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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
最終章 暗雲漂う……
66/69

66 執刀医

お待たせしました第66話を更新しました!


いよいよ、雫ちゃんの手術が始まります……

(しずく)ちゃんに手術の同意をなんとかもらう事が出来ました。そのためにいくつかの嘘をついて胸が痛いです。でも、その甲斐あって、二日後に雫ちゃんを城南(じょうなん)医療センターへ転院させます。転院に際して医療センターから救急車が来ます。もちろん緊急ではないのでサイレンは無しです。

飛鳥(あすか)先生も来るんですよね!」

 ちょっと不安そうな雫ちゃんです。

「うん、私はあとから自家用車で来るから」

 そういう事で、雫ちゃんは母親と一緒に先に医療センターへ行ってしまいました。その時……

「あの、すみません…… 院長室は何処ですか?」

 髭を蓄えたグレーのスーツに赤っぽいネクタイの紳士ですけど、誰でしょう……

「院長室は受付横のエレベーターで五階に上がってもらって右奥の部屋ですけど」

「ああ、有難う」

 そう言うと髭の紳士は受付の女性に会釈してエレベーターに乗りました。あの人は誰なんだろう…… 受付の女性に訊いてみました。

「飛鳥先生知らないんですか!」

「有名な人なの?」

「北山大学次期教授と言われている天王寺栄(てんのうじさかえ)先生です」

「えっ、次期教授って上野(うえの)教授がいますよね」

「上野教授は今度の教授選には出馬しないみたいですよ! その代わりに若手の候補者もいるそうですからそれで、票を集めに来たんでしょうけど」

「私達は関係ないよね!」

「ええ、北総では鳥越院長だけだと思いますけど」

「へぇー、そうなんだ…… 」

 でも、あの天王寺という人より上野先生の方が教授に相応しいようですけど…… まあ、私には無縁の話ですね!

 その後、私はとっぽちゃんに乗って城南医療センターにやって来ました。着いたら外科の医局へ来るように言われたんだけど、医局は何処でしたっけ…… 受付で訊いてみましょう。

「あの、外科の医局を教えて下さい」

「はあ…… あの、どちら様でしょうか?」

 受付の女性にそう訊かれてしまいました。私、怪しかったでしょうか……

「あっ、北山(きたやま)総合病院の今村飛鳥(いまむらあすか)です」

「少々お待ちください」

 受付の女性は連絡をしてるようですけど……

「お待たせしました、エレベーターで二階へ行かれて左側です」

 そう言われて二階へ行くと……

「飛鳥、こっちよ!」

 えっ、誰?

「飛鳥、遅いよ!」

玲華(れいか)!」

「揃ったみたいね」

 山脇(やまわき)先生もいらっしゃいました。

「それじゃ、カンファレンスをしますのでこちらへ」

 私は医局の隣のカンファレンス室に通されました。

「今日MRIも撮ったんだけど…… やっぱり全摘しないといけないわね」

 MRI検査をすぐにやったんだ、早い、流石です。そう思いながら画像を確認しますが、猿渡(さるわたり)先生の言う通り癌は小さい物の結構根深いようです。これを見て山脇先生も全摘と判断されたようです。

