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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第七章 インターン
58/69

58 特別研修

お待たせしました第58話を更新しました!


山岡大学病院で研修中の飛鳥ですが、今までやった事の無い手術を経験しているみたいです。

 私が山岡大学(やまおかだいがく)病院に研修に来て一週間が過ぎました。今日も朝から手術をします。それが終われば私の治療です。

 まずは、手術ですが子宮卵巣の摘出手術です。猿渡(さるわたり)先生が執刀します。私は第一助手をします。FTMさんの手術となると、まず摘出手術を婦人科の先生が主になって行います。その後、形成の手術を城島(きじま)先生が主になって行います。結構大変そうです。手術は腹腔鏡下で行われました。

「猿渡先生、摘出は卵巣だけなんですね」

「要するに女性ホルモンが分泌しなければいい訳だから」

 なるほど必要ないところはそのままな訳ですね。

「あとは形成外科の方で手術があるんだけど、ねえ城島先生!」

「はい、今日は尿道延長くらいですけどね」

「まあ、男性化するんですよね」

「そう、でも子宮頸癌とかはなるべく卵巣を残す方向で手術するけどね」

「でも、卵巣癌の可能性とかは……」

「まあ、そのときは切るわよ! あと、年齢にもよるけどね」

 などと話をしながら手術をしていました。その後二時間ほどで手術が終わりました。私は昼食の後、治療をしてもらうため馬場(ばば)先生の元へ行きます。まあ、簡単な問診を受けた後、エストロゲンの注射をするだけですけどね。

今村(いまむら)先生、注射は猿渡先生のところでお願いします」

 という事は婦人科の方でという事ですか、やっぱりここじゃないんですね……

「はい、解りました」

 その後、私は再び婦人科の方に来ましたけど……

「あら、飛鳥(あすか)先生どうしたんですか?」

「あっ、猿渡先生エストロゲンの注射を打ちに来たんですけど」

「えっ、それも研修なの?」

「えっ……」

「ん……」

 猿渡先生は、私が患者さんに注射を打ちに来たと思っていたみたいで、勘違いされてたようです。

「飛鳥先生がMTFだったとはね……」

 猿渡先生の私を見る目が変わったような気がしますけど……

「なにか可笑しいですか?」

「ううん、どこから見ても可愛い女の子だから信じられなかっただけよ!」

 などと話をしながら治療を受けますけど、私って可愛いかな……

「はい、終わったよ」

「えっ、いつ針を刺したんですか? 全然痛くなかったんですけど」

「本当に…… そんなに褒めても何も出ないわよ」

 いえ、そんなつもりはないんですけどね……

「それにしても馬場先生は知ってるの?」

「はい、最初はここで手術をするつもりでしたから」

「知らないのは私達だけなのね…… それで手術はするの?」

「うーん、ちょっと迷ってます」

「それならやめときなさい!」

「えっ、何故ですか?」

「迷っているならどっちにしても後悔するんだからやめときなさい。それになるべくメスを入れない方が良いでしょう!」

 まあ、そうですよね…… 元々そのつもりだった訳だし、それに二階堂君とも……

「手術後に後悔する人っているんですか」

「迷っている人は手術をしてもしなくても後悔するのよ、自分の意思で手術をする人は良かったと思うんだろうけどね」

 まあそうですよね、ようやく自認する性になれた訳ですから、でも私は……


 それから研修も進み、私は常に第一助手で手術を経験させて頂きました。

「今村先生、執刀をしてみませんか?」

 馬場先生からそう話がありました。

「飛鳥先生ならたぶん大丈夫じゃないかしら」

 猿渡先生もそう言いますけど……

「あの、出来れば乳癌や子宮頸癌の手術もやってみたいんですけど」

「まあ、今までの手術の応用だから良いと思うけど、馬場先生どうなの?」

「別に構いませんよ、案西先生(あんざいせんせい)からもなるべく希望に沿ってもらえればということだから」

 案西先生は私がそう言う事を見越していたんでしょうか?

「それじゃ明後日に一件、子宮頸癌の手術があるからやりましょうか」

「えっと、第一助手で良いんですよね」

「執刀医としてでも良いわよ」

「いえ、FTMさんの手術と子宮頸癌の手術では、また違うでしょうから」

「そうね、手術時間もだけど、まず出血量が違うわね、それに今度手術をする患者さんは一度円錐切除術をした患者さんなんだけど病理の結果、癌が進行している事が判った患者さんなの」

 円錐切除術は通常ステージ0期から1a期の初期癌の患者さんに行われます。この術式は子宮を温存する事ができますからね、でもどうやら今回の患者はステージ1b期以降の患者さんだったようです。


