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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第七章 インターン
59/69

59 飛鳥の告白と緊急事態

お待たせしました第59話を更新しました!


研修が終わり戻って来た飛鳥は久しぶりに玲華達と再会して楽しそうです。

 私は城南市(じょうなんし)にお昼過ぎに戻って来ました。昨日の夜、玲華(れいか)にメールを入れていましたのでたぶん駅に迎えに来てると思いますけど……

「あっ、飛鳥(あすか)! こっち」

 あっ、いましたね!

「玲華、久しぶり」

「久しぶりはいいけど、このメールは何なの?」

 えっ、メール! 私は玲華のスマホを見てびっくりです。

「まあ、明日のお昼過ぎに帰るからって事なんだろうけど、続きは何だったの?」

『玲華、明日のお昼過ぎに帰るかはなまらかさた……』

「何、これ!」

「何って、飛鳥がメールして来たんでしょう」

 あれ、なんでこんな事に…… そう言えば、昨日ホテルに戻ったとき、かなり頭が痛かったよね…… まさかとは思うけど、あのコークハイ一杯で酔ってたって事? それでメールをした後の…… 記憶が無いです。

「玲華、ごめん! どうやら酒に酔って記憶が飛んでたみたい」

「えーっ! 飛鳥がお酒を飲んだの?」

 玲華は目を見開いて驚いた顔で言います。

「玲華!」

 あっ、久美(くみ)梨菜(りな)が手を振ってこっちに来ました。玲華が呼んでくれてたようですけど、瑞稀(みずき)は今日は来ないみたいですね。

「飛鳥お帰り!」

「梨菜ただいま」

「研修どうだったの?」

「そんな事より大変だよ梨菜、飛鳥がお酒を飲んだんだって!」

 玲華、話に割り込まないでよ! それに、そんなに大袈裟な事じゃないから……

「飛鳥がお酒を飲んだの?」

 梨菜も久美も驚いています。

「あのね、そんな大した事じゃ無いんだよ! お酒って言ってもコークハイを一杯だけ飲んだだけだから……」

 またもや玲華は驚いています。

「コークハイ一杯で、なんで記憶が飛ぶのよ!」

「記憶がなかったの?」

「…… うん」

 恥ずかしながら私はそう返事をするしかありませんでした。

「ほら、このメールを見て!」

 玲華は例のメールを見せています。

「飛鳥はメールを打っている途中で意識が飛んだみたいなのよ」

「コークハイ一杯でね……」

「でも、それって睡魔に襲われただけかもよ」

 久美はそう言ってますけど、玲華と梨菜は呆れ顔ですね……

「それで、研修はどうだったの?」

 ようやくその話に戻ったようです。

「うん、まあ、お茶でもしながら話すから」

 そう言って私達は駅前の喫茶店へ入りました。

「何にしようか」

「何にしようかって玲華はコーヒーでしょう! まさかパフェとか頼まないよね……」

「まあ、それは無いわね」

 そう言いながらも、玲華はパフェのメニューを見てたよね……

「あっ、私はパンケーキとコーヒーにしよう」

「えっ、パンケーキって大丈夫? 梨菜、太るよ」

「大丈夫だよ、まだお昼食べてないから」

 梨菜のその一言で、私は玲華と久美にも聞きます。

「ひょっとしてみんなもお昼食べてないの?」

「私は食べたわよ!」

 玲華は食べてるみたいだけど、久美も頷いているので食べてるみたいです。

「飛鳥は食べて無いの?」

「ううん、私は駅弁を食べたから」

 そういう事で梨菜以外はコーヒーを頼みました。

「それでどんな研修をしたの?」

 玲華が訊きます。

「うん、ほとんどが手術だよ」

「手術ってどんな?」

 今度は梨菜です。

「えっと、FTMさんの手術で乳房切除とか子宮の卵巣摘出とか……」

「えっと、それじゃ婦人科や泌尿器科での手術?」

「うん、それと乳癌とか子宮頸癌の手術もやって来た」

「そうか、飛鳥の研修はほとんどが手術だったんだ」

 梨菜の一言が気に食わなかったのか玲華は……

「また、飛鳥に差をつけられたかな」

「そんな事ないでしょう! 玲華も梨菜も研修で手術はするでしょう」

 玲華も梨菜も街の大きい病院なんだからない訳ないよね……

「まあ、手術はあるけどそんなに頻繁には無いわよ」

「でも、玲華は外科なんでしょう」

「まあ、そうだけど、他にも外科医はいるからね」

 まあ、玲華一人でやってる訳じゃないよね。

「私は婦人科で研修してるんだけど…… 手術は帝王切開(カイザー)の時に助手で入っただけかな」

「梨菜は産婦人科医になるの?」

「いや、産科はちょっと無理かな…… でも、赤ちゃんは可愛いよね! まあ今は、婦人科の山脇(やまわき)先生に色々教えてもらっているから、やっぱり婦人科かな」

「山脇先生って外科の先生じゃないの?」

「ううん、専門は婦人科みたい」

 そう言えば、血液センターで逢ったときもそんな事を話したような……

「梨菜のオーベンは山脇先生なんだね」

「うん」

「ねえ、山脇先生って凄く綺麗だよね!」

「フフフ、やっぱり飛鳥は食いついて来たね!」

 玲華も梨菜も不気味に笑っています。

「山脇先生も飛鳥に負けず劣らずのお洒落さんだもんね」

 うん、確かに最初に血液センターで逢ったときはファッション雑誌のモデルさんかと思ったもんね……

「ねえ飛鳥! 瑞稀から聞いたんだけど、えっと、その…… 二階堂(にかいどう)君と別れるつもりなの?」

 私の顔が急に曇りました。

「えっ、飛鳥別れるの?」

 梨菜が驚いたように言います。

「うん…… このままじゃ二階堂君が可哀想だし、それにもし私が手術をして結婚しても二階堂君の子供を産む事も出来ないから……」

