60 城戸先輩の気持ち、二階堂君の気持ち
お待たせしました第60話を更新しました!
飛鳥は二階堂君への気持ちを玲華達に話したけど関心の二階堂君には話さないでいます。そんな時北山ハイランドスキー場で緊急要請です。三人の要救助者のうち二人は救護室へ搬送されたけど残りの一人が心肺停止状態でまだ現場に残されています。果たして助ける事が出来るでしょうか?
私と城戸先輩は城南市広域消防局の救急要請により北山ハイランドに来ています。先に救助された傷病者二名を手当をしている時、もう一人傷病者がいる事を私達は知りました。しかし、救急車は二台です。一台を北総へ搬送に使って折り返した場合一時間。もう一台要請する場合、城南中央からの出動になるので更に時間が掛かりそうです。そんな時、救助に行っていたスノーモービルのスタッフから応援要請がありました。
「もう一人、傷病者を崖から引き上げてる途中なんですが心肺停止しています」
うーん、もう絶体絶命です。折り返しの救急車を待ってられなくなりました。
「AEDを持って一緒に来てください!」
しかし、心肺停止で今から間に合うのでしょうか……
「先輩、私が行って来ます!」
「うん…… 解った」
私はスノーモービルの後に乗せてもらいゲレンデを登って行きます。なんだか、二階堂君のバイクに乗せてもらっているような…… って、今はそんな事を考えてる場合じゃなかったですね。
現場に到着した時、要救助者はレスキューの隊員さんに心臓マッサージを受けていました。
「医師の今村です。心肺停止時間はどれくらいですか?」
私がそう訊いたとき、隊員のみなさんは黙って私を見ています。
「それが発見した時はすでに心肺停止状態でした。発見からもうすぐ十五分経ちます」
「それじゃ、心肺停止して二十分以上ひょっとしたら三十分以上経過している……」
「はい……」
レスキューの数人の隊員さん達ももう駄目かも知れないと思っているかもです。
「とにかくAEDの準備をします」
私はレスキュー隊の方が心臓マッサージをしている横でAEDのパットを右肩と左脇腹に付け準備しました。
「離れて下さい、ショックを与えます」
『バン!』
ショックを与えましたが心停止したままです。この間の悪さはなんとも言えない感じです。
「もう一度ショックを与えます離れて下さい」
『バン!』
うん、手応えがあったみたいです。まだ、弱いけど……
「よし、行けるぞ!」
隊員の一人が無線で救護室に連絡しています。
「心肺再開しました。今から救護室へ運びます」
「了解! もうすぐドクターヘリが来ますので急いでください」
えっ、ドクターヘリ? 先輩いつの間に…… 私達は急いで救護室へ戻りますが、なかなかスピードは出せません。スノーモービルでゆっくり引っ張って後から傷病者を乗せたそりを二人のスタッフがスキーで滑りながらロープで引っ張り進んで行きますけどなんとももどかしいです。やっと到着しました。
「先輩、ドクターヘリが来るんですか?」
「ええ、それで救急車で第二駐車場まで移動するから」
えっと、いきなり過ぎてよく解りませんが…… どうやら私がスノーモービルで現場へ行った後、城南市広域消防局へ緊急要請をしたみたいです。それでドクターヘリを向かわせるという事だったようですが、北山ハイランドの第一駐車場は他のスキーヤーの車でいっぱいなので第二駐車場にヘリを下ろすようです。
「それじゃ救急車へ」
まず、心肺再開した重傷者を第二駐車場まで運んだ後、骨折した傷病者を北総へ搬送するみたいです。という事は、一台目の救急車はすでに北総へ向かっているんですね!
