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憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第七章 インターン
55/69

55 初めての手術

お待たせしました第55話を更新しました!


今津での研修を終え飛鳥が北総へ戻った時、城戸先輩はいませんでした。何処にいったんでしょうか?

 今津(いまづ)での研修が終わり、私が北総のアパートに戻って来たとき城戸(きど)先輩はいませんでした。あれ、向こうから来るのは梨子(りこ)ちゃんと(しずく)ちゃん…… あっ、私に気付いたみたいです。雫ちゃんが走って来ました。

飛鳥(あすか)先生! 酷いじゃないですか」

 いきなり雫ちゃんに怒られてしまいました。

「えっ、何が?」

「今津に行ったんですよね」

「うん、赤十字病院まで……」

「私の実家も今津なんですよ! 美味しいお菓子とか海産物も買って来て欲しかったのに」

 えっと、研修だったんだけどね……

「雫、飛鳥先生は研修で行っていたんだから」

 梨子ちゃんにフォローしてもらいましたけど……

「ごめんね、突然決まっちゃったから…… でも、チーズ饅頭って美味しそうだったから買って来たんだけど食べる?」

 すると雫ちゃんは満面の笑みで……

「これ、これ! 私が大好きなお菓子です。凄いです。飛鳥先生と私はきっとテレパシーとかで繋がっているんですよね!」

 いや、たまたま同じようなお菓子が好きなだけでしょう。

「雫って本当、飛鳥先生の事大好きだよね!」

「うん、だって凄く優しいんだもん」

 私ってそんなに優しかったかな……

「コジリコちゃんもチーズ饅頭好きだよね!」

「うん、前に雫にもらった時凄く美味しかったから」

 えっ、コジリコちゃん?

「コジリコちゃんって何?」

「あっ、それは私のニックネームです。小路丸梨子(こじまるりこ)だからコジリコです」

「あっ、そうなんだ……」

 何だかどこがで聞いたような……

「ところで城戸先輩は、まだ病院なの?」

「えっと、たしか六時くらいに病院を車で出て行きましたよ! たぶん下界に行ったんだと思いますけど」

 梨子ちゃんがそう言ってます。

「でも、最近はよく出掛けてますよね」

 今度は雫ちゃんです。 

「へえ、そうなんだ」

「でも、この間の本村(もとむら)先生の発言は城戸先生に対して失礼ですよね!」

 思い出したように梨子ちゃんが言います。

「なにかあったの?」

「なにかあったって、飛鳥先生もいたじゃないですか?」

 雫ちゃんもそう言います。

「今日はあの日か? ってやつですよ!」

「そうそう、看護師はみんな最悪って言っているんだから、まったく失礼しちゃうわ!」

 二人とも相当お冠のようですけど……

「えっと、それで何の日だったんですか?」

「えっ……」

「……」

 私がそう訊いたら二人は無言のまま私の事をジッと見ています。

「飛鳥先生、本当に解らないんですか? あの日は月一のあれ、生理の事ですよ!」

「あっ、ん、そういう事だったの? それは酷いよね……」

 なんだか居心地が悪いですね……

「飛鳥先生、本当に解らなかったんですか?」

 二人からも変な視線が私に向けられてしまいました。でも私には、あの日は無いですからね……

 その後も三人でお喋りをして午後十一時を過ぎた頃、二人は部屋へ戻って行きました。そのあと私はシャワーを浴び、濡れた髪をドライヤーで乾かしている時でした。『コンコン』部屋の戸をノックする音がします。

「はい、開いてますよ」

 私が返事をすると……

「飛鳥!」

 城戸先輩でした。

「先輩、下界に行っていたんですか?」

「うん、ちょっとね……」

 城戸先輩は頬を赤くしていますけど……

「先輩、チーズ饅頭食べます? 今津から買って来たんですけど」

「うん、じゃあ…… いただこうかな」

「あんまり残って無いですけど……」

「どうせ、梨子と雫が食べちゃったんでしょう」

「はい」

「飛鳥、私…… 結婚するかも」

「えっ、結婚ですか? 医師はどうするんですか?」

「うん、医師は続けるわよ」

「お相手は、ひょっとして……」

「うん、桐生(きりゅう)先生……」

 そっか、先輩は桐生先生と良い関係でしたもんね!

「いつ、結婚するんですか?」

「まだ、そんなの決まってないよ! 今日、プロポーズされたから……」

 先輩は、ちょっと下向き加減で顔が真っ赤です。かなり可愛くなっています。

「勿論、OKしたんですよね!」

 先輩は小さく頷きました。

「おめでとうございます」

「うん、ありがとう……」

 さっきまで真っ赤だった顔が、ニッコリと笑顔になりました。

「はあ、飛鳥に話せて良かった! こういう話は誰でもって訳にはいかないから……」

 先輩は本当に嬉しいそうです。

「先輩、私も嬉しいですよ」

「飛鳥も早く結婚出来ると良いね」

 まあ、先輩はそう言いますけど、私の場合は簡単じゃ無いですよ! 手術だって無期限延期だし、二階堂(にかいどう)君だって私なんかよりもっと良い本当の女性が良いと思います。どんなに頑張っても私は子供を産む事は出来ませんからね……


 数日後、私が医局にいる時でした。『プルプルプルプルプル……』聞いたことのないベルがなりました。これは…… 内藤(ないとう)先生が急いで受話器を取ります。

「はい、北山総合(きたやまそうごう)病院ホットラインです」

城南市(じょうなんし)広域消防局です。三十二歳男性、渓谷で足を滑らせ頭部から出血しています。受け入れをお願いしたいのですが』

 これは、いったいなんでしょう?

