期定期試験が終わるまでで良いよ。連休もあるし、夏休みだってあるからね」
「はい」
私は取り敢えず返事をしましたけど……
「まあ、あまり慌てる事ないよ」
そう言うと水野先生は実習室を出て行きました。まあ、今の話では実習は始まったばかりのようです。
五月の連休に突入です。今年は一日、二日が土曜と日曜なので五連休です。なんだかこんなに休んだら五月病になりそうです。
「自転車部でツーリングに行くそうよ!」
そう言うのは遥香です。
「えっ、なに、どこに行くの?」
私が訊くと……
「貝崎市の海を目指すんだって!」
今度は静香がそう言いますけど……
「なにそれ?」
玲華も不服装を言ってますけど…… 橋本市から隣県の貝崎市まではおよそ二十キロは離れていると思うけど…… これを往復するってこと?
「往復四十キロを走るってこと!」
玲華は最初から無理と諦めムードですが……
「取り敢えず片道は今までリタイアした人はいないんだって!」
「それじゃ、私が初のリタイアかも」
「えっ、飛鳥も!」
私は恥ずかしそうに頷きます。それを見た静香さんは少し頭を抱えて……
「自転車部で四十キロはウォーミングアップなんじゃない」
「でも、たいした活動はしないんじゃ……」
まあ、ダメもとでそう言いましたけど……
「飛鳥も玲華も少しは体力つけないと医師になってから大変だよ」
静香からそう言われてしまいました。
「飛鳥は精神科で玲華は外科希望でしょう、それなりに体力はいるわよ」
遥香からも言われてしまったので私達だけ行かない訳には行かないですね!
「でもUVケアはやらないとね!」
静香が言います。そう言えば肌とか白くて綺麗だもんね。
「やっぱり静香も気になるのね」
「玲華もやってた方が良いよ、焼けたら大変だよ」
「私はこれを使っているんだけど、これって良い物なの?」
私は以前美彩先生に買ってもらった物を使っています。美彩先生がこれは間違いないからって言う事だったから最近新しいのも買ったんだけど……
「飛鳥これは良いよ。SPF50にPA++++だから、相変わらず女子力が高いわね」
静香はそう言います。美彩先生おすすめだから間違い無いとは思ってましたけどね!
「静香、それって良い物なの?」
「玲華は知らないの?」
「普通に日焼け止めクリームを塗っとけば良いんでしょう!」
静香も遥香も呆れ顔で……
「紫外線にはA波とB波があってA波は皺やたるみの原因になって、B波はメラニンの活性を引き起こしシミやソバカスの原因になるのよ!」
静香は如何にもというように説明するので玲華は少し怖くなったみたいです。
「それって、ただ塗れば良いの?」
「まあ、UVケアのクリームは塗るだけなんだけどね、飛鳥が持ってるのはUVBを予防するSPFが50もあるから充分かな! 30でも充分だけど数字が多い方が防御時間が長いんだよね、あとUVAを予防するにはPAの+の数が多い方が良いの! 飛鳥これ高かったんじゃない?」
「うーん、そんなに高くはなかったと思うけど…… 私の知り合いの先生がこれくらいのは持ってないと駄目だよって言ってたから」
「飛鳥、それ美彩先生だよね!」
「うん」
「先生、私にはそんなの教えてくれなかったのに…… 飛鳥、それ買いに行くからついて来て!」
どうやら玲華もUVケアに目覚めたみたいですね!
そういう事で前日から私は玲華のマンションに泊めてもらう事にしました。それは何故かと言うと明日のツーリングは自転車部部室前に朝の七時に集合なのです。この事を事前に恵美子ちゃんにもメールで話していたんですけど…… 数時間前に着信があってたみたいです。
『ご苦労様、がんばってね! 日焼けしないように』
だって! 確か向こうは今、土曜日の午前三時くらいかな…… LAとは十六時間の時差があるもんね! でも、玲華が橋本市のマンションに住んでて良かった!
「飛鳥、新しいタオルとバスタオル洗面所の棚に置いとくから使ってね!」
「あっ、ありがとう。ごめんね急に押し掛けちゃって……」
「良いのよ、飛鳥ならいつでも! でも、郁美はどうしたの、一緒に泊まるって言ってなかった?」
「郁美は、やっぱり泊まらないんだって枕が変わると眠れないとかで……」
「郁美って、そんなにデリケートだっけ? それにどっちにしても眠れる時間が少なくなるんじゃないかな」
確かに玲華の言う通りです。大学に七時集合と言う事は六時台前半の電車に乗る訳だから、しかも城南駅まで自転車で十五分くらいだから家を出るのは…… 郁美は相当早起きをしないといけないですね。
「ねえ玲華、夕飯どうするの? 何か作るんなら手伝うけど」
「飛鳥は料理とか作るの?」
「…… うん、作るよ」
「お母さんは作らないの?」
「ううん、お母さんと一緒に作ったりするし、休日のお昼とかは適当に作って食べるしね」
「そうか……」
玲華はなんだか俯いていますけど…… やっぱり玲華はお料理とかする機会ないよね、ここにもお手伝いさんが料理を作りに来るらしいから…… ちょっと羨ましくも思うけど……
「やっぱり、お弁当を買いに行こう、冷蔵庫は何もないよ」
私は冷蔵庫の中を見せてもらいました。ガラーンとしています。ビールとコーラ、お茶はあるけど……
「豚のバラ肉があるね! あとミックス野菜があるじゃない」
うん、ラップに包まれているのは何だろう?