『バラバラバラ……』
ヘリが来たようです。風が凄いです! ドクターヘリを目の前で見たのは初めてでしたけど…… 結構大きいんですね。
「フライトドクターの藤川です。城南医療センターへ搬送します」
「北総の今村です。傷病者は発見時に心肺停止していました。AEDで心肺再開してますけど、それまでに二十分くらい掛かっています」
「という事は心肺停止時間が三十分を超えている可能性がある訳ですね……」
「はい」
今、他のフライトドクターによってラインを確保された傷病者はヘリに収容されています。
「藤川さん大変です! ショックを起こしています」
ここまで来てショック状態でガタガタと痙攣を起こしているようです大丈夫なのでしょうか……
「柴田、アドレナリンを投与!」
「はい」
傷病者がショック状態でガタガタ震えているなかアドレナリンを投与され、なんとか落ち着いたみたいです。
「あの、あの女性もフライトドクターですか?」
「あっ、いや、柴田はフライトナースです」
私は、初めてフライトドクターやフライトナースを見ましたけど、カッコ良いですね!
その後、ドクターヘリは城南医療センターを目指して飛び立って行きました。
「飛鳥、もう一人いるから救護室に戻るよ」
先輩にそう言われ救護室に戻ったときでした。
「だからスノボードは禁止だと言ったんだ!」
スーツ姿の男性が怒鳴っていますけど……
「まだ、傷病者がいますので」
「良いじゃないか! 彼らがコース以外の場所で滑っていたのが原因なんだぞ!」
何も今言わなくても……
「飛鳥、搬送するよ!」
私達は、ストレッチャーに乗せた傷病者を救急隊の人達と一緒に救急車に乗せました。
「あの、すみません…… 僕達の身勝手な行動の所為で……」
事が大きくなって責任を感じていますね。
「そうやって反省する事が大事ですよ」
先輩はそう言って救急車を降りました。
「では、お願いします」
そう言って私と先輩は救急車を見送りました。
「先生、ありがとうございました」
スキー場のスタッフの方にお礼を言われましたけど……
「あの、さっき怒鳴っていた男性は?」
「あっ、ここの役員さんです。以前からボーダーのマナーが悪かったのでボーダーは禁止にしようと言われていたんです」
「そうでしたか……」
今回の事でスキー場のスタッフさん達は頭が痛いようです。
「では、私達はこれで失礼します」
先輩と私は病院の車で北総へ戻ります。もちろん運転は先輩がしています。私は雪道の運転はまだ怖いので……
「飛鳥!」
「はい」
運転しながら先輩が話し掛けて来ました。深刻な顔をしてますけど……
「私、四月から出羽診療所に行くから」
なんだ、また応援ですか?
「今度は、どれくらい行くんですか?」
「うーん、三年くらいかな……」
「えええーっ! どういう事ですか?」
先輩は平然と私の顔を見て……
「だって、私は診療所勤務を希望していたから」
「診療所希望って、変わってますよね!」
「飛鳥に言われたくないわ! それに、普通に病院勤務をするのなら東京に戻ってるわよ」
まあ、確かにそうですよね……
「先輩、結婚はどうするんですか?」
「するわよ! 予定通り四月に式を挙げて、旅行して、それから出羽診療所に行くの!」
「桐生先生は?」
「先生は橋本大学だよ!」
「一緒に住まないんですか?」
「週に二日くらいは一緒に過ごせるかな!」
えっと、新婚早々単身赴任ですか……
「一緒じゃなくて淋しくないですか」
「そりゃね…… だからって先生に大学辞めてもらう訳にはいかないでしょう」
そりゃそうですよ、そこは先輩が考えないと…… でも、言えない……
そんな話をしながら北総へ戻って来ました。
「お疲れ様です!」
私は先輩と一緒に外科の医局に戻って来ました。
「あっ、二人ともお疲れ様! 飛鳥先生いきなりで悪かったね」
「あっ、いえ……」
山田部長からそう言われました。でも、二階堂君とかは何やってたんだろう?
