表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
憧れの医療  作者: 赤坂秀一
第七章 インターン
54/69

54 もう一つの研修

お待たせしました第54話を更新しました!


内科の研修が終わり、今日から外科の研修が始まったばかりの朝、山田外科部長から今津赤十字病院へ行って欲しいと言われた飛鳥ですけど……

 内科の研修が終わり、今日から外科の医局で城戸(きど)先輩から色々と教えてもらっています。なんたって先輩は私のオーベンですからね! もちろん二階堂(にかいどう)君も一緒ですけどね。

今村(いまむら)先生、今週の水曜日に今津(いまづ)の方へ行ってもらいたいんだけど」

 山田(やまだ)外科部長から、そう言われましたけど……

「山田部長、どういうことですか? 私は聞いていませんけど、それに飛鳥(あすか)は今日から外科の研修が始まったばかりじゃないですか!」

 何だか不機嫌な城戸先輩ですけど……

「うん、そうなんだけどね……」

 山田部長はちょっと困った様子ですけど、それを見ていた本村(もとむら)先生が……

「何だ城戸、ご機嫌斜めだな、今日はひょっとしてあの日か!」

 えっ、あの日? 今日は、何かありましたっけ……

「はあああ、馬鹿じゃ無いなの! って言うかデリカシー無さすぎ、だから女性にモテないんですよ本村先生は!」

 本村先生は地雷を踏んだのが解ったのか医局から出て行ってしまいました。

「先輩、何かあったんですか?」

「はあ…… 飛鳥はいいから……」

 先輩に溜息を吐かれてしまいました。でも、何だか顔を赤くして怒っている先輩も可愛いかな、でも、言ったら怒られそう……

「あっ、続けて良いかな…… それでなんだけど」

 あっ、山田部長の話が途中でしたね……

「今週の水曜日に今津赤十字(いまづせきじゅうじ)病院へ行ってもらいたいんだけど」

「今津赤十字病院ですか……」

「うん、実は今村先生の外科の研修が始まったら一度研修をさせて欲しいとのことだったから」

 私の研修という事は、二階堂君も一緒なのかな?

「あの、二階堂先生も一緒なんですか?」

「えっ、俺もですか?」

「あっ、いや、今村先生だけです」

「そうですか……」

 何だかちょっと残念ですけど、何故私だけなんでしょうか? ひょっとして裏で黒い組織が動いているとか…… まあ、考え過ぎですよね! そういう事で水曜日に今津赤十字病院へ行きます。城戸先輩は相変わらずご機嫌斜めですけど、一日だけらしいので、でも、これってどういうことでしょうね?


 水曜日、私は七時にアパートを出ました。今津赤十字病院に九時までにという事でしたけど病院までは車で一時間ちょっと掛かります。しかし、朝のラッシュに巻き込まれるかも知れないのでちょっと早めに出ました。途中、コンビニで朝食も買いたいですしね!

 しかし、病院の駐車場に着いたのは八時十五分! 早く着き過ぎました。この辺は朝の渋滞とか無いのかな…… 仕方がないので途中コンビニで買ったサンドイッチとカフェオレを車の中で食べてから行きましょう。

 朝食も終わり時間も八時四十分、少し早いけど、まあ良いか! 私は病院の受付に行きます。

「あの、北山総合(きたやまそうごう)病院から来ました今村飛鳥ですけど……」

「あっ、すみません外来の受付は九時からですのでもう少しお待ち下さい」

 えっ、北山総合病院って言ってるのに患者さんに間違えられるなんて……

「いえ、診察じゃ無くて研修なんですけど!」

 すると、ちょっとムッとした受付の女性が……

「えっ、お名前を良いですか?」

 はあ、さっき言ったじゃない! まったくもう、私はちょっと不機嫌な声で……

「北山総合病院の今村飛鳥です」

「あっ、はい少々お待ちください」

 女性は少し慌てて対応してくるれるようですけど、何だかここの受付もちょっと変ですね!

「あっ、君、良いよ! この方は私のお客様だから」

 あっ、えっと、この先生は……

案西(あんざい)先生!」

「やあ、お待ちしていましたよ! さあ、どうぞ」

 先生はそう言って、私を医局へ連れて行きました。

「早速ですけど飛鳥先生、実はあなたには山岡大学(やまおかだいがく)病院へ行って四週間の研修を受けてほしいんですが……」

「えっ、山岡大学病院? 研修? ですか?」

「そう、君が将来ジェンダー外来、若しくはジェンダークリニックをやる時に役に立つでしょう」

 ジェンダークリニック!