「術式は腹腔鏡手術ですか?」

「ううん、出血を伴うかも知れないから開腹手術にします」

 そうなんだ……

「あっ、飛鳥先生、そちらは麻酔科の細川(ほそかわ)先生です」

「よろしく!」

「あっ、はい、今村です」

「それと玲華先生に第二助手をお願いしたから」

「はい」

「それじゃ、飛鳥が第一助手な訳ね」

 玲華が私の方を見ながらそう言います。

「玲華、違うのよ! 執刀医は飛鳥先生だから」

「えっ、私が執刀医!!」

「大丈夫! 飛鳥先生なら出来るわ、何度も経験してるんでしょう」

「まあ、はい……」

 玲華はまたもや私の事をジッと見てます。

「飛鳥には相当差をつけられてるようね」

 玲華、ちょっと怖いんですけど……

「大丈夫よ、私が第一助手をするから問題ないわ! よろしくね」

 なんとも、まさか、本当に執刀させてもらえるとは…… でもこれで雫ちゃんや梨子ちゃんにも嘘をつかなくて済みそうです。

「あの、卵巣は温存するんですよね」

「うん、一応そのつもりだけど、卵巣も癌化してる場合は摘出します」

「はい」

 まあ、大丈夫だとは思いますけど、開いてみないと解りませんよね。

「それにしても、何故玲華がここにいるの?」

「あっ、そうか、飛鳥には言ってなかったね! 私、研修が終わった後に医療センターに移ったの」

「あっ、そうなんだ……」

「うん、山脇先生の助手をする事でスキルアップ出来そうだから」

「そうなんだ、それで梨菜(りな)は?」

「あっ、それがね、美咲(みさき)達の結婚式が終わった後、東京の病院に行ったんだって」

「東京!」

「うん、突然だったらしいけど……」

 そうなんだ…… 何かあったのかな。

「飛鳥先生、それじゃ明後日の手術よろしくね! 九時からだから」

「あっ、はい、それと山脇先生、ちょっとお願いしたい事があるんですけど……」

 私は手術の事でもう一つ山脇先生にお願いをしました。

「ええ、解ったわ」

「お願いします」

 そういう事で、私はカンファレンス室を出て雫ちゃんの元へ行きました。

「雫ちゃん、調子はどう?」

「飛鳥先生、もう退屈でしょうがないですよ。トイレ以外は部屋に缶詰ですから……」

 こんなに元気とは、本当に癌なのかな……

「先生、私はいつ北総へ戻れるんですか」

「まだ、手術もしてないのに、それに術後経過を診てからだよ」

 私はそう言いますけど……

「あーっ、退屈」

「看護師がそういう事言わなーい!」

「あっ、飛鳥先生、わざわざすみません」

 雫ちゃんのお母さんです。

「手術を明後日の九時からしますので」

 私がそういうと……

「先生が執刀されると訊いてます。よろしくお願いします」

「はい」

 そうやって家族の方からお願いされると身が引き締まる思いです。

 私は七時過ぎまで雫ちゃんのそばにいて、その後病院のアパートへ戻りました。明日は北総で通常業務ですから…… でも、手術前夜は城南中央の実家に戻ります。当日は真っ直ぐ医療センターへ直行出来るようにです。


 手術当日、私は七時過ぎに医療センターに着きました。手術前に雫ちゃんに逢うためです。

「雫ちゃん、気分はどう?」

「はい、大丈夫ですけど…… お腹が空きました」

 雫ちゃんは本当に癌なんでしょうか……

「手術前だから絶食して下さーい」

「はあー、患者さんてこんなに辛いんですね」

 雫ちゃんも患者になって何かを学んだようですね!

「南条さん、手術室に行きますよ」

 看護師さんが迎えに来ました。

「手術は九時からですよね」

「はい、そうですけど色々準備がありますから」

 まあ、麻酔とかしないといけませんからね。

「飛鳥先生も手術室にお願いします。山脇先生がお待ちですよ」

 えっ、もう準備してるの?

「雫ちゃん、また後でね!」

 そう言って私は急いで手術室へ行きました。

「飛鳥、何やってたの? 早く準備しないと間に合わないよ」

 私は早々に、玲華から怒られてしまいました。

「飛鳥先生」

 今度は山脇先生です。

「はい……」

「頼まれていた抗癌剤だけど三種類で良いのよね」

「はい」

「うん、準備は出来てるから飛鳥先生も手洗いをお願いします」

「はい」

 私は念入りに手洗いをしました。その後、頭の中でイメージトレーニングをしていると……

「それじゃ、行きますよ!」

山脇先生を先頭に手術室の中へ入りました。雫ちゃんは既に全身麻酔で眠っています。

「さあ、飛鳥先生始めましょう」

「はい、では単純子宮全摘出術を行います。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「メス!」


 手術が始まってどれくらいになるのかな…… 取り敢えず子宮を摘出出来るように組織から切り離しました。

「やっぱりちょっと出血してるわね」

 山脇先生の心配が的中しましたけど……

「これくらいならモノポーラで止血出来ますよね」

「そうね、玲華出来る?」

 いや、いくらなんでも出来るでしょう……

「はい、やります!」

「それじゃ、私は飛鳥先生と子宮の摘出をするから止血をお願いね」

「はい」

 その後、摘出したあとのところを生理食塩水で洗い吸引しました。

「うん、膀胱や直腸、卵巣や卵管も癌化してないわ、綺麗な物ね」

 はあ、良かった!

「飛鳥、それじゃあとは縫合して終わりだね」

 まあ、玲華の言う通り普通はこれで終わりですけど……

「玲華、悪いけど、あと四十分くらい付き合ってもらうから」

「えっ、他に何をするの?」

 その時、看護師さんが抗癌剤を持って来ました。

「これ、どうするの?」

 私は抗癌剤をさっきまで子宮があった場所に注入します。周りの臓器が抗癌剤で浸かったような感じです。

「飛鳥、こんな事して大丈夫なの?」

「うん、腹膜播種防止のためなの」

「腹膜播種?」

「普通は胃癌のステージ3くらいの人が腹膜播種によって転移するのを予防するためにやるんだけど」

「いや、普通は生食水で洗うくらいじゃないの」

「うん、でも、これをする事で五年生存率が九十五パーセント以上なんだよ」

「これって生理食塩水と混ぜてるの?」

「うん、三種類の抗癌剤と生食水を混ぜて四十三度くらいまで温めてるの」

「まあ、その方が抗癌剤の効果が得られるってことね、私も聞いた事があるわ」

「飛鳥は何処で習ったのよ」

「そうじゃなくてネットで調べていたらヒットしたのよ」

「へえ、そうなんだ」

「まあ、折角だから吸引した抗癌剤も病理に回してね」

 山脇先生は結構冷静ですね。およそ三十分後、抗癌剤を吸引しました。あとは縫合するだけですけど……

「飛鳥先生、あとは縫合するだけだから私達がやるわ、あなたは患者さんのご家族に早く報告を!」

「あっ、はい、その前に、バイタルチェックを!」

「今村先生、異常ありません。麻酔科医としては暇な手術でした」

 細川先生にもそう言われました。

「あっ、はい、それじゃお疲れ様でした」

「お疲れ様」

 私は手術用の手袋とエプロンを脱いで手術室の前にいる雫ちゃんの両親のところへ行きました。

「あっ、飛鳥先生!」

 そう声を掛けられたのは雫ちゃんのお母さんです。

「手術は成功です。今からICUに移動しますので入口のところでお待ち下さい。説明はその時行います」

「先生、有難うございました」

 何とか手術を終わらせる事が出来ました。これで雫ちゃんも大丈夫でしょう。


手術を終える事が出来ました。腫瘍も小さかったし、他の組織も癌化してなかったので大丈夫でしょう。

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