 私は俯きながらそう言いました。

「二階堂君は知ってるの?」

「ううん、まだ話してないけど…… 私、もう辛くて限界なの!」

 私がそう言い切った時、梨菜が優しく話しかけます。

「飛鳥はそれで良いの…… 二階堂君の事、好きなんでしょう?」

「うん、好きだよ! だから、好きだからちゃんと幸せになってほしいの…… 私じゃ無理だから……」

「飛鳥…… 辛かったね、ずっとひとりで考えてたんだね」

 隣に座っていた梨菜が、そっと私を包むように抱きしめてくれました。何だか私の研修発表会の場が一転して破局会見になったようです。でも、ちゃんとみんなに話せて良かった。あとは二階堂君にちゃんと話さないとね……


 翌日、私は北総(きたそう)の精神科に戻って来ました。

「あっ、今村(いまむら)先生」

「おはようございます河合(かわい)部長」

「あっ、おはよう! 早速で悪いんだけど北山(きたやま)ハイランドに城戸(きど)先生と行って欲しいんだけど」

「北山ハイランドですか?」

 北山ハイランドは北山町より更に山の方へ行った所にあるスキー場です。

「何かあったんですか?」

「うん、早朝にボーダーがコース外の場所を滑って行方不明なんだ」

「えっと、私達はどうすれば……」

「城戸先生と君は救出された患者さんの対応を現場でして欲しいんだ。その後、救急車に乗せてもらえばいいから」

「はい」

 そう返事をして外科へ行くと……

「飛鳥、これを持って! 行くよ」

 私は先輩からメディカルバッグを受け取りました。ちょっと重いんですけど……

「あっ、はい」

 私は城戸先輩の運転で北山ハイランドへ向かいますけど……

「先輩、雪道とか大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ! 病院の車は4WDでスタッドレスタイヤを履いているから」

 それにしてもスキー場へ行く道って結構積雪があるんですね。人工スキー場って聞いてたんですけど……

「先輩、救急車は来ないんですか?」

「来るわよ! でも山の中だから時間が掛かるの。だから私達が呼ばれたのよ」

「呼ばれたって誰からですか?」

「城南市広域消防局からよ」

 要するに救急車が到着するまでに医師による治療をという事ですね。

「でも、傷病者は行方不明なんですよね……」

「うん、でも上級者コースとかを重点的に捜索してるみたいよ」

 私達が北山ハイランドに到着した時は、救急車はまだ来ていません。レスキュー隊が、今から捜索するみたいです。

「あっ、北総の先生ですね! こちらで待機してください」

 スキー場のスタッフさんに中へ案内されコーヒーを頂きました。

『ツ、ツーッ、こちら捜索A班です。林間コースの途中から崖の方へ降りた跡があります。スノーモービルをお願いします』

『ツーツッ、了解!」

「発見されたんですか!」

「いえ、崖から降りた形跡があったようです」

 何故、コースじゃないところを滑るのかな…… 私は何だか気が気じゃないです。

「飛鳥、落ち着いて!」

『発見しました! 二人です。頭から出血しています』

『今からスノーモービルで引き上げます』

 なんだか無線の声が慌ただしくなって来ました。大丈夫かな……

『今からスノーモービルで救護室に戻ります』

 どうやら二人の傷病者が来るみたいです。

「飛鳥、準備して! 取り敢えず止血テープと添え木を」

「はい」

 たぶん骨折はしてるでしょうね!

「傷病者入ります」

「飛鳥、ストレッチャー」

 二人とも足を骨折してるみたいですけど、一人は頭から出血しています。

「大丈夫ですか!」

「まず止血して!」

 私は止血テープを使いましたが、傷が深いようです。

「飛鳥、縫合するから麻酔して」

 私が麻酔をした後、救急車が到着しました。

「お待たせしました」

 ストレッチャーを持った隊員が来ました。

「救急車は何台来ますか」

「現着したのは一台で、もう一台こちらへ向かってます」

「それじゃ一人づつ乗れますね」

 その時、一人の傷病者が……

「あの、もう一人いるんです」

「えっ、もう一人?」

 二人の傷病者を助けた時もう一人いるという事でレスキュー隊がロープを使って崖を降りたみたいです。

「北総まで搬送してどれくらいで戻れる?」

 城戸先輩が救急隊に訊いてますけど……

「一時間は掛かります」

「もう一台要請したら?」

「私達が北部(ほくぶ)出張所で、もう一台が南部(なんぶ)出張所から来てる途中なので、もう一台となると城南中央(じょうなんちゅうおう)からになりますので……」

 先輩も難しい顔をしています。

「仕方ないわね、この患者を先に搬送しましょう。終わったら直ぐに戻って来て」

「はい」

 先ずは出血の酷い患者さんを縫合した後搬送します。もう一台は、たぶん骨折している患者さんです。

 もう一台の救急車も到着したみたいですけど……

「先生、お願いします! AEDを持って一緒に来て下さい」

 スノーモービルのスタッフが慌てて戻って来ました。

「どうしたんですか?」

「もう一人の傷病者を崖から引き上げてる途中ですけど心肺停止しています。引き上げてAEDを使いたいんですけど……」

 これで折り返しの救急車を待ってられなくなりました。どうしましょうか……


二階堂君の事をみんなに話した飛鳥は少しだけ吹っ切れたようですが、二階堂君にはまだ、話せてませんね! そんな時の救急要請で一人が心肺停止状態! どうしましょう……


来週までに考えます。

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