「でも私は、まだ前期研修が始まったばかりなんですけど……」

「それは大丈夫ですよ! 鳥越(とりごえ)院長には私からお願いしていますので」

 でも、案西先生は何故、私にそんな事をさせるのかな……

「案西先生、何故私なんですか?」

「トランスジェンダーの気持ちが解るのはあなたしかいないでしょう!」

「そんな、買い被りすぎですよ……」

「しかし、ジェンダー外来の治療や手術を経験する事は他の病気にも応用出来ると思います。研修出来る時に経験を積んだ方が良いと思いますけどね」

 まあ、確かにそうですね! 裏で黒い組織は動いていませんでしたけど、案西先生が色々と計画されていたみたいです。

「解りました! それで研修はいつからなんですか?」

「来年の一月お正月明けから二月の上旬までです。ジェンダーセンターの馬場(ばば)先生には連絡をしていますので、しっかり学んで来て下さい」

「はい、それで今日は?」

「今日は精神科の外来をして、お昼からは地域医療の一環で離島へ行って見ましょうか?」

「離島ですか……」

「はい、知ってる人に出会うかも知れませんよ」

 えっ、知ってる人? 誰だろう…… 話も終わり私は途中から外来の見学をします。

「飛鳥先生、渕上恭子(ふちがみきょうこ)さんを呼んで来てもらって良いですか!」

「あっ、はい」

 そう指示され私は待合室へ行きました。

「渕上さん、渕上恭子さん三番へどうぞ」

 私がそう呼ぶと若い女性が反応して私の方へ来ました。

「へえ、新しい先生なんだ! よろしくね」

「あっ、はい今村です」

 何だかこの患者さんは馴れ馴れしいな……

「あっ、渕上さんこっちね!」

 案西先生が呼びます。

「えっ、新しい先生じゃないんですか?」

「うん、残念ながらそうじゃないんだ! この先生はまだ研修医なんだよ」

「なんだそうなんだ、研修がんばってね」

「あっ、はい、ありがとうございます……」

 渕上さんは案西先生の方へ行き椅子に腰掛けます。

「それで渕上さん、夜はちゃんと眠れてる?」

「はい」

「薬は?」

「はい、朝の分は毎日飲んでますよ」

「夜のは?」

「ほとんど飲んで無いです」

「という事は睡眠障害の方は大分良いみたいだね」

「はい」

「次は袖をあげて見せて下さい」

 彼女が袖をあげると、手首にはいくつかの傷があります。

「最近は大丈夫のようですね」

「はい」

「うん、何か悩んでいる事はないかな?」

「先生、今は大丈夫です」

「そうですか、解りました」

 渕上さんの診察は終わりました。彼女は笑顔で診察室を出て行きます。

「飛鳥先生、渕上さんの病名は解りますか?」

 先生からそう訊かれましたけど、彼女はちょっと馴れ馴れしい普通の女性、でも腕には傷があり自傷行為があるようですし、今は調子が良いとしたら……

「うーん、そうですね…… パーソナリティ障害ですか?」

「確かにその中にも含まれるかもしれないけど、彼女は境界性(きょうかいせい)人格(じんかく)障害です」

「境界性人格障害ですか……」

 彼女は今日は明るかったけど感情がかなり不安定でさっきまで楽しく笑っていたのにいきなり泣いて叫んだりするらしいです。あと、この障害は自傷行為をするという事で、先生も手首に新しい傷がないかのチェックをしていたみたいです。

 それにしても精神科の外来は診察時間が長いです。患者さんの人数が少ないのが救いですけど……


「飛鳥先生お疲れ様! どうでしたか?」

「はい、いろんな障害で悩まれている人が多いんですね」

「うん、そうだね…… 最初の渕上さんも精神科リハビリセンターへ最初は行ってもらう話になっていたんだけど、結局は行かなくて良くなってね、でもあそこまで回復しているのは凄い事なんだよ!」

 でも、それは先生の治療のお陰なんでしょうけどね!