「これ何? ラップに包まれてるのは?」
「あっ、それは玉葱だよ。この間の残りかな……」
「うーん、あっ、卵があるから野菜炒めを作ろうか! ねえ、調味料は?」
「うーん、ほとんど無いと思うよ。そういうのはお手伝いさんが少しずつ持って来てるだけだから」
なるほど、置いといても使わないだろうという事か…… あっ、冷蔵庫の扉のところに焼肉のタレと塩コショウがありました。でも、何故塩コショウが冷蔵庫に?
「よし、焼肉のタレで野菜炒めを作ろう」
「それ、美味しいの?」
玲華はちょっと不安そうですけど……
「大丈夫だよ! バーベキューとかで野菜もタレにつけて食べるでしょう」
「うーん、バーベキューでは野菜は食べないかな……」
えっ、玲華はどんな食生活をしてるんだろう……
「野菜も食べなきゃ駄目だよ」
「いや、バーベキューのときは食べないだけだから」
とにかく、調理を始めましょう。まずは玉葱をスライスします。
「玉葱を切ると涙が出るよね」
いや、切ってる私が出てないのにどうしてそばにいるだけの玲華が涙を流すの?
「それじゃ豚バラ肉を少し貰って……」
バラ肉を一口サイズに切って……
「玲華、卵を二個まぜといて」
「オッケー」
私はまずバラ肉を炒めます。
「油をひかなくて良いの?」
「お肉から油が出るから大丈夫」
バラ肉を炒めたら一度取り出して、野菜を炒めます。そのあと卵を回し入れて炒めます。バラ肉も戻して、一度IHヒーターを止めます。そのあと焼肉のタレで味をつけもう一度IHヒーターのスイッチを入れ軽くかき混ぜれば出来上がりです。
「玲華、出来たよ」
「うわ、美味しそう!」
私達は出来た野菜炒めを突きながら夕食を終えました。そのあとは、二人で後片付けをしたあと私が先にお風呂に入る事に……
「玲華、本当に先に入って良いの?」
「うん、良いの良いの! 私はこのドラマを観たいから、ゆっくりしてね」
玲華はソファーに座りビールを飲みながらテレビを観ています。私達って、まだ十九歳だよね……
「ありがとう」
そういう事で、ゆっくりと湯船に浸かります。はあー、とっても気持ちが良いですね! 三十分くらいしてお風呂を出ると……
「飛鳥、ドライヤーが洗面台の左側の引き出しにあるから使ってね!」
何から何まで至れり尽くせりです。玲華、なにか企んでる? ちょっと怖いんですけど……
翌朝、ちょっと早めに目が覚めた私は朝食を作ります。といってもそんなに食材が無いので目玉焼きと豚バラ肉を塩コショウで炒めたくらいしか出来ませんけどね! すると玲華も良い香りに誘われて起きて来ました。
「おはよう、コーヒーを淹れるね」
お料理は苦手な玲華だけどコーヒーは美味しく淹れるんですよね!
「飛鳥がいると、きちんとした食事が出来るね」
「普段はやってないの?」
「うん、普段はお弁当、朝食はコンビニかな……」
ハハハ、私は苦笑いです。なんとも言えないですね……
朝食も終わり大学へ向かいます。するとほとんどの人達が揃っていました。
「城戸は例の一年生二人を頼むな」
「しようがない、分かった!」
高木先輩がそんな事を…… 例の一年生二人って誰だろう?
「今村さん、如月さんおはよう! 今日は私と一緒に走るからよろしくね!」
「はい、よろしくお手柔らかにお願いします」
例の二人とは私と玲華の事ですね……
「大丈夫よ! 片道二十キロよ、時速十五キロから二十キロで走れば一時間から一時間半で目的地に着くわ! まずは気持ちを楽にしてね」
そう言われましたけど、果たして無事に目的地に到着するでしょうか? ちょっと不安です。
自転車部のツーリング、飛鳥と玲華は完走する事が出来るでしょうか? まあ、レースをする訳じゃないですけどね!