 手術の日、私は猿渡先生と一緒に手洗いをしています。

「あの猿渡先生、今日の患者さんはステージ1b期の癌なんですか?」

「円錐切除術をするときは検査の結果ステージ1a期だったんだけど病理の結果ではステージ2期くらいだったの」

 なかなか、検査の結果と実際開いてみてからでは違うのかも知れません。

 手術が始まりました。全身麻酔をした後、開腹手術で行います。昨日のカンファの話では、かなりの出血があるかも知れないという事でしたけど……

「飛鳥先生、そこを押さえていて」

 猿渡先生から指示があったその時でした。

「出血!」

 私は無意識のうちに出血場所を手で押さえましたが、なかなか出血は止まりません。

吸引(サクション)!」

『ジュジュジュ……』

 やっと、なんとか抑える事が出来ました。

「飛鳥先生やるわね」

「サテンスキー下さい」

 私は無我夢中でやっているので、もう余裕がありません。

「猿渡先生、止血をお願いします」

 私がそう言ったとき先生の手にはバイポーラが握られていました。出血箇所をバイポーラで焼いた時、白い煙がフワッと上がりました。その瞬間、上手く止血出来たみたいです。その後、出血が多かったので輸血をしながら摘出をしますけど、やっぱり出血が多いです。ようやく子宮を摘出出来ました。手術開始から六時間くらいで手術はようやく終わりました。

「飛鳥先生お疲れ様」

「あっ、お疲れ様でした」

「先生のお陰で予定より出血が少なくて良かったわ」

 猿渡先生からそう言われましたけど……

「あっ、私は無我夢中で全然余裕が無くて……」

 もう、本当にいつの間にか終わっていた感じです。

「まあそうやって、みんな成長していくのよ! とくに外科手術はね」

 そう言って猿渡先生は手術室を出て行きました。なんだかカッコ良いです。


 いよいよ、研修も終盤です。手術も何度か執刀医をさせて頂きました。それこそ、最初の執刀は猿渡先生に凄くご迷惑をお掛けしました。どっちが執刀医なのか助手なのか解りませんでしたから、その後は難なく手術出来るようになりました。これも偏に猿渡先生のお陰です。それと馬場先生も…… それにこういう機会を作って頂いた案西先生にもきちんと感謝しないといけませんね!

「今村先生お疲れ様でした。これで研修終了ですね!」

「馬場先生ありがとうございました」

「うん、案西先生によろしくお伝えください」

「はい」

 そう言っているときでした。

「飛鳥先生、今日の新幹線で帰るの?」

「いえ、今日まで泊まって明日帰りますけど……」

「それじゃ、一緒にご飯に行きましょう」

「あっ、はあ……」

「城島先生と犬崎(いぬざき)先生がお疲れ様会をしようって聞かないから」

「いや、こんな可愛い先生とはなかなか一緒に食事出来ませんから」

 城島先生は顔を少し赤くしながら言っています。

「まあ、折角来てもらったんだからな……」

 犬崎先生も俯いたままボソボソ言ってますけど私みたいなので良いんですか? 二人とも私の事、知ってるのかな……

「それじゃ、焼肉に行きましょうか! 炭火焼の良い所がありましたよね」

 そして、私は馬場チームの方々と焼肉店でお疲れ様会です。ここって九十分食べ放題のお店ですよね……

 私達はちょっと広めの部屋に案内されました。

「飛鳥先生は何を飲みますか?」

「えっと、今日は流石に疲れましたので…… コーラを下さい」

 私は疲れたときはコーラです。炭酸の効いた爽快さが良いですよね!

「それじゃ、あとはビールで良いよね」

 お酒が飲める人は炭酸の効いたビールですよね……

「飛鳥先生、コーラにウイスキーを少し入れてみたら」

「ウイスキーですか?」

「うん、コークハイ」

 私は試しにウイスキーを少量入れました。するとコーラの風味にウイスキーの風味が混ざっていい感じです。一口飲んでみるとコーラの甘さの中にウイスキーの苦味が少しあるような、でも頭がふらふらしてちょっと気持ち良いかも…… でも、この一杯でやめときましょう。

 その後、みなさんは牛タンを注文しますけど……

「あっ、私はカルビとミノをお願いします」

 ちょっといきなりすぎですかね。

「今村先生、最初から飛ばしますね」

「はい、でも、まだまだこれからですよ」

 今日は九十分食べまくるぞ! なんだか四週間あっ、という間の特別研修でしたけど、とっても楽しく良い経験をさせて頂きました。明日は玲華達を呼び出さないと、日曜だから当直じゃなければ来るでしょうからね、それに話したい事が沢山ありますから……


特別研修が終わりました。早速玲華達と逢って話をするみたいです。飛鳥ってそんなに話好きだったかな……

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