「受け入れます」

『ありがとうございます五分で到着します』

「飛鳥、行くよ!」

「行くって何処にですか?」

「ホットラインが入ったんだから対応しないと!」

 どうやら救急対応のようですけど、やけに皆さん張り切っていませんか……

 五分後、救急車が到着しました。時間ピッタリです。

磯村忠史(いそむらただし)さん三十二歳男性、左足を骨折しているようです。頭部の出血は収まっています。バイタルは血圧136-78心拍数72異常ありません」

 この男性は渓谷に山女魚を釣りに来ていたみたいで足を滑べらせ転倒したみたいです。

「急いで処置室へ」

 処置室へ運ばれた男性はストレッチャーからベッドへ移されます。1、2、3の掛け声で二人の看護師と医師でベッドへ乗せ替えられました。

「ラインを取って、その後X線とMRI検査!」

「先生、モニターは付けますか?」

「いや、それはいいでしょう」

 外科の先生三人で対応しています。検査の結果、頭部の傷は大した事がありませんでしたが、左足の骨折は手術をしてプレートを入れた方が良いようです。という事で入院となり、今はまだ腫れていますので半分ギプスをした形です。

「いや、久しぶりの急患だったな」

 あれって、久々だった? 街の病院では頻繁にあると思いますけど…… そういえば私がここに赴任して初めての救急車だったような…… なんだか長閑と言うか平和ですね!

「プレートを入れる手術はいつするんですか?」

「えっ、あれは整形外科の方でやってもらうよ」

「あっ、そうなんですか?」

「整形外科の黒木(くろき)先生もいたでしょう」

 そういえば、見慣れない先生がいましたけど…… その時でした。

「失礼します。山田(やまだ)部長はいらっしゃいますか?」

 整形外科の確か、野村(のむら)部長ですよね……

「どうしたんですか野村部長!」

「あっ、山田部長、実は磯村さんの手術なんだけど……」

「うん、整形外科でやるんでしょう」

「まあ、そうなんだけど、良い機会だから今村先生と二階堂先生に助手として入って頂きたいんですけど……」

「野村部長! 飛鳥先生と二階堂先生は、まだ外科の研修中なんですけど……」

 城戸先輩がそう言っています。

「城戸先生、あなたの言いたい事は解りますけど、折角研修にぴったりの患者さんがいらっしゃいますので」

 野村部長の隣では山田部長が手を合わせて城戸先輩に合図していますけど……

「まあ、山田部長がそう言うなら……」

 城戸先輩は山田部長の姿を見て今回は引き下がるみたいです。

「でも、その分外科の研修を延長してもらっても良いから」

 野村部長もそこまで話の解らない人では無さそうです。そういう事で、明後日行われる手術に私と二階堂君は参加する事になりました。

「それじゃ後から第一手術室に良いかな」

「えっ、手術室ですか?」

 二階堂君も不審に思ったようです。

「そうだよ、明後日手術な訳だから準備を踏まえて説明するから」

 なんだか準備万端ですね!


 外科の仕事を終わらせ、私と二階堂君は第一手術室に来ました。

「あの、今村と二階堂ですけど……」

 二階堂君が最初に声を掛けてくれました。こういうところは頼りになるんだよね!

「ああ、どうぞ!」

 整形外科の黒木先生です。

「これが、明後日使うインプラントです」

「インプラントですか?」

「うん、骨折した箇所を固定するものです」

 あっ、プレートの事をインプラントと言うんですね! その他にも見慣れない手術道具というか、工具のような物が並んでいます。

「これを使うんですか?」

「整形外科の手術はこんな感じなんだよね」

「ドリルとかも使うんですか?」

 二階堂君も何か気になるとこがあるようです。

「うーん、ドリルは無いかな! あれは脳外科では使うみたいだけど……」

 まあ、ドリルは無いけどスパナや金槌みたいな物、ワイヤーのような物もありますね。

「黒木先生、このワイヤーのような物は?」

「あっ、それは骨を切る時に使うんだよ。明日はたぶん使わないと思うけど一応ね!」

 インプラントはネジみたいな物を使って固定するみたいです。

「インプラントはスパナを使ってネジを締めるんですか?」

「えっ、スパナ? ああ、医療用のレンチね!」

 なんだか改造人間でも作るような感じですね!


 三日後、朝から手術です。私と二階堂君が手術室へ来た時は磯村さんは局所麻酔の注射を受けたところのようです。

「それじゃ、麻酔が効いたら始めようか」

 何だかお気楽な手術ですね…… 執刀医は黒木先生です。二階堂君は第一助手で黒木先生の向かい側に私は第二助手として黒木先生の隣にいます。まあ、普通はこれくらいの手術に助手が二人もつく事はないと思いますけど……

「それでは骨接合術を行います。よろしくお願いします。メス!」

 手術が始まりました。まず折れた骨を元の位置に戻します。骨折した骨は意外と捻れたりしてるんですね。それが終わるとインプラントで固定するんだと思いましたけど……

「うーん、削った方が良いかな?」

「何を削るんですか?」

「折れた骨を削って繋ぎやすくするんだ」

 骨折した部分を削ることで骨芽細胞の働きを良くするということだそうです。それにしてもそんなに時間は掛からないと思っていたんですけど…… インプラントを取り付けるのも結構時間が掛かるものですね。

「それじゃ、縫合します」

 やっと終わりました!

「お疲れ様でした」

 手術時間は二時間半くらい掛かっていたようです。大学の実習以来の手術でしたのでちょっと疲れました。


城戸先輩の結婚を聞いた飛鳥は自分と重ねていたようです。そんななか初めてのホットライン、初めての手術と少しづつ研修を重ねていきます。

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