 この後私は、昼食を取った後地域医療を体験するために船に乗り土岐島(ときじま)へ行きます。そこには土岐島診療所があります。今から今津港を出港して土岐島定期船発着所まで行きます。船で十分くらい掛かるらしいんですけど…… 港を出て船はゆっくりと進んで行きます。海風と潮の香りが良いですね! その後、船は予定通り十分ほどで土岐島に着きました。

「飛鳥先生、ここが診療所です」

 診療所は定期船発着所のすぐそばにありました。

鳥嶋(とりしま)先生こんにちは!」

「えっ、ああ、案西先生、今日はどうした?」

「研修の先生を連れて来たんだ」

「初めまして今村飛鳥です」

 鳥嶋先生は私の顔をジッと見て……

「彼女がお気に入りの先生か!」

「おいおい、変なこと言うなよ」

「飛鳥先生、気をつけた方が良いよ! こいつは一度言い出したら聞かないから」

「ハハ、そうなんですね……」

「さて、冗談はそれくらいにして」

 冗談だったんですか……

坂本(さかもと)さんの様子を診に来たんだろう」

「ああ、その後どんな感じだ?」

「ああ、相変わらず帽子を被っているよ」

「そうか……」

「それじゃ、行ってみるよ! 車を借りて良いかな?」

「残念ながら車は大河内(おおこうち)が乗って行ってるよ」

「そうか、彼はどうだ?」

「うん、腕は良いんだろうけどな……」

「そうか…… 自転車借りるぞ」

「ああ、二台あるから好きに使ってくれ」

 そういう事で私と案西先生は坂本さんという患者さんの家まで自転車で来ました。

「こんにちは!」

「あら、案西先生わざわざすみません」

「いえ、ご主人はどうですか?」

「ええ、相変わらずです」

 そう話をしながら家の中へ入ります。

「坂本さん、こんにちは」

「あっ……! こ、こんにちは」

 何だか驚いたような顔をしています。

「良い帽子ですね!」

「あっ、はい……」

「帽子は取らないんですか?」

 先生がそう訊くと……

「脳みそがでちゃうんですよ」

 えっ、脳みそが出るって……

「ああ、そうなんですね。でも、お風呂に入る時は取りますよね」

「あっ、はい……」

「でもそれも、頭を洗って髪を乾かす間の十分間くらいですよ」

 坂本さんの奥さんはそう言います。

「あの、奥さんが洗ってあげるんですか?」

 私がそう訊くと……

「あの、あなたは?」

「あっ、失礼しました! 研修医の今村飛鳥です」

「あっ、研修医さんですか、実は、私も一緒に入りますから……」

 ちょっと照れたように奥さんは言います。仲が良いんですね! その後も案西先生の診察は続きます。先生は質問をした後の回答が可笑しくても否定したり肯定したりはしていません。これって、会話が成立しているんでしょうか?

「それでは坂本さんお薬はきちんと飲んで下さいね! お大事に」

 坂本さんの治療が終わりました。

「先生、坂本さんは統合失調症なんですか?」

「はい、そうです。君も聞いたと思うけど帽子を取ると頭から脳が出て来る幻覚が見えるみたいなんだよ! 普段はあんな感じなんだけど好きな事をする時は本当、普通なんだけどね……」

「好きな事ってなんですか?」

「彼は魚釣りが好きでね、僕にもきちんと教えてくれるんだ! お陰で僕にも魚を釣る事が出来たんだ」

「凄いんですね」

 そんな話をして診療所へ戻る時でした。

「あれ、今の人は」

「あっ、すれ違いになったね! 北総にいた大河内先生だよ」

「えっ、どうしてここに?」

「鳥越院長に大学に戻されて、大学は彼をうちの病院へよこしたんだ。でも、うちは人が足りてるから土岐島診療所に赴任してもらったんだ」

「でも、よく了承してくれましたね」

「そりゃそうだろう! 了承しないと大学に戻れなくなるかもしれないからね! 彼はクレームで大学へ戻されるのは三回目だから、もう後が無いんだよ」

 私達は診療所まで戻って来ました。

「鳥嶋先生、自転車ありがとう」

「ああ、もう帰るのか!」

「ああ、またそのうちに来るよ」

 そういう事で、今津赤十字病院の研修も終わり、私は北総のアパートへ戻って来ました。久しぶりに車にも沢山乗りましたね! とっぽちゃんご苦労様でした!


久々の案西先生の登場でした! 案西先生はどうしても飛鳥をジェンダー外来の先生にしたいようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