「あっ、飛鳥先生だ!」
そう言って私に抱きついてくるのは勿論、看護師の南条雫ちゃんです。
「飛鳥、とうと懐かれたね!」
懐くって犬猫じゃあるまいし……
「飛鳥先生どこに行ってたんですか?」
「えっ、何処にって北山ハイランドに城戸先輩と行ってたんだけど……」
「そうじゃないですよ! 年始の休みが終わってからずっといなかったじゃないですか」
「あっ、山岡大学病院に研修に行ってたから」
「私に黙ってですか!」
雫ちゃんは頬をプウっと膨らませ私を見ています。うっ、可愛い…… 思わず口に出してしまうところでした。あぶない……
「あっ、お土産があるから仕事が終わったらアパートに来てね!」
「本当ですか、やった!」
でも、雫ちゃんは私に抱きついたままです。困ったなぁ……
「あっ、雫いた!」
「あっ、コジリコちゃん!」
「もう、すぐいなくなるんだから」
「お疲れ様、梨子ちゃん」
「あっ、飛鳥先生」
梨子ちゃんは私から雫ちゃんを引き剥がしながら……
「飛鳥先生は研修だったんですか?」
「うん、山岡大学病院にね」
「梨子ちゃん、お土産があるんだって!」
「いいから離れなさい! 仕事に戻るよ!」
そうして雫ちゃんは名残惜しそうに梨子ちゃんに引っ張られて行ってしまいました。
「今村、お疲れ!」
「二階堂君!」
今度は二階堂君が医局に戻って来ました。
「今日は朝から大変だったな!」
「二階堂君は何処にいたの?」
「あっ、俺はヘルニアの手術があったから術後の説明やらで今からお昼なんだ」
あっ、そう言えば私もまだだった……
「私も今からお昼だから一緒にどう?」
「ああ、先に行っててくれ!」
そういう事で私は一度精神科の医局に戻ってから病院の食堂へ行きました。食券を買って中に入ると……
「今村、こっちだ!」
二階堂君が早かったようです。
「お待たせ」
二階堂君はラーメンとチャーハンを食べています。炭水化物をおかずに炭水化物を食べてますね……
「飛鳥先生お待たせしました!」
私は注文したオムライスを取りに行きました。
「今村はそれで足りるのか?」
「うん、充分だよ」
そう言って私はオムライスをひと口食べた時でした。
「今村、俺さ……」
「うん、どうかしたの?」
「うん、後期研修が終わったら国際医療に行くから」
えっ、国際医療?
「それってなに?」
「ああ、有名な団代としては国境なき医師団とかかな」
「えっ、そこに行くの?」
「あっ、いや、俺が行くのはアースメディカルと言って発展途上国に病院があるんだけど、そこに行って医療活動をするんだ」
「そっか、二階堂君は後期研修が終わればそうなるよね」
何だか、解っていた事なんだけど、いざそういう話を聞くと淋しくなります。
「本当は今村も一緒にと思ってはいたんだけど、難しいからな」
私は地域医療枠でここに研修に来てますからね、あと八年はいないといけませんからね……
「今村、五年経ったら迎えに来るから待っていてほしい」
私はその言葉を聞いて二階堂君の気持ちはとっても嬉しいと思いましたけど……
「ごめん! もう、やめよう二階堂君」
「えっ、どういう事だよ?」
「二階堂君はやっぱり普通の女の子がいいよ!」
「あっ、いや、だからその事は前にも言ったじゃないか!」
「二階堂君、そうじゃなくて、私が無理なの! もう、限界なの…… 解って……」
「今村…… それで良いのか?」
「…… うん、だから幸せになってね」
二階堂君はちょっと複雑なのかも知れないけど…… これで良いんだと私は思いました。
本日も終わりました。でも、今年の四月には城戸先輩が、来年四月には二階堂君がいなくなります。何だか淋しくなります。でも、みんなが頑張っているから、私も…… 瞳を閉じれば二階堂君がまぶたの裏にいる事で、どれほど勇気がもらえるでしょう二階堂君にとって私もそう思われたい。
「うわーっ!」
私は大きな声で叫んでしまいました。
『ガッチャ』
「飛鳥先生どうしたんですか!」
びっくりした表情の梨子ちゃんと雫ちゃんですけど、私もびっくりしました。
「どうしたの? 二人とも」
「だって、飛鳥先生が大声を出すから……」
あちゃー、まさかすぐそこにいたとはね…… 何だか恥ずかしいです…… けど、とてもスッキリしました。たまには大声を出すのも良いもんですね!
自分の思いを二階堂君に打ち明けた飛鳥は、やっと話す事が出来て気持ちが楽になったようですが…… 飛鳥はこれからどうするんでしょう……




